野村不動産株式会社 辻圭一郎氏|INTERVIEW

不動産戦略・動向
更新日 : 2024年01月09日掲載日 : 2024年01月11日
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「街区全体で「CO2排出実質ゼロ」大型開発が集中する東京湾岸で、未来へ向けた新たな街を築いていく

野村不動産株式会社 都市開発第一事業本部 ビルディング営業一部長 兼 芝浦プロジェクト本部ビルディング営業部長 辻 圭一郎氏

国家戦略特区の特定事業として、東京のウォーターフロント・浜松町エリアを舞台に開発が進む野村不動産の「芝浦プロジェクト」。建築される高さ約230mのツインタワーには、オフィスやホテル、商業施設、住宅などが入り、東京湾岸部の新たなシンボルとしてグローバルなビジネスや観光拠点の創出をめざすという。区域面積は約4.7haにおよび、全体の竣工は2030年度を予定。東京でも最大級となる大規模複合開発について話を伺った。

野村不動産株式会社
都市開発第一事業本部 ビルディング営業一部長 兼 芝浦プロジェクト本部ビルディング営業部長
辻 圭一郎

野村不動産株式会社

サステナブルな環境であるために、街区全体で「CO2排出実質ゼロ」をめざす

「私たち野村不動産グループの本社も、芝浦プロジェクトS棟が完成したらそちらへ移転します。50年、100年と末永く本社を置きたいビルですし、周辺の街づくりにも取り組んでいきます。そのため、芝浦プロジェクトのつくり手としての意気込みは、並大抵のものではありません」。そう話すのは、野村不動産(株)都市開発第一事業本部ビルディング営業一部長兼芝浦プロジェクト本部ビルディング営業部長の辻圭一郎氏だ。

港区のウォーターフロントを舞台とする開発は長年、構想していたものだという。その計画が現実味を帯びてきたのは、浜松町エリアが国家戦略特別区域に指定された2017年頃。その後、2021年10月、芝浦プロジェクトとして旧浜松町ビルディングの建て替え工事に着手した。

約10年をかけて再開発する区域面積は、約4.7ha。高さ約230mのツインタワーを建築し、S棟は地上43階・地下3階建、N棟は地上45階・地下3階建となる。まずは、2025年2月竣工予定でS棟の工事を進め、N棟は2027年度に着工予定。2030年度に全体の竣工をめざす。東京でも最大級となる大型複合開発で、延床面積約55万㎡のフロアには、オフィス・ホテル・商業施設・住宅が入る。また、設計は世界的建築家の槇文彦氏が担当。東京湾岸部の新たなランドマークになることはもちろん、これからの働き方やライフスタイルを提案する場になることが期待されている。中でも注目のトピックは、カーボンニュートラルの取り組みにより、街区全体のCO2排出量を実質ゼロにすることだと、辻氏はいう。「野村不動産は、2050年にありたい姿をめざすサステナビリティポリシーとして、『Earth Pride -地球を、つなぐ-』を掲げており、脱炭素を2030年までに特に取り組むべき課題のひとつとして定義しています。芝浦プロジェクトもそのポリシーのもとで開発を進め、オフィスのほかにホテルや住宅、商業施設や外構なども含めた取り組みになっています。CO2排出量を建物単体ではなく、街区全体として実質ゼロにする例は極めて珍しく、日本初になることをめざしています」。

S棟28F スカイラウンジ

環境性能やBCP施策を徹底追求し、最高ランクの第三者認証を取得予定

芝浦プロジェクトでは、建物の省エネ性を高めるとともに、高効率な地域冷暖房を行うコージェネレーションシステムを導入。2010年度における都内大規模事務所のCO2排出量を基準とした場合、その削減量は、都市再生特区の目標である40%をさらに上回る45%以上を達成する見込みだ。そのうえで、野村不動産グループのエネルギー事業などによる太陽光発電を導入し、。CO2の排出量を相殺。街区全体の排出量を実質ゼロにする。オフィス部分は第三者認証の取得も予定し、国際環境認証「LEED」のゴールドランクや「WELL」のプラチナランクのほか、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロをめざす建築物として、「ZEB Oriented」も取得予定。オフィス用途の延床面積が30万㎡を超える建築物では国内初(2021年10月時点)となり、国内最大規模での取得となる。また、国土交通省が主導するCASBEEおよびCASBEEウェルネスオフィスでは、ともにSランクを取得予定だ。

そして、環境面はもちろん、事業のサステナビリティにも配慮し、BCP施策も徹底する。地震に対しては、建物自体を制振装置として機能させる最新技術「BILMUS」を国内初導入。大地震の際には上層階と下層階が互いの揺れを打ち消しあい、高層階の揺れが最大で従来の半分以下に低減するという。また、重要電気設備は5〜6階に設置。中圧ガスとコージェネレーションシステムにより、約10日間の貸室内への電力供給だけでなく、空調の提供も可能にする。「高潮や津波などだけではなく、近年の集中豪雨による下水のオーバーフローによる内水氾濫を含め、様々な水害を想定してBCP施策を強化しています」。

芝浦プロジェクトS棟・省エネの取り組み

2025年2月にはS棟の竣工が予定されている。コロナ禍でオフィスのあり方や人々の働き方は大きく変化したが、その点についてもかなり議論し、S棟に反映させたと辻氏。「オフィス探しをされている企業の方々ともよくお話いたしますが、出社率が安定せず、必要な広さや座席数を判断できないとお聞きします。その点、S棟は基準階で約1,500坪を確保したうえで、出社状況や気分に合わせて、オフィス以外の場所でも働けるよう、複合施設ならではの魅力にあふれた柔軟なワークプレイスの構築をめざしました」。

たとえば、地上約138mに位置する入居企業専用のスカイラウンジをはじめ、空や海、緑や都心のビル群など、多彩な景色を楽しみながら仕事ができるスペースを様々なフロアに配置。入居企業同士のコミュニケーションや共創を支援するワークスペースのほか、食事サポートによる健康支援や憩いの場となるカフェテリア、最大面積1,000㎡超のホール、貸し会議室なども用意する。「スカイラウンジは無料でご利用いただけますし、私たちはフィットネス事業も運営しているので、ジムやヨガ、岩盤浴やサウナなど、仕事の合間にリフレッシュしていただくこともできます」。また、野村不動産は首都圏を中心にサービスオフィス「H1O」やシェアオフィス「H1T」も展開。S棟とそれらの組み合わせも、アフターコロナのオフィス選びや働き方の課題解消に向けて提案していきたいと辻氏は話す。

芝浦運河親水空間〔イメージ〕

野村不動産は芝浦プロジェクトの関連事業として、日の出ふ頭小型船ターミナル「Hi-NODE」も整備・運営。第1期を担当し、都市の海辺における賑わいの創出にも取り組む。「S棟竣工に合わせて、野村不動産で船をつくり、観光にご利用いただくほか、入居企業様に貸し出してクルージングや宴会を楽しんでいただいたり、海上での会議も可能にする予定です。羽田空港方面にゲストをお迎えにあがり、東京湾の景色を楽しみながら、船で会社へアテンドすることもできます」。

野村不動産は、芝浦プロジェクトの周辺地区を盛り上げていくために、JR東日本や行政、地元町会や地域関係者などからなる「芝浦一丁目地区まちづくり協議会」も設立。ウォーターフロントに広がる海や空、賑わいを味方につけ、開発が続けられる芝浦プロジェクトに今後も要注目だ。

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