レポート | 変化する働き方
採用難時代のオフィス戦略
オフィス利用に関する意識調査2024 経営層編
2025 年 03 月 21 日 読む所要時間:約30分

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本レポートはCBREが2024年7月に調査協力した全国の企業の経営層と一般社員を対象とした「オフィスの利用状況に関する調査」において、 主に経営層の回答結果について分析。これを基に足元のオフィス利用に関する経営層の考え方や見通しについて考察した。
活況なオフィス市場の背景にある4つの要因
2024年は全国的に活況なオフィス市場が続いた。その要因は大きく4つ。1点目は企業の業績や業況感の改善基調を背景に、テナントのオフィスの拡張意欲が高まったこと。2点目は、従業員のオフィス回帰により、オフィスが手狭になったテナントが借り増しをするケースが数多くみられたこと。3点目はオフィスビルの開発計画の工期の長期化もしくは見直しが、テナントの良質なビルに対する品薄感を強め、早期に移転先を確保しようとする意識を高めたこと。そして、最大の要因である4点目は、人手不足を背景に、人材獲得競争で優位に立つために、より高いグレードや利便性を求める移転需要が旺盛だったことである。構造的な人手不足の中、人材の採用やつなぎ止めにおいて、今後、オフィスの役割はさらに重要性を高めるだろう。
オフィスの改変と増床に対する意欲は堅調
深刻な人手不足の中、企業の経営層はオフィス移転に際して、「快適性」や「ビルの耐震性」、立地では「通勤利便性」など、従業員の就業環境に関する項目を従前以上に重視する傾向にある。オフィス改変に対するニーズは底堅く、2社に1社が何らかのオフィス改変を予定していると回答。今後のオフィス環境改善に対する投資額も「増やす」との回答が「減らす」を大きく上回った。また、オフィスの増床意欲も強く、「増床」との回答が「減床」を大きく上回っている。今後もテナントのオフィス改変と増床意欲は堅調であると予想される。
エンゲージメントの改善に寄与するオフィス改変
そして、オフィス改変の理由のトップは「従業員のエンゲージメント向上」であった。エンゲージメントの向上は、人手不足の課題解決に直結する対応と捉えられているからであろう。また、エンゲージメントの向上には、個人や組織間の連携が前提となっているとも考えられ、コミュニケーションの基点ともなるオフィスは重要な役割を担っているとみられる。過去のオフィス改変によって、エンゲージメントに関連のある複数の指標において改善が示された。
採用難の時代において重要性を高めるグリーンビル
ESGも人材のつなぎとめにおいて重要な要素と考えられる。事業活動におけるESGで経営層が最も重視しているのは「従業員の健康と幸福の向上」であった。建物の中で働く人の健康やウェルビーイングに配慮したオフィス空間は、エンゲージメントの向上にも寄与するとみられる。また、オフィスビルにおけるESG対応の有無によって、賃料にプレミアムまたはディスカウントを求める回答は合計で5割弱を占めた。ESGに配慮した、いわゆるグリーンビルは、築浅・大型ビルに多い傾向にある。グリーンビルは、採用難の時代において今後ますます重要性を高めていくと考えられる。