株式会社フィリップス エレクトロニクス ジャパン

ケーススタディ
更新日 : 2018年01月21日掲載日 : 2017年04月11日
倉庫
大倉 知彦氏

ビジネスの急成長で増え続ける拠点。
全体最適の観点から空間・管理効率を図った
首都圏の拠点集約・統合プロジェクト。

株式会社フィリップスエレクトロニクス ジャパン
リアルエステート部 部長
大倉 知彦氏

フィリップスの日本法人は、首都圏に分散する医療機器部門の物流拠点を集約・統合するプロジェクトを進行中だ。新たな拠点として「レッドウッド川越ディストリビューションセンター」を選定し、今年夏から同センターでの操業を目指している。フィリップスの拠点集約・統合の考え方や、川越という立地選択、施設の1棟借りのメリットについて、プロジェクトを統括するリアルエステート部の大倉知彦氏に話をうかがった。

オランダを本拠地とするロイヤル フィリップスは、125年以上にわたり、人々の生活の向上を目指して常に革新的であり続け、ヘルスケア、パーソナルヘルス、コネクテッドケアおよびヘルスインフォマティクスの分野において健やかで満ち足りた暮らしを提供するヘルステック企業です。日本でのビジネスは1950年代に開始し、60年以上の歴史があります。

今回、当社の医療機器を取り扱う物流施設のうち、首都圏に分散する拠点を集約し、埼玉県・川越の「レッドウッド川越ディストリビューションセンター」に統合することになりました。私たちはヘルスケアカンパニーとして、輸入した医療機器を検品し、全国に出荷する体制を構築しています。拠点集約・統合の背景には、首都圏における拠点数の増加があります。近年はお蔭様でビジネスが好調で、取り扱いボリュームが格段に増えています。ボリュームの増大にその都度対応し、応急処置的に拠点を増やしてきたことで、首都圏だけでもかなりの数の検品・物流施設を抱えるに至っています。

拠点数が増加したもう1つの理由は、オランダ本社が医療機器関連会社を買収しグループ会社が増えたことです。2008年には呼吸器分野のレスピロニクス社を、2013年にはカテーテル分野のボルケーノ社を買収し、それぞれの日本企業もフィリップス傘下となりました。それに伴い、レスピロニクス社とボルケーノ社が独自に持っていた物流施設も引き継ぐことになったのです。

もちろん、グループ内で施設を相互利用するなど、これまでも有効活用を進めてきました。しかし、機能上の重複や、それに伴う空間活用の非効率さは否めません。例えば、湾岸エリアの平和島にはフィリップス社の検品・物流倉庫が複数あるほか、ボルケーノ社の検品・物流施設もあります。千葉県の市原と埼玉県の宮原にはレスピロニクス社が検品・物流施設を持っており、機能の重複があります。また、物流施設はオフィスとは異なり繁華な立地にあるわけではないため、食堂やミーティングルームなど従業員のためのサポート空間も備える必要があります。施設が分散すればそれらの機能も分散・重複することになり、空間効率が悪くなるのです。

加えて施設が分散していると、管理も難しくなります。例えば、千葉の市原と埼玉の宮原にあるレスピロニクス社の施設は、埼玉勤務のマネージャーが統括しています。担当者は千葉と埼玉を行き来しなければならず、管理負荷は相当なものです。

拠点数をこれだけ増やしてもまだ、取り扱いボリュームの増加に追い付いていないのが実情です。とはいえ、既存拠点がすべて荷物で埋まっているわけではありません。ニーズが高い施設に利用が集中する一方で、余剰空間が残っている施設もあります。これまでのように施設不足を応急手当的に解消するやり方は、全体の空間効率や管理負荷を考えると限界にきています。部門やグループ会社の垣根を越え、全体最適の視点で拠点を構築することが望ましいだろうと。そうすることで、将来の会社の成長にも対応したいと考えました。

拠点集約により効率化を図ることで、医療機関や患者様などエンドユーザーにも大きなベネフィットがあります。全体の空間効率や管理効率がよくなれば、コスト削減につながります。また、従来はある拠点で荷揚げし、その後別の拠点に移して検品し、全国に出荷する製品もありました。これらの機能を1ヶ所に集約すれば、中継拠点が減り、速やかにお客様に製品をお届けすることができるはずです。

