MEDIUM ウェットラボ 入居企業に訊く
水を使わずに風味を守り、カフェインを除去する独自のデカフェ抽出技術で、コーヒー産業の新しい形をつくるストーリーライン。量産へ向けた実証段階に入る今、「MEDIUM」に新たな拠点を構えた。「カフェインコントロール」という新概念を掲げ、仙台から世界へ挑む軌跡を紹介する。
ストーリーライン株式会社
代表取締役 CEO/CDO
岩井 順子 氏

水不使用で風味を保持、東北大発の独自デカフェ技術
従来のデカフェは、コーヒー豆を溶媒に浸してカフェインを除去していたため、香りやうま味成分まで失われ、「デカフェはおいしくない」と言われてきました。ストーリーラインはその課題を打破するべく、東北大学超臨界溶媒工学研究センター・渡邉賢教授と出会い、2019年に共同研究を開始。超臨界CO₂流体を使い、水に浸漬しないことでカフェインのみを除去し、風味や個性を保つ独自プロセス「ZEN Craft Decaf」を実用化しました。豆本来の味わいをそのままに、健康とおいしさを両立する新しいデカフェが誕生したのです。
日本橋での挑戦、広がる「カフェインコントロール」の輪

2021年に初めての資金調達を行い、「T-Biz」にラボを設立。翌年には東京・日本橋に実証店舗「CHOOZE COFFEE」 をオープンしました。従来敬遠されがちだったオフィスワーカーをあえて主対象に、カフェイン量を自ら選べる「カフェインコントロール」という新たな飲み方を提案しました。
日本ではコーヒーの約100%が輸入品で、そのうちデカフェはわずか0.8%にすぎません。ところが同店では約45%のお客様がカフェインを減らす選択をし、デカフェが20%、ハーフが24.5%を占めました。違いを生むのは“提供の仕方”だけ。コロナ禍に始めたサブスクも離脱が少なく、EC定期便も好評です。2025年3月には宮城県庁やNTT東日本宮城事業部と行った実証で、カフェイン調整によって睡眠の質と量が改善する効果を確認。 2023年頃からは大手メーカーも同様の流れを見せ、世界市場も拡大しています。
新拠点「MEDIUM」から、技術を循環させ、世界の生産国へ
事業はラボスケールを経て、量産実証フェーズへ移行する中、「MEDIUM」へ移転、面積を3倍に拡大しました。大量の コーヒー豆や大型機材を扱う当社にとって、搬入出が容易な物流網の良さや、重量に耐えうる強固な床の耐荷重は必須条件です。
また、タイの社会企業Doi Tung※1のCEOや国内外の大手メーカー幹部も来訪し、仙台から世界に広がるネットワークが形成されつつあります。
今後は自社ECの発送拠点としての機能強化や、運営元のユーメディアとの連携も視野に入れています。

当社のデカフェ装置は、宮城県内の事業者と作り上げた「All made in 宮城」。この技術と装置をコーヒー生産国へ展開し、現地産業の付加価値向上を支援する構想を描いています。農家支援を直接行わなくても、技術を通じて産業を潤し、最終的に生産者にも還元できるサイクルを築く。Doi Tungとの協働を皮切りに、知とモノづくりの集積地・仙台から世界へ─“コーヒー産業の再設計”がいま動き出しています。
会社概要■ストーリーライン株式会社
本社 | 宮城県仙台市若林区六丁の目西町6-5 MEDIUM | |
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店舗 | 東京都中央区日本橋1-13-1 日鉄日本橋ビル1階CHOOZE COFFEE | |
創業 | 2018年 | |
※1:タイ王室主導の社会開発活動。麻薬栽培からの転換を支援し、コーヒー等の販売を通じて地域の自立と持続可能性を支えるブランド。