2. 海外進出または海外店舗の拡大における戦略

不動産戦略・動向
更新日 : 2018年01月29日掲載日 : 2017年08月08日
店舗

2-1 図5

2-1 図5 人気の地域

海外への進出や出店にあたり、どの地域を検討しているかを訊いた。一番人気は「アジア地域」(96.8%)で、「北アメリカ地域」(54.8%)、「ヨーロッパ・中東・アフリカ地域」(51.6%)と続いた。新興国が多く、高い経済成長が期待される「アジア地域」は、出店コストが抑えられるメリットもあって業種を問わず人気が高い。売上の拡大を目指すファッションリテーラーも、「アジア地域」を志向する傾向が強いようだ。同地域の人々が日本人の体形に近似しているため、国内規格の製品をそのまま販売できるメリットもある。

「北アメリカ地域」や「ヨーロッパ・中東・アフリカ地域」には、自身のブランド力や認知度の向上を目指すファッションリテーラーの人気が集まっていると推察する。ただし、日本人向けよりもサイズの大きい製品を作る工場を現地に設置する必要があり、コスト面でのハードルが一段上がる。一定数の出店が見込めなければ、工場設置までの決断はしにくい。

「太平洋地域」のオーストラリアは、日本とは異なるサイズを作る必要がある一方、日本からの距離の近さや国民の平均年収の高さを魅力と感じるリテーラーは多い。ただし、北半球に位置する日本に対して南半球のオーストラリアは季節が真逆となるため、販売・企画する製品の扱いには工夫が必要になりそうだ。

2013年に「和食」がユネスコの無形文化財に登録されたことなどを契機とした世界的な日本食ブームを追い風に、飲食リテーラーによる海外進出や店舗拡大が加速している。世界全体の日本食レストラン数は2013年には約5.5万店だったが、2年後の2015年には約8.9万店と約1.6倍に増えている※2。最も増加率が高いのは、オセアニアの約2.6倍、次いで中東の約2.4倍、アフリカの約2倍、欧州の約1.9倍となっており、アジアは約1.7倍だ。飲食チェーン店は、進出希望エリアに直営の1号店をオープンした後、現地企業によるフランチャイズ化で出店を拡大するケースが多い。また、基本的には各店舗で調理することができるため、工場などの新設は不要となる。他の物販などの業種と異なり、調理に必要な食材を日本からの輸送のみならず現地で調達することができる容易さも、全世界的な急拡大を支えていると言えそうだ。

※2 外務省調べ、農林水産省推計

2-2 図6

2-2 図6 出店店舗の数

次に、今後3年の間に世界全体で何店舗程度の出店を検討しているかを訊いたところ、「1-5店舗」が81.3%と大半を占めた。これは、出店に関する投資金額が限定されることが大きな理由になりそうだ。新規出店時にリテーラーが支払う初期投資額は企業の収益全体にとって大きな負担になりやすい。そのため日本国内でも、年間10店舗以上の店舗を増やすことができる業種は、コンビニやドラッグストア、量販店など限定的だ。日本国内よりも投資額が大きくなりやすい海外店舗となると、3年間で「1-5店舗」程度の出店に抑えられよう。また、新しいマーケットへの参入に際してテストマーケティング期間を設けるリテーラーがいるほか、優秀な人材の確保の難しさをリテーラーが感じていることも、出店可能な店舗数が少ない理由と言えそうだ。

なお、「1-5店舗」と回答したほぼ全社が、出店地域を訊いた設問では「アジア地域」と答えていた。

2-3 図7

2-3 図7 出店店舗の形態

海外で出店を検討する店舗の形態では「ショッピングセンター」が75.0%で最も多く、「(商業中心地の)路面店舗」(70.8%)、「オープンエア型のショッピングセンター」(45.8%)が続いた。広義のショッピングセンター(ショッピングセンター、オープンエア型のショッピングセンター、ロードサイド型ショッピングセンター)や「百貨店」は施設側が標準的なインフラを整えており、また「(商業中心地の)路面店舗」に比べて賃料が安いため、コスト重視の出店と言えそうだ。特に、シンガポール以外の東南アジアに出店を検討するリテーラーは、出店先としてショッピングセンターを選ぶケースがほとんどとなる。これは平均気温が25°以上と高く、雨季には熱帯特有の急な雷雨やスコールが多くみられることから、空調がよく効いた快適な環境下でショッピングをしたい消費者が多いことが理由と思われる。

一方、リテーラーによる「(商業中心地の)路面店舗」への出店戦略は、利益性よりもブランディング重視の出店と言えそうだ。ブランドの世界観を作り込んだ外装/内装を施し、商業中心地のハイストリートへ出店することでブランドの認知度やステータスの向上を図っていると考える。

「アウトレット」は16.7%と少数にとどまっている。「アウトレット」は、近隣エリアにおおむね6-10店舗以上の正規店舗がないと商品調達ができないと言われていることが理由と考えられる。今後3年間の出店店舗数を訊いた前設問では、8割のリテーラーが「1-5店舗」程度の出店を検討すると回答しており、この出店数の少なさと関連づけられそうだ。

2-4 図8

2-4 図8 出店店舗の面積

1店舗当たりの想定店舗面積では、「約30坪未満」と「約30坪-75坪未満」がそれぞれ41.7%と最も多く、「約75-100坪未満」が25.0%で続いた。回答者の属性をみると、いずれも日本の既存店と同程度の面積での出店を検討している。

「約30坪未満」または「約30坪-75坪未満」といった比較的小さな面積で出店先を探すリテーラーの業種は、「時計・宝飾品」や「靴・カバン」、「化粧品」といった比較的小さな商品を扱う物販、または飲食リテーラーである。「約200-300坪未満」「約300-500坪未満」「約500坪-750坪未満」といった比較的大きな面積を想定するのは、家具や雑貨を扱う大型店を主流とするリテーラーだ。唯一、ショッピングセンターや百貨店を運営するリテーラーは、「約750-1,000坪未満」と日本の既存店よりも小さな面積から出店を検討する傾向がみられた。

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