中部圏、特に愛知県は地理的に日本の中央に当たり、東名および名神高速道路の二大基幹高速道路をはじめ、中央自動車道、東海北陸自動車道など主要な道路が結節する交通の要衝である。その中でも、名古屋市の北に位置し、東西南北への輸送の起点となる小牧IC周辺が物流の中心を担ってきた。これまで新規供給が年間0~2棟と少なかったことも奏功し、このエリアで2010年以降に竣工した物件は、いずれも竣工時に満室稼働という状況が続いた。
そこに、2014年Q4に「グッドマン大府」が竣工する。この物件は従来の物流立地である小牧市から離れた湾岸部に建設されたにも関わらず、竣工時の稼働率は75%で、半年間で100%に達した。改めてこの立地をみると、伊勢湾岸自動車道のインターチェンジ至近で、名古屋市街に向かう経路としても申し分ない。新東名・新名神高速道路開通後は、注目度がさらに高まると目される。このように、物流集積地として確立されたエリアからは離れた地域での賃貸物流施設の成功が、他のデベロッパーの開発意欲を後押しする結果となった。2015年は折しも物流不動産に参入するデベロッパー・投資家が増加した時期とも重なり、中部圏での物流施設開発計画は一気に増加した。
中部圏での2017年以降の開発計画は、名古屋市の北側の春日井市や稲沢市などに計画地が広がっているほか、名古屋市南区といった湾岸部にも複数の計画が存在する。これまでは供給面積が年平均15,000坪足らずだった中部圏マーケットにあって、2017年Q1には5棟、50,000坪超もの竣工が予定されている。しかし2016年Q3時点ですでにその約50%の面積でテナントが内定している。マーケットが小さく実績も少ないとはいえ、このような早い段階からリーシングが進展したことは過去に例がなく、大型の物流施設に対する潜在的な需要の強さを示している。
中部圏における強固な製造業群は、物流施設に対する需要を牽引してきた反面、皮肉にも、新たな物流施設の供給を抑制してきた存在でもある。というのも、首都圏・近畿圏におけるLMTマーケットの拡大は、大手製造業のリストラや工場の閉鎖・移転により、大型の開発用地が市場に出てきたことで促進された面もあった。ところが中部圏では、大規模な売却案件は全くと言っていいほどない。いくつかの工場のスクラップアンドビルドや土地売却はみられたものの、その多くは製造業という業界の中で完結してしまった。中部圏ではデベロッパーの投資意欲がなかなか高まらなかったことも事実だが、実際の投資機会が限られていたこともまた、新規供給が限られたことの背景にあったのである。そして、この地域の製造業の基盤が引き続き強固であることは、今後も中部圏の物流施設のストックが極端に膨張する可能性が低いことを示唆している。現時点で2019年以降の開発計画はまったくみられないことに鑑みても、将来的には再び空室率が0%に近づき、潜在需要に対して物件が不足する状況も考えられる。