レポート | インテリジェント・インベストメント

日本の賃貸住宅市場

少子高齢化でも需要が見込める理由

2023 年 07 月 13 日

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本レポートでは、日本の賃貸住宅市場が今後も有望な投資対象であることの背景について、人口動態、家計、住宅市場、消費者の傾向から考察し、日本の住宅投資市場の現状と魅力について改めて確認する。

 

人口減少・少子高齢化が進む日本でも、主要都市における賃貸住宅の需要は十分見込めると考えられ

 

        立地:人口が集中する都市部

日本の総人口は2010年にピークに減少に転じており、最新の予測では2050年までに2000万人減る見込みである。一方で、労働力人口は増えており、就労機会の多い都市部への人口流入が続いている。現在も日本の人口の30%が主要21都市に集中しているが、その割合は今後上昇することが見込まれる。東京23区に至っては、人口が2030年までに2015年比で5%増えることが予想されている。人口が集中する東京都心やその他主要都市では、賃貸住宅ニーズが長期にわたって期待できるだろう。しかし、それら都市部では世帯数に対する住宅ストックが十分とは言えない状況にある。

 

        ターゲット層:共働き世帯

日本では女性の労働参加率が上昇しており、結果として共働き世帯が増えている。共働き世帯の世帯年収は全体的に高く、賃料の負担能力も高いと考えられる。また、このような世帯は仕事場へのアクセスや子育ての環境などの利便性を重視し、都市部に住む傾向が強い。 しかし、大都市の賃貸住宅ストックの67割は小規模なワンルームないし1ベッドルームタイプである。都市部は若い単身者の割合が多いため、このような住戸に対する需要は潤沢だが、一方で共働き世帯が求めるファミリータイプの広めの住戸は少ない。

 

        ターゲット層:単身シニア世帯

2040年には日本の世帯の5分の1が単身のシニア世帯となると予想されている。他方、2010年代半ば以降、高齢者の雇用制度の整備が進められたことから60歳以上の労働参加率は高まっており、65歳以上については今後さらに上昇する余地がある。このようなアクティブなシニア層を対象とした物件は長期にわたって需要が見込めるだろう。仕事場へのアクセスが良く、生活インフラが充実した駅に近い立地が好まれると考えられる。現在は若者の需要が中心のシェアハウスも、将来的には単身シニアの住まいの選択肢にもなるかもしれない。

 

        スペック:質が高く広い住戸、環境性能の高い住戸

CBREGlobal Consumer Surveyの結果は、コロナ禍を経て、消費者が住まいについて「質」を重視する向きが強まったことを示唆している。具体的には、「より質の高い住居」「より広い住居」「より良い住環境」を転居先に求める人が増えている。そして、同アンケート調査からは、特に高所得者層およびシニア層が住宅選びにおいてサステイナビリティを重視する傾向があることもわかった。経済的な余裕のある共働き世帯やシニア世帯が増えると、高スペックの広めの賃貸住宅のニーズは高まると考えられる。

 

        金利環境金利上昇局面では賃貸住宅ニーズがさらに高まる

最近の日本の住宅市場の動向に目を向けると、住宅価格は上昇しており、分譲マンションの価格高騰がとりわけ目立つ。そして、現在は低金利環境が続いているが、将来的に金利が上昇すれば、家計における住宅ローンの返済負担は増える。日本の家計は総じて健全で、返済負担能力に余裕があると考えられる。それでも、住宅のアフォーダビリティが現状に比べて低下し、返済負担が高まる局面では、賃貸住宅を選択する世帯は増えるだろう。