レポート | インテリジェント・インベストメント

アジア太平洋地域のデータセンター 【和訳版】

2025 年 07 月 01 日 読む所要時間:約10分

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AIブームとクラウドサービスに対する需要の増加を背景に、アジア太平洋地域のデータセンターに対する投資家の関心は、コロケーションとハイパースケールのいずれについても高まっている。

今後3年間でアジア太平洋地域のデータセンターのストックは倍増する見込みであるにも関わらず、2028年までに未だ15〜25ギガワットが不足すると予想されている。特に深刻なのは、 AIに対応したデータセンターの不足である。というのも、これから竣工してくるデータセンターの殆どが、AIの台頭以前に計画されたものであるためだ。

しかし、既存のデータセンターが陳腐化するというわけではない。AI以外の業務をサポートする従来型のデータセンターは、少なくとも2030年までのデータセンター需要の半分を占めると推定されている。とは言え、クラウドやコロケーションサービスプロバイダーにアウトソースする企業が増えるにつれ、築古のエンタープライズ型データセンターの意義が薄れてくることは否めない。

一方、より新しい物件については、拡張需要の増加を背景にラック価格など利用料金の着実な上昇が期待できる。いずれの市場でも空室率の低下傾向が続くとみられる。特に先進国では、老朽化した物件からのアップグレード移転需要も強いため、データセンターをめぐる競争は激化するだろう。

データセンターに対する投資家の関心も、今後さらに高まるとみられる。AIとクラウドサービスの拡大を背景とする旺盛な需要は、アジア太平洋地域におけるデータセンター投資をこれまで以上に促すことになろう。

安定したキャッシュフロー、ならびにリスク調整後リターンの高さは、機関投資家にとって魅力的な要素だ。データセンターは現在の市場環境において、長期の賃貸借契約などにより、キャッシュフローがもっとも安定したアセットタイプの一つである。

AI関連の成長の波に乗るには、投資家は最新のデータセンターにフォーカスし、電力を確保済みの開発案件を多く抱える事業者へのエクイティ出資や買収を志向することが推奨される。