トーエイ物流株式会社 鈴木努氏|INTERVIEW

ケーススタディ
更新日 : 2023年12月25日掲載日 : 2024年01月18日
倉庫

20年超の経験に裏打ちされた危険物物流のノウハウをもとに、次なる展開をめざす。

トーエイ物流株式会社 取締役 営業部 部長 兼 事業総括本部 副本部長 鈴木努氏

この5年間、コロナ禍を含めた様々な要因で急速にニーズが高まっている危険物倉庫。その業界に20年以上も前から参入し、今や埼玉でも有数の保有倉庫面積を誇るトーエイ物流の取締役営業部長鈴木氏に、マーケットの現状と自社の戦略をうかがった。

トーエイ物流株式会社
取締役 営業部 部長 兼 事業総括本部 副本部長
鈴木 努

危険物倉庫事業者として、20年の実績を誇る県下最大手

当社は今からちょうど60年前の1963年、「有限会社遠藤運輸」という輸送事業の会社として設立されました。その後、物流センター事業、非鉄物流事業などに事業を拡大し、今日に至っています。溶剤や工業薬品などの工業用品、ケミカル用品やエンジンオイルなどのカー用品、殺虫剤や塗料、潤滑油などの家庭用品といった危険物物流の事業に乗り出したのは20数年前のことです。地元である埼玉の中でも最大級の規模の清久工業団地に、俗に塗料団地と呼ばれるエリアがあり、そこにある以前から輸送業で取引のあった企業様から、保管倉庫も併せて依頼されたのがきっかけでした。

当初は幸手市にある600坪の賃貸倉庫で賄っていたのですが、老朽化もあり、2003年、一般倉庫と併設した危険物倉庫を新堀営業所として開設しました。その後、2009年には危険物倉庫4棟を有する大利根、2014年には300坪が2棟の白岡、2021年の本庄、そして今年は小田原の各物流センターを開設し、今では合計約4200坪の危険物倉庫を保有する、県下最大の独立系危険物倉庫事業者となっています。

時代とともに移り変わるニーズに対応しながら着実に事業を拡大

近年、危険物倉庫のニーズは急速に拡大しています。当社について言えば、20年前に始めた頃はシンナーなどの塗料系やオイルが主でしたが、なかなか荷主が確保できないこともありました。幸いにして良いお客様と巡り会ったことで徐々に事業が伸びてきたのですが、ここ5年の変化は目覚ましいものがあります。そのきっかけの一つにげられるのは大手物流施設や工場での火災。これにより危険物への認識が変わり、また消防のチェックも厳しくなりニーズが拡大したのです。

そこに拍車をかけたのが、コロナ禍で需要が急拡大したアルコール消毒液。保管場所ニーズが急増しましたが、当社はすでに満床状態だったため、1日に20件以上かかってくる問い合わせ電話を断るのが仕事のような状態でした。また、こうした問い合わせに賃料を提示すると、「現状の2倍以上だ」と言われることがありましたが、それはたぶん、危険物を一般倉庫に保管していた方々なのでしょう。そしてコロナの収束が近づくと、その後はEC系、さらに今はEV車に搭載するリチウムイオン電池へと、主流が移っている状況です。

危険物倉庫には、指定数量という消防法の規制を受ける危険物の量が決められています。わかりやすく言うと、同じスペースでも危険性が高いものほど置ける数量は少なくなるため、品目によっては、消防法上は満庫でも庫内はガラガラというケースもあり、スペースの無駄が多くなるのです。ですから当社では、一般に無制限と言われる高い指定倍数の倉庫が建てられる工業用地を選んで、危険物倉庫を開発しています。大利根や本庄、小田原の物流センターはこのタイプです。ちなみに保管する危険物が変われば当然、指定数量も変わるため、その都度、消防に届け出を出し直すことになります。

トーエイ物流株式会社

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新規参入相次ぐ危険物倉庫事業 成功に重要なのは経験とノウハウ

