フィンテック:不動産価値を万人に分配する|デジタル証券株式会社

不動産戦略・動向
更新日 : 2026年07月23日掲載日 : 2026年07月23日
投資・売買
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あらゆるものをデジタル証券化し、
誰もが参加できる民主的なマーケットを構築する。

法制度が整備された直後からその将来性に目をつけ、2020年に創業したデジタル証券。金融庁から財務省、さらには金融専門の弁護士として活躍した山本社長が目指したのは、単なる不動産の小口化、換金性向上ではなく、デジタル技術を駆使してあらゆる資産商品を、個人、機関投資家の隔たりなく直接、自由に取引できるマーケットプレイスだった。国内では黎明期だったセキュリティ・トークン(ST)のどこに魅力を感じ、その可能性を見極めたのか。その先を見据えた、新たなマーケットの設計図の全貌に迫る。

デジタル証券株式会社 代表取締役CEO 山本 浩平

デジタル証券株式会社 代表取締役CEO 山本 浩平 氏

金融のプロとして感じた、デジタル証券の可能性

当社はブロックチェーン技術を活用して発行・管理される有価証券であるデジタル証券(セキュリティ・トークン:ST)を活用したファンドの組成・運用からSTの販売、セカンダリー取引(二次流通)までを含めて一気通貫で提供する企業として2020年11月に創業しました。

私がSTを知ったのは、金融庁・財務省を経たのち、金融専門の弁護士としての経験を3年ほど積んだ2019年頃でした。すでにSTビジネスが進んでいた韓国や米国の事業者が日本進出を計画しており、その仲介役として金融当局と折衝する中、SBIグループから依頼を受け、 2020年頃から弁護士として色々なお手伝いを始めたのです。そこでSTの知見を広げるうちに大きな可能性を感じ、デジタル証券だけを取り扱う証券会社を創業しようと思ったのがきっかけです。

国内でのこうした動きは2020年、金融庁の肝いりで法整備が進んだことによります。本来なら大手証券会社が直接、乗り出しそうな話ですが、現実には商品を自ら組成するアセットマネジメント機能が、既存の商品販売との間に利益相反を生むこと、第一種・第二種金融商品取引業、投資運用業などのライセンス登録に手間と時間がかかること、基幹システムをSTに対応するようカスタマイズするのに莫大な投資が必要なことなどから、手が出しにくい状況にあったのではないかと思います。

その点、当社のようなスタートアップ企業ならST前提でシステムを構築できる上、ライセンス取得や監督指針対応、技術基準のクリアなど複層的な要素のディレクションがしやすいことも魅力の一つでした。

一気通貫のサービスでより投資しやすい、マーケットプレイスの構築を目指す

STのメリットは三つあります。一つ目は換金性で、ファンドの運用期間中に出資持分の売却により現金化できることで、流動性が高くなります。二つ目は小口化。従来なら機関投資家にしか手が出せなかった大規模な投資案件を、ブロックチェーン技術を用いて安全に小口化することで、一口10万円程度で購入できるため個人投資家層の拡大が期待できます。そして三つ目は、例えば株式における株主優待のような非金銭的なリターンを付与することで、投資体験の向上につなげることができる点です。

加えて当社の特長と言えるのが、これらのサービスを一気通貫で提供できること。現状メインである不動産STをビジネス化するには、上流から1.AM/ファンド組成、2.販売(募集・引受)、3.信託・ST管理業務、4.セカンダリー取引というフェーズがあり、それぞれ別会社が行っているのが一般的です。この方式だと組成から運用に多くのステークホルダーが関与しており、複雑になりがちというデメリットがあります。

これに対し当社は、子会社のシステムである「Owner Ship」を通じて一気通貫のサービスを構築しており、当事者が少ないため経済的および時間的コストを縮小することができるのです。さらに他のAM会社のSTファンドの組成・販売の支援も行っており、AM会社・投資家双方に利益をもたらすことができるのです。

当社の足もとの主力商品は不動産STですが、近い将来にはその他のオルタナティブ資産として、太陽光や航空機、船舶などのファンドを、さらに長期的にはワインや絵画、映画といったファンドを組成し、一つのプラットフォーム上でSTを販売したり、個人間、あるいは機関投資家間でSTを直接売買できるマーケットプレイスを構築することを目指しています。こうした投資家間で直接取引ができるデジタル証券のマーケットプレイスの構築を目指しているのは、当社だけの特長でしょう。

デジタル証券が目指す世界┃デジタル証券のマーケットプレイス

ライセンス取得に約4年、満を持して組成したファンド「renga」

ただ、こうした様々な資産を証券化するにはGK-TKスキームが必要であり、先に触れたライセンスが必要です。そのライセンスを取得するために約4年かかりました。設立当初の当社の社名は「デジタル証券準備株式会社」だったのですが、その間も売上は必要ですから、適格機関投資家等特例業務という、ライセンスがなくても届出をすればプロ向けにファンドが作れるスキームを活用しました。

