「ソフト」と「ハード」を掛け合わせる

不動産戦略・動向
更新日 : 2026年10月07日掲載日 : 2026年10月07日
倉庫
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~物流効率化×CRE戦略が生み出す、拠点の新たな価値~

物流課題の解決策として、多くの企業がまず着手するのは業務改善だ。配送ルートの見直し、庫内作業の効率化、3PL事業者※3への委託。これらは確かに有効な手段だが、それだけでは限界がある。抜本的な解決に向けては、もう1つの視点が欠かせない。CRE(企業不動産)戦略だ。例えば、使用率の低い倉庫があったとしよう。そのまま保有し続ければ、コストだけがかかり続ける。しかし、売却もしくは貸し出しをして資金を得れば、その資金を本業に再投資して利益の最大化を図ることができる—これがCRE戦略の本質だ。

「物流効率化(ソフト)」と「CRE戦略(ハード)」を掛け合わせたハイブリッド手法こそが、物流拠点を単なるコストセンターから価値創造の拠点へと変える新方程式である。

図03:物流効率化とCRE戦略のハイブリッド手法

そもそも「CRE戦略」とは何か

私たちがお客様にCRE戦略を説明する際、必ず引用するのが「不動産は、ただの箱ではなく、経営資源そのものである」という考え方です。 多くの企業が物流拠点を「単なる賃借物」として捉えがちですが、私たちはいつも「それは資産であり、負債でもある」と指摘します。経営戦略と不動産ポートフォリオを整合させること。これが私のコンサルティングの出発点です。 コスト削減、資産効率、事業成長、そしてESGへの貢献。これらを実現するために、どこに、いくつ、どんなスペックで拠点を置くか。この判断そのものが経営戦略であり、CRE戦略なのです。

ソフトだけでは解決しない「構造的限界」

現場で多く見られる失敗例は、「ソフト面だけを手を入れて、ハード面を無視した」ケースです。例えば、倉庫内作業をいくら効率化しても、そもそも立地が悪く配送距離が長すぎるなら、限界はすぐに見えます。逆に、不動産戦略だけで拠点を集約し、肝心のオペレーション構築を疎かにすれば、現場は混乱しサービスレベルが低下します。 私たちがこの「ハイブリッド手法」を推し進める理由は明白です。物流の専門知識(ソフト)と、不動産の専門知識(ハード)の双方が揃って初めて、抜本的な解決が可能になるからです。

図04:CBRE サプライチェーンアドバイザリーサービス

私たちが実践する「ソフト戦略」の5大アプローチ

私たちが物流改善のコンサルティングを行う際、通常、以下の5つのステップで徹底的にデータを分析します。

① 拠点配置シミュレーション:現状の物量データを元に、「配送の重心地」を割り出し、あるべき拠点の数と規模を導き出します。

② 配車分析:配送効率を最大限に高めるための車両台数や積載率をシミュレーションし、拠点の選び方を最適化します。

③ 業務効率化アセスメント:現場の作業効率を客観的に評価し、自動化や省人化が「投資対効果に見合うか」を検証します。

④ 施設デザイン:荷物の特性に応じた最適なゾーニングを設計します。これがないと、自動化設備は宝の持ち腐れになります。

⑤ 労働力分析:これが特に重要です。どれだけ良い立地でも、人が集まらなければ拠点は稼働しません。私たちは周辺の人口動態や賃金相場まで踏み込んで検証します。

CRE戦略が「仕上げ」となる理由

物流改善を行った後、私たちが提案するのが「余剰不動産の処分」です。拠点集約によって空いた不動産をどうするか。これを放置すれば、物流コストを下げても不動産維持費で相殺されてしまいます。私たちが得意とするのは、物流改善の効果を最大化するハード戦略です。例えば、遊休倉庫を賃貸に出して収益源に変える。あるいは不動産市況が良いタイミングで売却し、成長投資へ回す。セール&リースバック※4(以下、S&LB)を活用してバランスシートを軽くする。物流の改善効果を、不動産の力で増幅させる。これが私たちのやり方です。

情報の見える化が鍵

私たちがお客様に最初に求めるのは、「ポートフォリオの見える化」です。散在している拠点データ、賃料、契約期限、築年数。これらが整理されていない企業は少なくありません。市場データと自社データを照らし合わせ、客観的な事実に基づいて経営判断を下す。これらができれば、CREの戦略精度は劇的に向上します。

図05:物流効率化とCRE戦略―比較と相乗効果

※3:Third Party Logisticsの略称で、物流業務全般を第三者の専門業者に一括で外部委託するサービスを提供する事業者
※4:不動産を売却後も賃借して継続利用できる仕組みで、資産を活用しながら資金を確保できる。
※5:Supply Chain Management: サプライチェーンマネジメントの略称

上記内容は 「BZ空間」2026秋号 掲載記事
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