東京を舞台にマルチユースに対応した都市型物流施設を運営・開発。
地域に密着し、実績を積み上げていく
郊外で大型物流施設を展開してきた物流施設プロバイダー「プロロジス」も、都市型物流に着目する1社だ。国内では2020年より、そのニーズに対応する新ブランド「プロロジスアーバン」を展開。業界をリードしてきたプロロジスは、この市場の変化をどう読み解き、どう対応しているのか。アーバンシリーズのプロジェクトを牽引するプロロジスの栗原氏と小出氏に伺った。
Eコマースの普及により、需要の高まりを見せている都市型物流。近年はコロナ禍によるライフスタイルの変化で、ラストワンマイル拠点が話題に上ることも多いが、この物流市場の変化をいち早く見越していた企業の1社が、物流施設プロバイダーのプロロジスだ。プロロジスといえば、1999年に日本に進出。以降20数年にわたり、大型物流施設を手がけてきた。中でも1棟を複数のテナントに貸し出すマルチテナント型物流施設においては、業界をリードしてきた存在と言えるだろう。
そのプロロジスが、東京はもとより、ロンドン・ニューヨーク・パリなど、世界の人口集積都市において、より効率的な配送を実現するために立ち上げた物流施設ブランドが「プロロジスアーバン」だ。国内においては、2020年7月より「プロロジスアーバン東京品川1」が稼働。地上6階建、延床面積約28,000㎡で、配送拠点としてはもちろん、オフィスやショールーム、撮影・音楽スタジオ、プロトタイプ製品の実験・開発拠点など、幅広い用途を想定したマルチユースの都市型物流施設となっている。続く同年11月には「プロロジスアーバン東京足立1」を、2022年3月には「プロロジスアーバン東京足立2」を展開。また、2022年夏にリニューアルした「プロロジスアーバン東京押上1」は、都心のオフィス並みのアクセス利便性と、物流施設としての機能性を活かし、プロトタイプ開発拠点とデモルームの併設、ショールーム兼配送拠点、音響・映像スタジオなど、オフィスや物流施設・工場の垣根を越えた新たな拠点だ。それぞれにマルチテナント型物流施設を手がけてきたプロロジスのノウハウが活かされている。プロロジスは現在、都内6ヶ所でアーバンシリーズを運営・開発中だ。
プロロジスアーバン東京品川1・共用部
「都市型物流施設の検討を始めたのは、2017年です」。そう語るのは、プロロジスのバイスプレジデントで開発部長の栗原祥之氏だ。「当時はEコマースが加速度的に普及するとともに、運送会社における労働者不足や過重労働など、いわゆる宅配クライシスが問題になりはじめていました。そのような状況を鑑みたとき、われわれとしては、人が集まる都心部に拠点を設ければ配送効率が改善し、小規模でがんばっていらっしゃる運送会社さんの課題解決につながるのでは?と、仮説を立てました」。
そこで、実際に都内の小規模物流施設に目を向ければ、どこかしこも高稼働。加えて、老朽化した施設も目立ったという。「そのとき、小規模でも最新鋭の物流施設を供給できたら、需要は必ず生まれるだろうと思いました。東京近郊にはEコマースを代表する企業も拠点を構えていますし、そのような会社との連携もイメージに浮かびましたね」。
そうした流れのもと、仮説を実証すべく、アーバンシリーズ第1号として東京品川1を計画。物流拠点としてはもちろん、ビジネスの多様性に富む東京というマーケットを意識し、用途をマルチユースとした。その結果、都市部に拠点を求める運送会社はもとより、オフィスとしての利用を希望する企業が入居。東京品川1は満床でスタートを切ることになった。
「都市型物流が求められていると予測した通りでした。また、従来のオフィスビルに比べると入居コストが抑えられるうえに、内装工事や用途に対する自由度も高い。高価なオフィスビルではないけれど、倉庫以上にさまざまな活用方法が見込める。そのようなところにアーバンシリーズの需要があると確信しましたし、今後もその数を増やしていく予定です」。
高まる需要を追い風に供給を増やしたい。誰もがそう考えるだろう。しかし、いくら物流施設を展開したいと願っても、都市部を前提にした途端、その土地の広さや数は限られてくる。加えて、物流施設ともなれば、法規制や自治体で異なる条例など、ハードルの高さは増すばかりだ。また、老朽化した物流施設の建て替えであっても、現行法で既存不適格のケースもあり、多くは期待できない。
プロロジスのコンストラクション・マネジメント部で部長を務め、エグゼクティブディレクターとして設計にも携わる小出敦子氏は、次のように語る。「これまで弊社は、郊外の広い土地に大型物流施設を建ててきました。しかし、都市部で物流施設を計画した場合、土地は必然的に小規模となり、日影規制等の高さ制限により、容積消化が難しいことも多々あります。それらを前提にマルチユースに対応できるよう、創意工夫して施設の設計を行うのですが、そもそも敷地の出入口に接する公道の幅員が足りず、条例により物流施設自体が建てられないこともあります。そのため、理想の候補地を見つけても事前に詳細にチェックをしなければ、事業の見通しは立ちません。アーバンシリーズを展開したい一方、そのような点に都市部ならではの課題を感じることも多いです」。
事業の多くを郊外で展開してきたプロロジスにとって、都市部はまさに「未知の世界」。都市型物流やマルチユース需要の高まりを受け、お客様の要望に応えられるよう、サポート体制の構築にも力を入れてきた。運送会社など、勝手知ったる顧客もいれば、撮影スタジオやショールーム、中には保育園など、従来は接点のなかった業種からの問い合わせも増えているという。また、都心部とあれば、近隣への配慮も必要だ。「日当たりやトラックで増加する交通量など、近隣の皆さんが懸念されるのは当然です。また、マルチユースは一般的に広くは知られておらず、物流施設と聞くと大型車両がひっきりなしに出入りする印象を持たれる方が多いことも事実です。その場合、事前に近隣の方々へ説明にお伺いし、対話を重ね、ご理解いただくよう努めています」。
ニーズがありながらも、課題も多い都市型物流施設。しかし、アーバンシリーズを投入したことで、プロロジスはそこに手応えを感じ、事業体制やノウハウを構築しつつある。これまで接点のなかった幅広いテナントに対応することはもちろん、都心部の土地や建物のオーナーがプロロジスにその改修を依頼するなど、地域の顧客との新たな接点も生まれているという。「十分に対応できていない部分もまだまだあります。しかし、アーバンシリーズに価値や可能性を感じてくださるお客様との出会いを、今後も大切にしていきたいです」(小出氏)。






