1|「CPI連動賃料」の現実と普及の限界

不動産戦略・動向
更新日 : 2026年09月30日掲載日 : 2026年10月01日
オフィス
NEW

昨今のインフレ傾向に伴い、「CPI(消費者物価指数)連動賃料」の導入が話題に上ることが増えてきました。今年初め頃に、主要デベロッパーを中心として熱心に検討・試行する動きが見られましたが、実際の現場における定着度は限定的ではないかと感じています。

その理由は複数ありますが、まず、都心オフィスの賃料相場とCPIの動きには必ずしも強い相関性がないという指摘があります。また、総務省が発表する1970年から55年間のCPI(指数・総合)の統計を振り返ると、実質的に右肩上がりで推移しており、「インフレによる改定」という名目はあるものの、事実上「賃料が上がり続けるだけの仕組み」になってしまいます。そのため、テナント側は受け入れに決して前向きではありません。実際に、大手デベロッパーの契約事例などを確認しても、定期借家契約の再契約時に協議の上で再契約可能とする特約条項(甲乙協議条項)を設け、再契約に承継する特約と承継されない特約がありますが、CPI連動賃料を「次回再契約時の必須条件」と言い切らないケースも見受けられ、市場の動向次第で引っ込める余地を残しているような状況です。

普及を阻む実務負担の大きさ

さらに決定的なのは、実務上の煩雑さです。CPI連動賃料を導入するということは短期的に賃料が変動するということですから、オーナー・テナントの双方が、例えば毎年賃料改定の手続きを行わなければなりません。特に大手企業のテナントでは、オフィス賃料を子会社や事業部門ごとに経費按分して負担させているケースも多く、毎年賃料が変わることで社内の経費精算や管理業務に甚大な負担が生じるため、現場からは強く嫌がられると考えられます。

例えば定期借家契約であれば、「定借で契約する」という手続きだけの変化で導入できましたが、CPI連動賃料は手続きの負荷が大きすぎます。個人オーナーや不動産を本業としない一般事業会社が所有する物件にまで広く浸透するとは考えにくく、定借のように一般的・不可逆的に定着するとは言えないのが実際のところでしょう。

「CPI連動賃料」の現実と普及の限界

上記内容は 「BZ空間」2026秋号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。