株式会社 セガ札幌スタジオ|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ
更新日 : 2023年07月21日掲載日 : 2023年07月13日
オフィス

札幌が持つ独自の地域特性と、
ゲーム業界の華麗なマッチングが、
これからの市場拡大の起爆剤に。

セガ札幌スタジオ〔本社(第1スタジオ)・第2スタジオ〕

株式会社 セガ札幌スタジオ

設立以来、家庭用・アーケードを合わせたゲーム業界全体をけん引してきた功労者であるセガが、2021年12月、札幌に新たな子会社を設立した。その名も「セガ札幌スタジオ」。開発だけでなく、ゲームをエンターテインメントたらしめるデバッグに注力した拠点が、なぜ札幌に展開されたのか、その目的と経緯を訊いた。

株式会社 セガ札幌スタジオ
代表取締役社長
瀬川 隆哉

株式会社 セガ札幌スタジオ代表取締役社長  瀬川  隆哉氏

猛スピードで拡大するゲーム業界
経験の蓄積で長年リードを続けるセガ

2004年10月に誕生したセガサミーホールディングスを中心としたグループにあって、セガはその主要な事業会社の一つとして、アーケードゲームおよび家庭用ゲームなどの企画・開発・販売・運営などを行っています。今年で設立63年を迎えるセガは、日本のテレビゲームの黎明期から、長きにわたって業界をけん引してきた存在だと自負しています。

ゲームを取り巻く市場は年々拡大しており、グローバルで見ると7年前には10兆円だったものが、今日では21兆円という規模にまで成長。その要因の一つは新興国のユーザー数の拡大であり、もう一つはスマホの浸透によって、いつでもどこでもゲームが楽しめる環境が形成されたことだと言えるでしょう。また、その楽しみ方も色々で、eスポーツの例が示すとおり、実際にプレイするだけでなくネットに発信する人、それを視聴する人など、多様化しています。そのため、現在では全世界で30億人、つまり世界人口約80億人中、 40%の人が何らかの形でゲームに触れている計算になるのです。

こうした中、当社は世界中のゲーマーの一人でも多くの人にゲームを届けることをミッションとしています。ですが、国や地域によって普及しているプラットフォームが異なっているうえ、人気のジャンルにも違いがあるのが実情です。だからこそ、多様なプラットフォームに対応する多彩なゲームを開発し、発信することが重要なのです。

セガは、社風としてチャレンジ精神が旺盛で、世の中にない新しいものを産み出そう、世界で初めてのものに取り組もうという気概に溢れています。そのため、例えばプリクラ®やUFOキャッチャー®のように、誰もが楽しめる商品を先進的に生み出してきました。また、ヒット商品を作るにはメディアミックスも重要で、ゲームのアニメ化や舞台化、玩具やフィギアへの展開が大きな力となります。その点、セガの子会社には、セガトイズやトムス・エンタテインメントなど、玩具やアニメーション、CGを手がけている会社もあるので、高いシナジー効果を発揮できます。このようにセガには、これまでの長い歴史で培ってきた伝統と経験、世界を舞台として多様な展開を可能にするスケールメリットがあり、それがあらゆるニーズに応えられるオールラウンダーとしての強みになっていると考えています。

株式会社 セガ札幌スタジオ

多数の候補地の中から決定したのは
住みやすさと学力レベルの高い札幌

セガは2022年3月、北海道札幌に、子会社である「セガ札幌スタジオ」を開所しました。手がけるのは、ゲームの開発、および品質管理です。ゲームを楽しんでいただくためには、アイデアや美しいビジュアルはもちろんですが、確実に動作する精度の高さも非常に重要です。そのため、品質管理としてプログラム内のバグを取り除く、デバッグという作業が大きな役割を担っています。安定した開発ラインを確保していくうえで、こうした人材を大量に採用するには、競合が多い東京や関西圏を離れた場所で拠点を立ち上げる必要性があったのです。

そのためのプロジェクトは2021年3月からスタートしました。コロナ禍で思うように現地に飛べないままの候補地選びが始まりました。当初の選択基準は人口比率や大学・専門学校の数、そして何人かは東京から転勤するので、住みやすい街であることも重視。その結果1ヶ月で候補を6都市に絞り、その後は行政の企業誘致活動を鑑みて、地方自治体とオンライン会議しながら絞り込みを進めました。そして2ヶ月後には4ヶ所に絞り、さらに調査をすると同時に、現地に駐在して働ける人材のピックアップをしていったのです。

株式会社 セガ札幌スタジオ

こうして6月には、札幌に決定。理由は、人口200万人を擁しながら近くに自然も広がり、住みたい街ランキングの上位にあるため、Iターン、Uターン採用も期待できること。さらにゲーム開発において協業できる同業会社が多数、存在していたことでした。他社と協業するには、対面で仕事ができるメリットは大きいのです。本来なら、既存の会社を買収して新拠点を立ち上げるという選択もあったのですが、セガのチャレンジ精神をきっちりと啓蒙しながら育てたいという思いから、スタジオをゼロから立ち上げることにこだわりました。

当時の札幌は冬季オリンピックの誘致や、北海道新幹線延伸など話題が多く、再開発に沸いており、オフィス市場はタイトな状況でした。そうした中、当初から最低限100名規模が入居できるオフィスを探し、札幌市の協力でいくつかの候補が上がってきました。すぐに部下が飛び、2日間で25の物件を内覧し、六つに絞ったところで私も出向き、最終的に新築だった現在のビルに決定しました。25件中、新築物件はここを含めて2物件だけという状況だったのには驚きましたね。

場所は札幌駅から徒歩5分。北海道大学のそばの閑静なエリアに建つ、ワンフロア約184坪のビルで、スタート時は東京からの駐在員が4名だけでの開所でした。当初はここが埋まらなかったらどうしようという不安もありましたが、開所から1年が経過した現在、すすきのの近くに181坪の第2スタジオを開設するまでに拡大しています。今後、グローバルな展開を検討していますが、札幌の人たちは能力が高い人材が多く、英語でのコミュニケーションができる人も採用しやすい。ここが世界のゲームのクオリティを向上させる拠点になる可能性を秘めているのです。彼らにはデバッグの経験を活かして開発も手がけられるような人材になってもらいたいと考えており、楽しんで成長してほしいと思っています。

株式会社 セガ札幌スタジオ

地域と協力した人材育成で
エンタメ業界の発展に寄与する

当社では昨年の10月に、札幌市や、札幌を拠点とするゲーム会社7社と協力して「Sapporo Game Camp」というイベントを開催しました。ゲームクリエイターや将来のIT人材の育成が目的で、クリエイターになりたい社会人や学生を7人1組のチームにし、そこにプロのクリエイターが入って、2日間でゲームを作るというものです。そのほかゲームのプログラミング講座やeスポーツの体験会なども催しており、こうした体験を通じて、ゲームの仕事にはどんな要素があって、何を学べば業界に入れるかを知ってもらっています。今年の10月には、規模を2倍にして実施する計画が進行中です。地元に根付いて、札幌の将来のクリエイターやIT人材を育成することが、札幌への恩返しであると同時に、エンタメ業界の発展にもつながっていくと思います。

札幌に拠点を構えたことを手始めに、こうした成功体験を将来につなげることが、業界全体の発展に寄与することを願っています。

株式会社 セガ札幌スタジオ
株式会社 セガ札幌スタジオ
上記内容は 「BZ空間」2023年夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。