4|内装工事費高騰と「アジャイル/セットアップ」の大型化

不動産戦略・動向
更新日 : 2026年09月30日掲載日 : 2026年10月01日
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2027年4月に「新リース会計基準」の導入(賃貸借契約資産のオンバランス化)が予定されており、「バランスシート(BS)の見栄えを良くするために、賃貸借契約ではないシェアオフィスやアジャイルオフィスを選択する動きが増えるのではないか」という仮説がありました。しかし、実際の現場において新リース会計対応を直接の理由としてアジャイルを選択するテナントはほぼ存在しません。これらオフィスの使用は不動産賃貸借に基づく賃料ではなくサービス利用料ですから、理論上はオフバランスが成り立つかもしれませんが、まだ会計基準が施行されていない中では、様子見といったところではないでしょうか。実際にテナントの選択を、アジャイルオフィスや内装済で賃貸されるセットアップオフィスに突き動かしている最大の要因は、会計基準ではなく「内装工事費の深刻な高騰と工期の長期化」にあります。

コスト高騰が変えたオフィス選択の常識

現在、東京で一定グレード以上のオフィス内装を一から作り込もうとすると、150~200万円/坪近いコストがかかるケースも見られ、大規模本社案件などでは工期は1年~1年半に及びます。入居までの1年以上にわたり賃料と工事費を負担し続け、退去時に多額の原状回復費用が発生するというリスクは、定借期間の短期化と照らし合わせると極めて効率が悪いと言えるでしょう。

既存のアジャイルオフィス提供プロバイダーの拡大はもとより、このニーズ拡大により、デベロッパー側も大型のアジャイルやセットアップ領域の提供に注力している一面も見られます。

  • アジャイルオフィスの規模感:東京都心部に、400席規模と、異例の大型アジャイル拠点が開設された。

  • 地方都市における成功事例:大手デベロッパーが、ある地方都市でグレードAクラスのビルを開発。テナントに大手シェアオフィスプロバイダーが入居したにもかかわらず、ワンフロアをセットアップとして賃貸したが、既存のシェアオフィス・コワーキングスペースからの移転需要が殺到した。

  • 大型セットアップの具体例:東京における大手企業の本社建て替え仮移転に際し、デベロッパー側がワンフロア(受付、複数の会議室、執務スペースを完備)をセットアップ化し、高額な賃料水準で賃貸した。

従来、セットアップオフィスといえば100坪未満の小型区画がベースであり、「100坪を超えると企業の好みが分かれるためリスクがある」とされていました。しかし現在では、200坪クラスやワンフロア丸ごとの大型セットアップ案件が増加しており、内装工期の短縮と初期コスト削減を求めるテナントニーズとのマッチングが生まれています。こうしたアジャイルオフィスやセットアップオフィスの大型化は、従来の小規模・短期利用だけではなく、大企業の分室や仮移転、本社機能の補完などにも活用されるようになってきたことの表れとも言えます。

東京アジャイルオフィス、市場規模の推移

上記内容は 「BZ空間」2026秋号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。