グローバル・サプライチェーンのリスクとは?

不動産戦略・動向
更新日 : 2023年07月03日掲載日 : 2023年07月04日
倉庫

世界的なサプライチェーンの圧力

2022年1月、ニューヨーク連邦準備銀行は、納期、価格、在庫など、輸送と製造に関する複数の指標を組み合わせてサプライチェーンの状況を測定する新しい指標、グローバル・サプライチェーン圧力指数(GSCPI)を導入しました。GSCPIのデータセットは、1997年にさかのぼって活動を追跡します。GSCPIは、世界の生産活動が回復し始めた2020年の夏に一時的に低下し、その後、新型コロナウイルスのオミクロン株が世界中に拡大するにつれ、再び劇的なペースで上昇しました。2020年と2021年にサプライチェーンの圧力が高まったのは、生産能力の制約や設備不足、世界の一部地域(重要なターミナルである中国・深圳の塩田港を含む)でのウイルス感染の再燃、大型コンテナ船Ever Givenが座礁し、他の船舶の通行を妨げたことによるスエズ運河の1週間にわたる封鎖、そして巣ごもり消費の急増によるものです。このような多くの要因により、世界の鉱工業生産に必要な材料や部品の供給が不安定な状況が続いています。

高騰するコンテナ船運賃

輸送コストの高騰は、海外輸送に携わる企業に大きな影響を与えています。海上運賃は低下しているとはいえ、コロナ禍以前の水準に比べればはるかに高い水準にあります。世界の主要12航路の40フィートコンテナのスポット輸送運賃の加重平均を示すコンテナ運賃指数(Freightos Baltic Index、FBX)によると、コロナ禍で運賃は着実に上昇し、スエズ運河が封鎖後に急騰した。レートは2020年3月末の1,400ドルから2021年9月には11,100ドルまで上昇、2022年10月下旬時点において、 3,429ドルとまだ高止まりの状態が続きました。

【図4】おもなサプライチェーン障害とグローバル・サプライチェーン圧力指数(GSCPI)の推移
【図5】コンテナ運賃指数(FBX)の推移
海上輸送運賃は2020年3月の1,400ドルから2022年10月下旬時点で3,429ドルに上昇

海事データ情報会社ロイズリストの試算によると、スエズ運河の封鎖により毎日96億ドル相当の貿易が滞り、封鎖をめぐる攻防の末、運河が開通するまでに500億ドルにまで達しました。この数字は、より広範な世界の貿易と経済への影響を除いたものですが、不透明感から物価が上昇しました。

成長する海上輸送と 高まる物流需要

その結果、港湾では予定されていた船舶と遅延した船舶の両方に同時に対処しなければならず、世界の海運システムにさらなる混乱を引き起こすことになりました。アメリカの港湾ではコロナ禍による人手不足、中国の港ではコロナ禍に関連した混乱が発生する中、生産財の需要が急増した時期と重なり、コンテナ運賃は上昇しました。

消費者需要の安定と港湾活動の正常化に伴い、コンテナ運賃は低下しているものの、コロナ禍前の価格を大幅に上回っています。国連貿易開発会議(UNCTAD)は、コンテナ運賃の上昇のために、2023年には世界の消費者物価が1.6%上昇すると推計しています。

コンテナ運賃の高騰により、2023年には世界の消費者価格が1.6%上昇すると推計されている。

物流費の大きな部分を占める輸送コスト

CBREの調査によると、輸送コストは物流費全体の45~70%を占めています。これに対し、賃貸料などの固定設備費は3~6%、人件費などの変動設備費は15~25%です。つまり、物流インフラをできるだけ港湾に近い場所に設置することは、輸送コストの削減につながり、企業にとって得策です。物流施設のテナントは大きな利益を得ることができるため、今はまだ高いコンテナ運賃が低下したとしても、可能な限り、輸送コストを削減します。

【図6】物流費の内訳

CBRE サプライチェーン・アドバイザリー・マネージングディレクター、ジョー・ダンラップは、輸送コストが1%上昇した場合、固定設備費が約8%上昇するのと同じくらいの影響があると言っています。

【図7】世界の主要な港湾と新興の港湾

現在も進行する重要なリスクとは?

2023年の早い時期にサプライチェーンの混乱が緩和される兆しがある一方、進行するいくつかの経済的・地政学的な課題があります。

インフレと金利の上昇

インフレは世界的な問題であり、ヘッドラインインフレはエネルギー価格の高騰がけん引しています。

中国における新型コロナの規制

2022年11月時点で、中国政府はゼロコロナ政策の変更を検討しています。そのため、短期的に新型コロナが急増し、モビリティの低下、製造業の活動やサプライチェーンの混乱が生じる可能性があります。

続く港湾の混雑

アメリカの港湾は、給与をめぐる労使交渉がストライキに発展するリスクが高まっているため、再び混雑する可能性があります。また、自然災害は、港湾の一時閉鎖や道路の冠水など、港湾業務に大きな影響を与える可能性があります。

リスクの高まりによる戦略の変化

ロシアのウクライナ侵攻により、輸送ルートの変更を余儀なくされ、海上貿易は影響を受けました。また、北欧を中心とした紛争による港湾の混乱は、倉庫や貯蔵能力の需要を高め、コスト上昇の圧力になっています。この戦争は、通常ロシアの領空を通過するアジア-欧州間の航空貨物輸送や、中国から欧州への鉄道の中断やルート変更など、他の複合輸送ルートにも影響を及ぼしています。

グローバル・サプライチェーンの圧力は2023年まで続くと予想されており、企業にとって、適応性があり、強靭な物流ソリューションを構築することが必要不可欠です。このため、特に主要な港湾や新興の港湾で倉庫スペースに対する需要が高まっており、産業用不動産や物流施設のオーナーや投資家にとって好機となっています。

成長する海上輸送と 高まる物流需要
上記内容は 「BZ空間」2023年夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。
前のページ

成長する海上輸送と高まる物流需要

次のページ