旧印刷工場を本格的なウェットラボへと大胆転換、知性と感性の共創が仙台のイノベーションを創出|株式会社ユーメディア

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更新日 : 2026年07月14日掲載日 : 2026年07月14日
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仙台を拠点に、祖業の印刷業から業態変革を続けるユーメディア。同社は今年4月、旧印刷工場をリノベーションした施設「MEDIUM(メディウム)」内に、地元・仙台で不足するウェットラボをオープンした。開設と同時に即満室となる大きな反響を呼んだ同施設。なぜ同社がラボ整備という未知の領域に踏み切ったのか。その決断の背景には、事業を通じて地域課題を解決するという確固たる信念があった。代表取締役の今野均氏に、本プロジェクトの核心と今後の展望を伺った。

株式会社ユーメディア
代表取締役社長
今野 均

株式会社ユーメディア 代表取締役社長 今野 均氏

事業を通じ地域社会を元気にするため、印刷以外の新たな価値を創造する

私が先代から会社を受け継いだ2014年に、事業を通じて地域社会を元気にすることを目指したネクストビジョンを掲げました。この姿は、創業当時から受け継がれていて、東日本大震災発災時に当社の役割を問い直したことでビジョンとして明確になりました。これを実現する大きな戦略のひとつが、新しい印刷工場の建設と、旧工場をリノベーションして地域に開かれた新事業(コトづくり)が生まれる交流拠点をつくるというものでした。

「心豊かなコミュニケーションには紙のツールが絶対に必要だ」という信念のもと印刷事業に注力する一方、時代の変化に対応するため、受託型の印刷会社から、課題を主体的に解決する「コミュニケーションデザインカンパニー」へと事業変革を続けてきました。

そうした中、旧工場を解体せずにリノベーションし、コミュニケーション・デザイン・ラボ「MEDIUM」を立ち上げました。 MEDIUMは、情報を届けるだけでなく、その先にある「創造の現場そのもの」を地域に開放し、知性と感性が交わる“創造の交差点”となることを目指した施設です。事業を展開する中で、仙台市にはウェットラボが圧倒的に不足しているという地域課題を知り、当社の理念に照らし合わせ、この課題解決に貢献できると考えたのがラボ整備のきっかけです。

MEDIUM外観

印刷工場ならではのポテンシャル、自由度を残した設備設計がカギに

「仙台市ウェットラボ整備の先導的モデル創出事業」(以下、同事業)第1号案件として整備できた背景には、「元印刷工場」という大きなポテンシャルがありました。印刷工場とウェットラボには、ハード面の共通点が多く存在します。重い印刷機に耐えうる床の耐荷重、大型機械を搬入できる高い天井高、大量の電力を供給する大容量キュービクルなどです。一般的なオフィスビルをラボに改造すれば莫大なコストがかかりますが、工場という資産を活かし、効率的な転用が可能となりました。

よく「どこまで整備すればよいか」と質問を受けますが、私は「つくり込みすぎないこと」と答えています。入居企業のニーズは千差万別で、すべてに応えようとするとコスト負担が大きくなります。そこで、給排水はあえて床上げせずポンプアップで天井裏を通し、天井高のメリットを活かしつつ、自由度の高い設計にしました。この「あえて余白を残す」判断が、成長フェーズに合わせて設備を調整したい企業のニーズに合致したのだと考えています。

地下鉄駅前と印刷団地の強み、共創を生む類まれな立地特性

MEDIUMが選ばれる大きな要因に、圧倒的な立地の良さがあります。2015年の地下鉄東西線開通により、駅前立地を手に入れました。東北大学などの学術機関と地下鉄1本で直結され、研究者やビジネスパートナーがストレスなく行き来できる環境が整いました。加えて、仙台市中心部や国道4号バイパス、港や空港などの物流拠点へもスムーズにアクセスできます。

また、ここは日本で最初の印刷工業団地という歴史ある場所です。工業地域として大型トラックの動線が確保されており、精密な実験機器の搬入やラボで生まれた製品の発送において、強力なアドバンテージとなります。

さらに、団地内には60年以上にわたりともに歩んできた印刷関連企業が集結しています。MEDIUMを利用する高い技術や感性を持つ入居者は、団地内の企業とのスピーディな連携が可能になります。この強固な横のつながりは、単なる入居者同士の交流を超えた「共創」を生み出す極めて大きな付加価値です。周辺は保育園の散歩コースになっており、地域とサイエンスが垣根なくつながる未来を具現化していきたいと考えています。

イベント開催や打ち合わせ、食事など、施設で働く人々が多目的に利用するMEDIUM内の共創スペース

入居募集開始まもなく満室へ、県外からの反響と潜在的需要

募集開始まもなく5室すべてが入居の見通しとなった事実は、私たちにとっても驚きでした。当初は地元の大学発ベンチャーを想定していましたが、蓋を開けてみれば「仙台に本格的な拠点があるなら進出したい」という、首都圏や遠方からの問い合わせが相次ぎました。全国的にウェットラボが不足している実態と、潜在需要の大きさを改めて実感しています。

特に評価されたのが、1区画100㎡強という面積です。大学の研究室での実験がうまくいき、量産化や実証実験に踏み出そうとする企業にとって、既存の大型施設を借りることにはリスクが伴います。MEDIUMは、研究成果が蓄積され「次のステージ」へステップアップする段階の企業にとって、最適だったのだと思います。

デザインやクリエイティブと融合仙台のイノベーションのハブへ

今後の展開として、同事業の第2期の公募でご採択をいただき、MEDIUMの2階を中心とした改修工事に着手します。新たに7室ほどのラボを増設する予定です。5つの力が集まるより、12の力が集まった方が、間違いなく多様なものが生まれます。

私たちが目指しているのは単なる場所貸しではありません。コミュニケーション・デザイン・ラボ「MEDIUM」が持つ本来の価値は、入居企業が持つサイエンスやテクノロジーと、私たちが強みとするデザインやクリエイティブを「媒介(メディウム)」し、融合させることにあります。偶発的な出会いや垣根のないコミュニケーションを通じて、ビジネスを加速度的に発展させるソフト面での支援を行い、ここで新たな価値創造にチャレンジしていただきたいのです。

スタートアップがここを足がかりに巣立ち、また新たな企業が入居するという循環を生み出すことが大切です。今後各地に誕生するであろうラボ機能をつなぐハブとしての役割を担い、仙台市全体のリサーチコンプレックス形成に貢献していきたいと考えています。

共創スペースでのイベント

ウエットラボ内部

施設概要

施設名

コミュニケーション・デザイン・ラボ MEDIUM

運営

株式会社ユーメディア

所在地

宮城県仙台市若林区六丁の目西町6-5

交通

地下鉄東西線「六丁の目」駅徒歩5分 / 仙台東部道路「仙台東」IC 2.1km / 仙台空港22.3km

開業

2026年4月

MEDIUM ウェットラボ 入居企業に訊く

上記内容は 「BZ空間」2026夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。