リードタイムの劇的な短縮
現在、テナントの意思決定スピードは非常に早まっています。従来、商談が発生してから成約に至るまでのリードタイムは当社案件ベースで平均150日程度かかっていましたが、最近では90日(約3カ月)程度に短縮。その背景には、「いつまでに承認を取らなければならない」「急ぎで分室を確保しなければならない」といった期限付きの案件が急増していることが挙げられます。
分室ニーズとシェアオフィス(アジャイル)の定着
本社拡張移転が困難な市場環境下で、「分室」需要の高まりは当然のことと言えるでしょう。分室の選定における絶対的な条件は「本社からの物理的な近さ」です。賃料水準の多少の違いよりも、行き来しやすい近近(きんきん)のエリアであることが強く求められます。
また、分室を設ける際、契約の終期を柔軟にコントロールするためシェアオフィス(アジャイル)を活用する事例が一般化しました。かつて日本の大手企業にはシェアオフィスの利用に対する根強い抵抗感があり、外資系やベンチャー企業の利用に限られていましたが、現在では大手企業であっても何の抵抗もなく分室としてシェアオフィスを導入しています。定借契約で分室を増やしてしまうと、将来の退去や統合時に契約期間のズレや解約交渉で苦慮するため、機動性の高いアジャイルが必然的な選択肢となるわけです。
セカンダリーエリアへの波及と社内事情
都心オフィスの賃料相場高騰と空室不足に伴い、セカンダリーエリアへの分散も見受けられます。例えば
横浜・関内:賃料相場が東京都心に比べ割安であり、普通借家契約が残っている物件も多く狙い目とされる。
川崎・海浜幕張:一時期は空室が目立っていたものの、足元では着実に空室が消化され、ニーズの高さがうかがえる。
池袋:元来、決してニーズの高い業務集積地ではないが、だからこその低廉な賃料相場と巨大ターミナルの集客力、新規オフィスビル開発からビジネス街として再評価されている。
この動きの背景には、企業の社内的な配賦経費(オフィスコスト等、全社的間接費の部署・部門負担)の問題が挙げられます。本社オフィスの高額な賃料コストが自部門のアロケーション(経費配分)として重くのしかかることを嫌い、「自分たちの部門はコストの安い場所に移転したい」という潜在ニーズが各事業部に存在します。「都心部の高額な賃料は払えない・払いたくない」という部門の本音に加えて、コロナ禍以降に浸透した働き方改革に伴う在宅勤務の併用、「出社抑制・スペース削減」の動きが、こうしたオフィス分散や分室戦略と密接に連動していると言えます。
