賃貸借契約において重視する項目を、1位から3位まで順位づけしてもらった。内装費や賃料を含む「イニシャル/ランニングコストの掛かり方」の回答数が22件と最も多く、「売上歩合」(14件)、「解約や更新のオプション」(13件)が続いた。「イニシャル/ランニングコストの掛かり方」を重視するリテーラーが多いという結果は、日本の既存店でも同じことが言えそうだ。特に海外での出店では、税金の掛かり方が国によって異なり高額な負担を強いられることもあるため注意が必要となる。
ショッピングセンターでは、「売上歩合」の支払いは必須に近い。海外では出店先のショッピングセンターが運営するEコマースでの売り上げまでもが、歩合の対象となるケースがある(ただし、今回の調査で「オンライン売上に対する歩合賃料の割合」を選んだ回答数は1件にとどまった)。
また、「解約や更新のオプション」は、海外リテーラーが日本に出店する際にも必ずと言っていいほど慎重に検討する項目である。背景には、事業リスクを抑えるため、マーケットが変化した際に店舗戦略を柔軟に変更できるようにしたいという思惑がある。
回答総数では4位だったものの、「看板やファサードデザイン、内装の柔軟性」を重視する点として1位に選んだ回答者数は3番目に多かった。これらの回答者は、出店店舗の形態を訊いた設問では「(商業中心地の)路面店舗」を嗜好している。店舗の作り込みに際し、路面店舗はショッピングセンターよりも自由度が高いことと関連しそうである。
一方、日本のリテールマーケットでは内装工事期間に限定されやすい「フリーレントなどのインセンティブ」は、本アンケートでも1件のみだった。ただし、商習慣が異なる海外では、店舗の開店後のフリーレントが一般的な国や地域もあるため、交渉すべき項目に挙げられるかもしれない。
3-2 図10
次に、物件を選択する上で重視する項目を、重視する順に1位から5位として訊いた。「商業エリアとしての環境と客層」「ブランドイメージと合うかどうか」「賃借に関する費用全般」が17件と最も多かった。また、1位の回答はなかったものの、「歩行量や歩行者の動線」も16件挙げられた。
物件選択において最重要視されやすいのは立地である。そのため、「商業エリアとしての環境と客層」がトップの1つだったことに不思議はないだろう。「ブランドイメージと合うかどうか」は物件や立地のほか、近隣に出店するブランドの並びにも関連性がありそうだ。「賃借に関する費用全般」については、賃料負担と投資とのバランスがポイントと考えられる。高額な賃料を負担するために、店舗の外装/内装などの作り込みや、製品の流通や在庫確保などへの投資額が減ってしまえば、結果として店舗のクオリティを低下させることになってしまう。一方、賃料を抑えすぎれば、ブランドのイメージと異なる立地しか選べないことにもなりかねない。「歩行量や歩行者の動線」は、ブランド認知度の向上や売上の増加を考える上で必ず考慮する項目の1つと言える。これらの回答者は、出店店舗の形態を訊いた設問では「(商業中心地の)路面店舗」や「ショッピングセンター」を嗜好していた。路面店舗のみならず、ショッピングセンター内であっても、より人が集まりやすい区画に出店することが重視されるようである。
3-3 図11
出店を検討する上での懸念点を訊いたところ、「現地の商習慣の把握」(82.6%)、「優秀な人材の獲得」(78.3%)、「法規制の把握」(65.2%)という順になった。いずれも日本での出店とは事情が異なるほか、出店を検討する地域や国ごとに大きな違いが出る項目だ。そのほか、「物件探し」や「パートナー探し」( いずれも47.8%)、「投資資金の回収期間」(43.5%)、「為替の変動」(39.1%)といった項目を懸念するリテーラーも一定数みられる。他の設問に比べて回答が分散していることから、海外での出店に際し注意を払うべき点の多さが改めてみてとれる。海外進出または海外店舗の拡大に前向きなリテーラーは半数を超えている反面、抱えている不安は広範囲に及ぶと言えるかもしれない。
今回の特集では、「CBREリテーラー意識調査2017」の結果や、既に海外に進出している日本のリテーラーの傾向や、実態から、彼らのアウトバウンド戦略やその課題などを分析した。海外進出または海外店舗の拡大に積極的なリテーラーが多くみられたほか、ブランドまたは販売戦略によって進出エリアや出店店舗の形態などに違いがあることがわかった。一方、現地の商習慣の把握など、日本とは事情が異なる海外への出店に際し、リテーラーが懸念する事項は多岐に渡っている。国内では消費の伸び悩みが続いており、今後の人口減少に鑑みると、現時点ではこれが大きく改善するとは考えにくい。ドラッグストアなど一部の業種を除けば、インバウンド需要にも一服感が出ている。国内市場のこういった環境を背景に、販路の多角化を推進するため、今後も海外に進出するリテーラーは増加するだろう。ただし、世界経済の先行きにも不透明感が高まっている。リテーラーによる海外戦略の策定には、十分なリサーチとマーケットの理解が、これまで以上に必要となりそうだ。