危険物倉庫へのニーズの高まりを受けて、現在、様々な企業がこの事業に参入してきています。大手の開発事業者は、ECをにらんで5千~1万坪の大規模な普通倉庫の隣に、100~200坪の危険物倉庫を併設するケースが増えています。彼らが提供する危険物倉庫の坪単価は、おおむね1万2・3000円から1万5000円というところ。高額ではあるものの、普通倉庫併設の使いやすい新築の危険物倉庫が増えてくるのは良いことだと思っています。

ただ、こうした倉庫を利用・運用して参入してくる物流事業者を見るにつけ、不安がよぎるのも事実です。というのも、我々からすると、なぜこの場所でこんなに高い、あるいは安い価格で出すのかと驚くようなことがよくあるのです。また、施設先行で危険物倉庫を作ったものの、そもそも営業先も提案の仕方もわからないから、客を付けてほしいといった相談を持ち掛けられることもありました。つまり、運用のノウハウがないために、倉庫はあるし案件もあるのに、それらが流通していないといったことがあるのです。

さらに言えば、そもそも将来的に扱うべき危険物は、それほど増えない可能性もあります。確かに、EV車用リチウムイオン電池のニーズは、今後さらに増加していくでしょう。ですが一方で、従来の工業用オイルなどは確実に減少していきますし、危険物の総量としては、ECとEV電池以外は、著しい増量は見込めないと考えられるのです。

もちろん可能性がないわけではありません。その一つが、先に触れた、今まで一般倉庫に眠っていた危険物です。また先日、某大手のリチウムイオン電池メーカーで、当社に保管するにあたって稟議申請を出したところ「なんで危険物倉庫に入れなければいけないんだ」と役員に聞かれたということがありました。そこでうちの営業が、危険性についての総務省消防庁の資料をまとめて、担当者である先方の研究者とともに危険物倉庫の有用性をプレゼンしたという笑えない話が、実際にあったのです。つまり、こうした危険物の認知度はまだまだ低く、今後は、さらに厳格な運用が求められるようになるのは明らかでしょう。

もともと危険物倉庫は安全を担保するための施設ですから、リスク管理が重要です。言い換えれば、そのノウハウを持って初めて、こうした徐々に顕在化してくるであろうニーズに対処できると考えています。

これまで培ってきた経験と知見で、新たなビジネス展開に挑戦する

当社はもともと運送業者であり、倉庫業との売上比率は7対3ぐらいでECの物流事業にも参入していませんでした。ですが今日の状況を見ると、世の中の変化に対応すべく、我々も変わらなければいけないと痛切に感じています。

具体的にめざす変化の一つがEC物流への参入です。ECで危険物の扱いを積極的にしているところは少ないため、チャンスは大きいと思っています。実はすでに引き合いも来ているのですが、ECを手がけるためには365日24時間の稼働が求められ、現在はその体制を整えている最中です。自社でできないところは、パートナー企業と組んで対応していくという戦略も考えられるでしょう。

もう一つは名古屋、大阪での拠点の確保です。一般倉庫に危険物倉庫を併設する形が理想で、自社で土地を用意できないなら開発事業者と組んでの展開も視野に入れています。すでに引き合いもありますし、2024年問題を回避するための中継地として、名古屋や大阪の意味合いは大きなものになります。またここが実現すれば、2018年に策定した中期5ヵ年計画で、当時約2,000坪だった危険物倉庫を、5年後には5,000坪にするとの計画の達成にも近づけそうです。

そして最後は、少しだけだが危険物を置きたいという小ロットのお客様に対応すること。言い換えればそれが、ECの物流体制の構築にもなり、積極的に取り組んでいきたいです。長年続けてきた危険物倉庫運用のノウハウが、EC物流という新たなスタイルで結実する日が楽しみです。

トーエイ物流株式会社

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上記内容は 「BZ空間」2023冬号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。
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