野村不動産株式会社

ケーススタディ
更新日 : 2018年01月21日掲載日 : 2017年04月11日
倉庫
山田 譲二氏

賃貸物件の汎用性を保ちつつ、
医療機器業種特有のニーズに応える
高機能物流施設を開発。

野村不動産株式会社
都市開発事業本部 物流施設事業部長
山田 譲二氏

野村不動産は、一般的なマルチテナント型施設では対応が難しい業種を想定し、一定の汎用性を確保しながらも、それぞれのニーズに最大限応える物流施設開発を進めている。ターゲットとする業種は、医療機器・医薬品をはじめ、大型重量貨物、アパレルなど多岐にわたる。同社物流施設事業部長の山田譲二氏に、業界特有のニーズに対応した開発の事例紹介と、医療・医薬品業界で必要とされる物流施設の要件についてうかがった。

Landport 春日部

私たち野村不動産グループでは、国内デベロッパーでは他社に先駆け、2004年から物流施設開発事業に取り組んできました。中でも高機能物流施設に力を入れており、現在、Landportの稼働施設は12物件、開発中が8物件。物流拠点の選定サポートから、企画設計、開発、運営まで一貫したサービスをご提供しています。

賃貸の物流施設というと、BTS型かマルチテナント型かの二者択一で語られることが多いのですが、私たちが目指すのは、いわば両方の利点を掛け合わせた施設です。BTS型では、お客様の個別の要望に適った施設を建設できますが、最近はビジネス環境の変化が著しく、普遍的に同じ施設を使い続けることは現実的ではありません。一方、テナントの入れ替えを前提とするマルチテナント型は、汎用性の高さを確保したいがために、一部のテナントにとっては使い勝手に難があったり、逆にオーバースペックだったりする場合もあります。そこで汎用型施設では対応しにくい専門性を有する業種をある程度想定し、それぞれのニーズに対応した施設をつくることで、マルチテナント型の汎用性とBTS型の個別性の両立を実現したいと考えています。単なる空間提供の域を越えて、お客様の付加価値創造の拠点づくりに貢献することが、デベロッパーとして私どもが目指すところです。

専門性を有する業種として、原料・重量物などの大型貨物やアパレルなどの分野で開発実績があり、今回のテーマである医療機器のお話をする前に、まずは、すでに稼働中のこれら分野向けの事例を通して、野村不動産の高機能物流施設開発の取り組みをご紹介できればと思います。

Landport 柏沼南

最初にご紹介するのは、2009年竣工の「Landport春日部」(埼玉県)です。原料や重量物などの大型貨物を取り扱うテナントを想定しており、延床面積8, 900坪、4階建の施設です。通常、マルチテナント型施設では床荷重1. 5トン、天井高5.5メートルが標準と言われていますが、標準スペックでは受け入れが困難だった大型貨物を取り扱うお客様の要望を取り入れ、この施設では床荷重2. 5トン(1階は3トン)、天井高7メートル(1階と2階)で設計しています。現在、原料を取り扱うお客様と契約を結んでいますが、仮に現在のテナントが退去されても、床荷重を増強した施設を必要とする荷主企業様にも対応できると見込んでいます。

次にご紹介するのは、昨年竣工したばかりの「Landport柏沼南I・II」(千葉県)です。これはアパレルテナントをターゲットにつくられた施設で、ワンフロア約5 , 0 0 0 坪のビル型・スロープ型の2 棟構成、延床面積は合わせて32, 300坪です。アパレルを対象にしたのは、オムニチャネル化に伴い物流施設の統合が進んでいることに加え、人材が確保しやすい内陸部の柏にアパレル関連の物流施設が集積している背景があったからです。

アパレル特有の課題として、前述の大型貨物とは逆で、標準スペックは過剰だというご意見をいただいていました。荷重をそれほど必要としないアパレルにとって、床荷重は500キロ、天井高は3. 5メートルで十分だとおっしゃいます。一方で、季節や時期によって生じる需要の増減や、季節品の保管などで、必要な倉庫面積が変動するという課題もありました。そこでこの施設では、天井高をあえて通常より高い6. 5メートルとし、逆に容積率には余裕を持たせて、メザニンラックを設置して中二階の空間を設けられるようにしました。通常は余剰空間となってしまう床上3.5メートル以上のスペースを有効活用することで、アパレルテナントの使いやすさを具現化した施設と言えます。

柏沼南I・IIともに、通信販売と店舗の物流統合を検討されていたアパレルテナントの入居が決定し、オムニチャネルセンターとしての稼働を開始しています。加えて、店舗向け在庫管理、EC、撮影など様々な機能が1つの建物内に集結した拠点が構築されており、こうしたアパレルの特性を考慮した物流施設を賃貸で提供しているのは、近年めずらしい事例ではないでしょうか。

Landport 高槻

汎用施設での対応が難しい最たる分野の1つが、医療機器や医薬品ではないかと思います。医療機器・医薬品など高付加価値品のテナントの利用を想定して建設したのが、今年竣工予定の「Landport高槻」(大阪府)で、延床面積26,745坪、ダブルランプウェイ型の通過型物流センターです。

医療機器・医薬品向け施設のニーズとして、有事に強いセンターであることが必要不可欠です。免震構造の採用や非常用発電施設の設置によりBCPにしっかりと対応することで、医療機器・医薬品以外でも高付加価値品のテナントニーズにマッチする施設になるだろうと考えました。高槻という立地を選んだのは、大阪では南港を中心とした湾岸部に物件が集中する一方、高槻を含む北摂方面には物件が少なく、地震時に津波等の影響を受けないからです。また、湾岸エリアに比べて人材確保がしやすく、関西の各方面へ広範囲にアクセスしやすいという利便性からも、ニーズが高いだろうと考えました。

とはいえ、医療機器や医薬品という荷は人の命に関わる分野だけに規制も多く、私どもも業界知識を蓄積しながら、はたしてこのようなテナントが使いやすい施設とはどういうものか模索しているのが正直なところです。また、この分野は専門性の高さから、建物の供給だけでなく、オペレーションも含めたサポートが求められる傾向にあります。今後は私どものハード面の供給に加え、シンクタンクである野村総合研究所と連携したコンサルティング機能、物流会社の現場力を組み合わせながら、荷主となるお客様の抱える課題やニーズを総合的に解決できる体制を構築していきたいと考えています。

また、医療機器や医薬品といった高付加価値商品を取り扱う拠点の立地面においては、今後、より東京都心部近くのニーズが高まっていくと予想しています。ただ、首都圏の市街地にはあまり広い土地がないため、コンパクトな物件ながら、配送利便性の高い施設を開発していくべきだと考えています。その一例として、今年、東雲に着工予定の物件は、羽田空港に近い立地特性を生かし、温度帯を備えた冷凍・冷蔵倉庫や、注文から数時間以内で配送可能なコンパクトな都市型物流施設を想定しています。この物件は、医療機器系の企業様にも興味を持っていただいています。来年には習志野で当社における関東圏最大の物件開発も予定しており、テナントニーズに最大限対応できるような施設展開を進めていきたいと思っています。

当社ではまた、業界ごとにどのような施設が必要とされているかを知るため、特定業界向けの物流改善セミナーを年に2回開催しています。アパレル、IoT物流、食品などテーマを決めて、野村総合研究所をはじめとする各業界の専門家を招き、現状の課題や改善策などについて講演いただいています。直近のメディカルセミナーでは、定員100名に対し、約250名の応募があり、関心の高さを実感しています。私どもも様々な業界の動向やニーズを研究しながら、今後も各業界の特性に合った物流施設の展開を進めてまいります。