そして2022年、業界初の「GK-TKスキーム」を活用したプロ向け不動産STファンドである「renga第0号」を組成。その後2023年以降「rengaプロ第1号」から現在までに第6号までを組成しています。その間、2025年5月には現社名に変更するとともに12月には個人投資家向けの「renga第1号」の運用を開始し、 2026年4月には「renga第2号」の運用を開始しています。

数字で見るrengaシリーズ

想像以上の期待感にあふれた、大手金融機関・商社の関わり

2020年の法改正以降、先に述べた各フェーズに、大手銀行、信託銀行、証券会社、商社などがこぞって参画したことを見ても、STの可能性を感じることができます。先見性を持った金融庁が音頭を取って始めた施策ですから、盛り上がらないはずがないでしょう。しかも、一般的に日本で何か新しいことをすれば横やりが入りそうなものですが、金融のデジタル化やフィンテックに対しての異議を、これまでほとんど耳にしたことがありません。それほど期待値の高い施策だったと言えますね。

何より一番驚いたのは、まだまだ知名度が低いにもかかわらず、2022~23年当時の当社ファンドのrengaプロに、住友生命や第一生命といった大手機関投資家が出資してくれたこと。我々としては商品に自信を持っていましたが、当時は金融機関が出資するのはハードルが高いと思っていただけに、正直びっくりしました。それだけ金融機関のデジタル化への期待が高かったことの表れでしょう。特にプロの投資家が求めたのが流動性です。不動産出資持分の流動性について、今までは低いと言われていたものが、このデジタル化によって高まるんじゃないか、という期待感が、壁を乗り越えさせたのかもしれません。

アセットありきのST業界、発展の鍵を握る不動産業界との融合

現状、いくつものST事業者が主たるアセットとしているのは不動産です。つまり、優良で魅力的な不動産の取得が商品組成上特に重要で、これまで機関投資家にしか手が出せなかった、いわゆるプロ物件を小口化し、誰でも購入、売買できる環境を整えることが大切なのです。

おかげさまで、当社には商品組成の段階で多数の案件情報が集まってきてはいますが、商品ラインナップを充実させるためにより多くの良質な物件を鋭意探索している状況です。また、販売面ではSBIと資本業務提携を結び、販売連携してもらうことになったため、組成面・販売面の両輪のバランスが整ってきました。

ST市場に誰もが驚くような知名度の高い不動産が流入することが、業界発展の起爆剤になることは間違いありません。ですが不動産業界の一部では、新参者の我々を従来の不動産ビジネスを壊す存在と認識しているような印象を受けます。しかしそれは大きな誤解であり、お互いが役割分担し、補完関係を築くことで、より大きなビジネスに昇華させることができると考えています。

ニューマネーの取り込みに不可欠な、J-REITとの新たな補完関係

不動産業界にとって証券化と言って最初に思い浮かぶのはJ-REITでしょう。 J-REITは流動性に優れた素晴らしい商品です。ですが2001年に2銘柄が上場して以来、25年が経過してもJ-REITへの個人投資家の参加率は8~10%と言われています。

その8~10%を獲り合うことに意味はありません。なぜならわが国には2300兆円もの家計金融資産が眠っているのですから。つまりは個人投資家層をいかに増やし、このニューマネーを積極的に不動産に投資してもらえるようにするかが重要であり、共通の課題なのです。そしてそれを実現する手段がデジタル証券なのです。

これまではプロの機関投資家しか買えなかった不動産がありました。小口化するより1社に買ってもらった方が手間がかからないのは事実です。ですが、バブル崩壊やリーマンショックの際、機関投資家の財布の紐が締まることで、物件の本質的な価値は変わらないのに不動産市場がクラッシュしてしまう。そういった経験を散々されてきたのではないでしょうか。不況時にポートフォリオの変更を余儀なくされる機関投資家と、自分の貯金がいきなり目減りするわけではない個人とが、得意不得意を補い合うことで不動産市況の安定化が図れますし、投資家サイドの資産運用ニーズにもマッチする、いわば三方よしです。それを実現するためにデジタル化の技術が必要なのです。

さらに言えば、不動産業界としては、出口戦略のオプションの一つになる。個人が好む新たなアセットの開発に取り組むことで、収益源の多様化につながる可能性もあります。ですからお互いが協力して優良な資産を届けることで、様々なステークホルダーが収益を上げるという図式を構築することが重要なのです。

個人・機関投資家の双方が、自由に売買できるマーケットプレイス

ここまで不動産を中心にお話ししてきましたが、当社にとって不動産はオプションの中の一つの選択肢でしかありません。先にも述べたとおり、様々なアセットを取り込んだプラットフォームとなって、投資家同士で自由に売買できるようになる。いわば投資の民主化への第一歩であり、その場であるSTのマーケットプレイスを構築することが、最大のミッションです。

かつてJ-REIT市場の立ち上げに関わった方々には、強い気概があったと感じています。我々も、今、同じ、いやそれ以上の熱量を持って、STを“当たり前”のものにしたいと奮闘しています。

上記内容は 「BZ空間」2026夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。
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