レッドウッド川越

今回の拠点集約は、埼玉県の拠点を利用する物流部門から発せられたスペース拡張ニーズに端を発しています。一方でフィリップス全体を見回すと、より総合的な検討、対策が必要であることが分かりました。

まず議論となったのは、どの機能を新たな拠点に集約するかということ。すべての拠点を統合すればいいというわけではありません。当社の物流拠点には、輸入医療機器の検品機能と全国への出荷機能の両方が不可欠だと述べましたが、製品によっては既存の場所に拠点があった方がいいケースもあります。例えば、CTやMRIなど超大型画像診断装置の場合、湾岸エリアに検品・物流拠点を設けています。これだけの超大型機器を陸揚げし、検品して全国へ出荷するにはかなりの設備が必要であり、従来どおり湾岸エリアに拠点を残す判断をしました。一方、同じく湾岸エリアには、ボルケーノ社のカテーテル関連の検品・物流拠点もあります。小型で軽量な医療機器の検品や出荷は内陸でもできるため、新拠点に移すという具合です。

このように既存の拠点を1つひとつ検証し、効率よく速やかにお客様に医療機器を届けられる物流体制の構築を目指したわけです。議論の過程では、各部門から「自分たちの担当する機能は今の場所に置いておきたい」という要望も多かれ少なかれ出てきました。しかし、最終的には全体的な利益を理解し、納得してもらえたと思います。その結果、集約の対象として、千葉県、東京湾岸、埼玉県に分散する物流機能、検品機能、レンタル後に返却された医療機器の保管機能等を新拠点に移すことになったのです。

レッドウッド川越

新拠点の立地を選択するにあたっては、主要高速道路からのアクセスなど物流施設に不可欠の要件に加え、埼玉(宮原)にある検品機能をスムーズに移転できることを優先しました。一般商材と比べ医療機器の検品は、専門的な知識や技能を必要とします。そして当社は製品の品質を極めて重視しています。この検品プロセスのためには、複雑な検品作業を落ち着いて行えるよう照明や空調などの環境を整えることはもちろん、検品のノウハウも必要です。つまり、検品できる人員の確保が必要だということです。検品機能を新拠点に移すにあたり、最も規模の大きかった宮原のセンターで検品に従事してきた方々もスムーズに移転できることが理想です。このため同エリアから離れ過ぎず、通勤圏内であることは重要な要素でした。

また、今回レッドウッド川越のA棟を丸ごと借りることになりましたが、この「1棟借り」も当社には魅力的でした。マルチテナント型施設への入居も不可能ではありませんが、現在の拠点群も1棟借りが多く、その方が医療機器を扱ううえではメリットが大きいと考えています。というのも、1棟を完全にコントロールすることで、医療機器の保管に適した温湿度管理やセキュリティを実現できるからです。コストメリットだけを考えれば、他社と施設を共有する方がいいのかもしれませんが、1棟の隅々まで目を光らせて、医療機器に相応しい環境を自らの責任で管理できるメリットは計り知れません。

レッドウッド川越は最新の物流施設で、既存拠点に比べグレードが上がるため、医療機器にとって大事な品質管理において大きな改善となります。また、既存の拠点に関して言えば、時間の経過による周辺環境の変化も懸念事項でした。昔は田畑に囲まれていたものの、10年余りの間に宅地化が進み、気づけば周りを子どもたちが走り回っている――そんなケースもあります。もちろん法的に問題ないとはいえ、医療機器で人々の健康をサポートする当社が、住宅地に大型トラックを出入りさせるのはいかがなものだろうかと。川越への拠点集約によって、長年の懸案だった周辺環境への配慮にも手を打つことができたのは良かったと思っています。

今回は医療機器の物流拠点を対象にしましたが、冒頭でもお話ししたように、当社はヘルスケアを軸に、日常生活で使う電動歯ブラシ、ひげそり、調理家電、美容機器など様々な製品を取り扱っています。今後、医療機器の概念が広がり、日常生活の中にある機器が皆様の健康を支える時代が来ます。当社も予防医療分野により大きくかかわっていくことが予想されます。そのときに、川越の拠点をどう活用していくのか。今後は医療機器以外の製品の物流も総合的に検討していくことになるかもしれません。