オフィス移転投資のコストシュミレーション CASE 6(医療機器メーカーのラボ・R&D拠点の移転)

ケーススタディ
更新日 : 2022年06月22日掲載日 : 2017年10月04日
オフィスR&D

最後のCASE 6で見ていくのは、既存のビルに、ラボやR&Dの機能を含んだオフィスを移転させる事例です。近年、賃貸オフィスビルへのR&D拠点の設立ニーズ、ラボ機能を含む事業拠点の移転ニーズが高まってきており、ここでは日系の医療機器メーカーが、500坪の床面積に、35名の社員と大型の特殊機器などを併せて移転するケースを考えています。

一般の賃貸オフィスビルでは、臭気や振動、騒音、危険物の取り扱いなどから、ラボやR&Dなどの入居に難色を示すケースが多いのは事実です。単純なオフィス移転とは異なりますから、ほとんどの場合、オフィス探しは仲介業者に依頼することになると思われますが、それでも、まずは入居OKのオーナーのビルを探すのに時間がかかることになります。

候補となる物件が見つかり、それでは移転コストを算出しようとなるわけですが、ここでも一般のオフィスとは異なり、ラボ・R&Dの数だけ固有の条件があると言っても決して過言ではありません。例えば床荷重ひとつとっても、一般のオフィスの床荷重は500kg/㎡程度、重荷重対応でも1,000kg/㎡が限界ですから、多くの場合、大規模な床の補強が必要となります。それでことが足りればいいのですが、重量を計算して耐えられないようであれば、地下階を有さないオフィスビルで1階部分が利用できるところに入居が限定されることになります。

電気設備についても、容量がビルの許容量を超えていれば専用にキュービクルを用意しなければならないでしょうし、その設置した場所からの幹線工事等も大工事になります。古いビルだと、補強しても床が持たない、電気容量を確保する手段がないといった問題が起こることもあるので注意が必要です。電気の使用量が大きければ発生する熱量も大きいため、空調設備の増設が必要になります。また、水にも注意が必要です。普通のキッチン程度の給排水なら床下の防水処理などで済みますが、ラボなどで大量の水を流さなければならない場合、下に別テナントがいると漏水リスクがあるため、設置を許可されない可能性が高くなります。この場合も、1階フロア限定であるとか、逆に複数フロアを賃借して、自社使用の上層の階にラボを入れるといった制約が出てくる可能性もあります。

入居時における建築設備工事費用を、ここでは上表のようにシミュレートしていますが、言うまでもなくケース・バイ・ケースであり、このケースではたまたまこの金額であったと捉えるべき価格です。一般的なオフィス移転でも、投資金額の多い少ないの差はもちろんあるのですが、ラボ・R&Dの移転の場合、事例はほとんど参考にならず、極端な話、ひとつの機器毎に入居工事にあたっての精査が必要となります。例えば重量だけでも、機械が軽ければ安く済むし、より重ければ、同シミュレーションよりさらに高くなるでしょう。

入居工事以外にも、機械の移設に伴う引越も簡単にはいきません。機械が大型であるほど移設にかかる費用がかさむことになりますし、また、専門性が高いものだと、製造したメーカーでなければ、解体、移設、再組立・再設置ができないことも考えられます。そうなると、移設費用は相手の言い値に任せるしかなくなるわけですから、可能なスケジュールとともに早めの確認が必要でしょう。CASE 6の引越費用を極端に高く試算しているのも、こうした事情を鑑みたものです。

そして忘れてはならないのが原状回復工事の費用です。大型の機械を入れていた場合は、特に原状回復に時間とコストがかかることは言うまでもありません。場合によっては、ここで想定している金額でも安過ぎるぐらいかもしれません。

以上のポイントは、ラボが占める面積の比率にかかわらず、必要になってくる要素となります。賃貸オフィスビルのオーナーとの交渉段階から、早めに専門家に相談して、コスト管理・スケジュール管理を徹底することが、移転成功の重要なファクターとなります。

ラボ・R&Dオフィス移転事例