東北大から世界へ。「国際卓越研究大学」が拓く、仙台発イノベーション・エコシステムの未来

都市・物件特集
更新日 : 2026年07月07日掲載日 : 2026年07月07日
オフィスR&D
NEW

「国際卓越研究大学※」の認定第1号となり、世界最先端の次世代放射光施設「NanoTerasu」の本格稼働など、かつてない追い風が吹く東北大学。同大が中心的役割を果たす「仙台リサーチコンプレックス」の将来像や、ディープテック・ユニコーン創出に向けた具体的なロードマップ、産学官連携による産業クラスター形成の展望とは。不動産市場への期待や仙台独自の勝ち筋について、東北大学理事(産学連携担当)の遠山毅氏に話を訊いた。

東北大学
理事(産学連携担当)
遠山 毅

東北大学理事(産学連携担当)遠山毅氏

大学機能をフル活用する拠点形成、「共創研究所」をベースとした連携

東北大学が「国際卓越研究大学」として掲げている大きな柱の一つは、例えば官民地域パートナーシップにより整備された「NanoTerasu」に代表される、企業単独では整備が難しい大規模研究基盤を活用した共創プラットフォームです。

「NanoTerasu」のほかにも、半導体分野の最先端施設や、ライフサイエンス領域における世界最大級のデータを保有する「東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)」など、本学には、活用可能な世界水準の研究インフラが数多く整っています。これらの施設を大学の枠内にとどめるのではなく、広く企業にもご利用いただき、共同研究を通じて新たな価値を創出する「開かれた知の拠点」としていきたいと考えています。

その具体的な仕組みが、企業が大学との連携拠点を設置できる「共創研究所」制度です。従来のように教員と企業担当者が1対1で進める形式とは異なり、この制度では部局や分野を越えて多様な研究者と連携できます。さらにスタートアップとの協働や次世代産業人材の育成など、大学機能を最大限に活かせる点も特徴で、これまでに49拠点(2026年5月末 時点)にまで拡大しています。

NanoTerasu

東北大学発スタートアップ数:236社、全国トップクラスの創出数

世界に伍するエコシステムの形成とディープテック・ユニコーンの創出

東北大学は、世界に伍する大学発スタートアップの創出を目標としています。 2024年度までに236社が誕生し、全国有数の成果を挙げています。さらなる発展に向け、若手研究者の自立支援やアントレプレナーシップ教育の強化、GAPファンドの拡充、大学子会社「東北大学ベンチャーパートナーズ」による初期出資など、一貫した支援体制を構築しています。こうした支援は、継続的にスタートアップを生み出すエコシステムを形成するための基盤づくりにほかなりません。ライフサイエンス、半導体、材料科学などディープテック分野を中心に、世界で戦えるユニコーン企業の創出・育成を目指しています。

卓越した知財の社会実装と仙台エリアの新たな産業集積

研究成果を産業に活かす代表例が半導体分野です。「ミスター半導体」と称された西澤潤一元東北大学総長以来、東北大学には長い研究の蓄積があり、現在も約150名の研究者が半導体に関する様々な研究の最前線で活躍しています。こうした強みをもとに「半導体テクノロジー共創体」を設立し、個別研究を点ではなく面で結び、企業・研究者の協働による連携体制を整えています。

また、県内に多数存在する半導体関連企業と連携し、人材育成による地域の産業クラスター形成も視野に入れています。さらに、日本から飛び出し、世界で活躍する若手研究者と新領域に挑戦する企業をつなぐ「東北大学 ZERO INSTITUTE」を設立し、世界をリードする最先端研究と、その成果の迅速な社会実装を両立する仕組みに挑戦しています。

ウェットラボ等ハード面の課題と不動産市場への大きな期待

一方、スタートアップの成長過程で大きな課題となっているのが、ウェットラボなど専門的な研究施設の不足です。現在は大学や公的機関の施設を活用していますが、利用目的や期間に制約があることから柔軟性に欠けています。特に事業を拡大する段階では、賃貸で利用できる民間研究施設の存在が欠かせません。

特殊設備を備えた施設を整備するには多額の投資と専門的な運営が求められるため、不動産事業者やデベロッパーによる民間主導の開発に大きな期待を寄せています。大学が利用者・アドバイザーとして関与することで、持続可能な研究エコシステムを形成できると考えています。民間初の月面着陸を目指す企業も、東北大学発スタートアップとして仙台で活動を始めました。リアルな研究にはリアルな場が必要です。不動産業界の皆様にご参画いただくことで、仙台から連続的に産業が生まれる好循環を築いていきたいと考えています。

地域とともに発展する都市型イノベーション・キャンパスの創造

地域一体で進める「独自の勝ち筋」、世界と戦うボストン型都市を目指す

首都圏や関西圏と比べると、仙台はベンチャーキャピタルや知財・事業化支援の専門人材が不足しています。しかしその一方で、他都市にはない強みがあります。それは、都市の規模がコンパクトでありながら、中心部に東北大学という強力な知の拠点が存在することです。仙台市、地元金融機関、企業などが一体となって取り組みを進めやすく、主要研究施設がすべて駅から車で数十分圏内に集積しているという優位性があります。

また、東北と新潟の25大学等が連携する「MASP(みちのくアカデミア発スタートアップ共創プラットフォーム)」を通じ、広域のエコシステム形成を進めています。

アメリカ・ボストンのように大学群と都市機能が有機的に結びついた「都市型イノベーション・キャンパス」モデルは、仙台でも実現可能ではないでしょうか。超巨大都市でなくとも、大学を核に革新的なスタートアップを連鎖的に生み出す都市構造は、仙台の特性に非常によく合致しています。「国際卓越研究大学」としての認定を契機に、世界中から優秀な研究者や留学生を惹きつけ、地域とともに発展し続ける都市型イノベーション・キャンパスを仙台に築き上げたいと考えています。

※日本のイノベーションをリードする世界最高水準の研究力を持つとして、文部科学省が認定した大学。2022年に始まった制度。

上記内容は 「BZ空間」2026夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。
前のページ

仙台リサーチコンプレックス! イノベーションの「新磁場」

次のページ