物流自動化の進展は、物流センター内の作業を変え、施設の開発および運用をも変化させる。ロボットは、すでに物流施設、病院、小売店、工業団地だけでなく、世界中の都市の街路および大学のキャンパスにも導入されている。特にアジアではロボットブームが起きておリ、日本と中国では製造工程を再構築する初期段階にある。オーストラリアン・ファイナンシャル・レヴュー紙の報告では、これは全ロボット支出の69%を占めるとしている。ロボットおよび人工知能への融資は拡大の一途を続けており、IDC(インターナショナルデーターコーポレイション)によると、ロボット市場は2019年までに1350億米国ドルに達すると期待されている。
ボストンコンサルティンググループによると、高度なロボットの使用は、現在の年間2~3%から2025年までに25%に増加するといわれている。また同社は、2025年の製造業の平均的な人件費は、ロボットを活用しなかった場合と比べて、韓国で33%、中国、ドイツ、米国、日本などで18~25%低くなると予測している。人件費は、米国におけるサプライ・チェーンの全コストの約20%を占めているため、効率性の向上は利益に多大な影響を及ぼす。日本、オーストラリア、香港など人件費が高く人材確保が困難な国では、生産性を向上させる手段として庫内でのロボット活用が広がりつつある。
自動化は物流分野にとって不可欠といえるが、人の手が完全に不要になるわけではなく、ロボットにはできない高度な判断を下す熟練労働者は必ず必要となる。庫内ワーカーには、今以上に高いスキルが求められるかもしれない。他方、人件費は上昇し続けておリ、米国の複数の州では、連邦政府が定めた最低賃金・時給7.25ドルを最大15ドルにまで上昇させる法案を通過させつつある。それが物流業者による自動化技術への投資の大きな刺激材料となっている。
ロボット・ピッキングシステムは、物流施設の採光や高さに関する要件を変化させ、
ハイベイ倉庫、多層階、メザニンの使用拡大を刺激するであろう。
これが新たな開発サイクルをもたらす可能性がある。
Matt Haddon( CBRE アジア太平洋地域 工業&物流担当上級取締役)
物流自動化は、労働要素としてだけでなく、サイクルタイム(商品発注からトラック積み込みまでの時間)短縮の必要性からも正当化されつつある。サイクルタイムは高度なシステムと技術を用いてのみ短縮できるため、スピードアップには自動化への投資が不可欠となる。そのことによって、スペース、労働、機器、およびサイクルタイムの最適なバランスが図られることになる。
物流自動化は、施設の開発および管理に大きな変化をもたらす。まず、物流センターを相互に接続して膨大なデータを保管・分析するためのITインフラ等、高度な技術を導入する必要が生じるだろう。これにより建設コストは上昇し、技術が幅広く採用され利用コストが低下するまでは、短期的に賃料を上昇させるものと思われる。
ロボット・ピッキングシステムの進展は、物流センターにおける採光および高さに関する要件を変化させ、特に土地に制約のある市場において、ハイベイ倉庫、多層階、およびメザニンの使用拡大を刺激すると思われる。自動化システムは大規模かつコスト高であるため、収益への貢献にはある程度の規模が必要となる。これらは、スケールメリットの高いeコマースなど、ほとんどが大量ピッキングに使用されている。必然的に、施設の大型化、拠点数の減少、および物流ネットワークの効率性に対する圧力が増すだろう。アジア太平洋地域およびヨーロッパにおける高密度な物流ハブでは、より高さのある施設へのニーズが強まる可能性が高い。
物流自動化の収益への貢献には、ある程度の規模が必要となる。
その結果、拠点数の減少と施設の大型化が進む可能性がある。
高密度な物流ハブでは、より高さのある施設へのニーズが増すだろう。
Dennis Yeo( CBRE アジア担当取締役)
物流施設は、様々な技術革新が世界のサプライ・チェーンに及ぼす影響により、大きな変革期に直面している。物流分野において、自動運転、3Dプリンティング、および自動化がもたら すものは以下の通りである。
- 輸送コストの低下は物流拠点ネットワークの密度低下につながる。遠隔地の安価な土地に対する需要が拡大する。
- ハブ拠点の必要性は低下し、ラスト1マイルの配送拠点がより重視される。同時に、この配送拠点は生産拠点となり、物流ネットワークの必須要素となる。
- マイルの配送拠点はディーゼルから電気へとモーダルシフトし、バッテリー装備施設を備える必要がある。
- 各物流施設には、行き来する自動運転トラックの操作と収納を容易にする敷地内のトラックヤードが必要となる。
- 自動化を導入可能なハイテク施設の需要が増す。既存施設では同ニーズに対応できないため、新たな開発サイクルをもたらす可能性がある。
- 物流専門のデベロッパーが、市場における自動化技術と物流ニーズのマッチングにおいて重要な役割を果たすかもしれない。
- ロボット・ピッキングシステムは、庫内の採光および高さに関する要件を変化させ、ハイベイ倉庫、多層階、およびメザニンの使用を促進する。自然光であれ照明であれ、採光ニーズの低下が省エネにつながると考えられる。
サプライ・チェーンに強い影響力を持つ企業は、今すぐ必要な投資を開始するに違いない。技術はすでに手中にあり、米国、ヨーロッパ、アジア太平洋地域の先進市場を中心に、世界中のハブ拠点に導入されつつある。確かに進展のペースは国ごとに異なり、一般への普及と法整備の進み具合に負うところが大きい。しかし、モバイルデバイスの技術が急速に普及したように、自動運転や各種の自動化は、予想よりも早く市場を席巻するかもしれない。物流事業者、物流施設オーナー・デベロッパー、および施設運営会社は、競争力を維持し取り残されないために、これら変化への対応を開始する必要があるだろう。