当社は1947年、京都において三和木材工業として創立。翌年には本店を大阪に移転し、1954年には総合建設請負業として三和建設に社名変更するとともに東京駐在所を設置し、関東圏にも事業を拡大しました。その後、文字通り各種建設業に携わってきましたが、競合する大手ゼネコンとの差別化を図るため、それまで培ってきたノウハウを活かし、難易度が高く設計から施工までを請け負える、得意分野に特化する事業戦略に方向転換。2011年には食品工場に関わるトータルソリューションブランド「FACTAS」を、さらに2017年には危険物、冷蔵冷凍といった特殊倉庫をオーダーメイドで建設するブランド「RiSOKO」を立ち上げました。これにより前期、約160億円の年商のうち、この二つのブランドによる売上高が6割を占めるまでに成長しています。
さて、危険物倉庫ですが、当社が建設を始めた当時と今とでは、様々な面で変化してきています。かつての危険物倉庫といえば、メーカーの生産拠点における原料の保管、あるいは港湾部における輸出入に関連したものがほとんどでした。そのため形状としては、例えばメーカーであれば工場敷地内の余剰スペースに、時にはいびつな形で計画することも多くありました。こうしたメーカーの自社危険物倉庫は、保管する荷が決まっているため、どれだけ効率よく保管できるかが重要です。指定数量の倍数を計算しながら、設備やマテハン、ラックなどを置いたりすることも可能となります。
それが最近、物流業者やデベロッパーからのご依頼が増えたことで、施設の仕様や規模にも大きな変化が現れました。仕様については、特定テナントからのBTSでない場合は荷主が変化することが前提なので、汎用性が最重要課題です。多くの場合、少なくとも第4類全般無制限に対応できなければ難しいでしょう。その上で、物流会社の場合は荷主を獲得しやすいよう、最初から空調管理の設備などを敷設するような“攻めた仕様”になることもあります。これに対してデベロッパーの場合は、テナントによって求められる仕様が大きく変わるため、空調用の電気容量とかスペースに余裕は取りますが、設備の設置はあくまでテナント次第になります。
また、こうした事業者が増えたことで、例えばプロロジス様が開発する「プロロジスパーク古河6」のように、内陸部に8棟の危険物倉庫を建設するといったケースが出てきました。当社が現在お話をいただいている案件でも、岡山で2棟、大阪と三重では4棟ずつ、茨城県古河市の8棟のほか、相談レベルでも8棟とか6棟とか複数棟の計画が多くを占めています。危険物倉庫のニーズの高まりを受け、新規にビジネスに参入しようとする事業者がそれだけ増えているのでしょう。もちろんこの背景には、建設費の高騰や、メーカー・EC系企業のコンプライアンス意識の高まりがあると言えます。
一度、事故が起これば大災害になりかねないだけに、危険物倉庫には様々な法律上の規制が存在し、これをクリアしなければ建設そのものが成立しません。またその解釈の仕方や、規制を踏まえた運用方法を知らなければ、土地を無駄にするだけで経済合理性は低くなり、結果的に効率性が悪く高コストな施設となってしまいます。こうしたことのないよう、設計者の立場から注意すべきポイントをお話しします。
まず、敷地内に倉庫をどう配置するかですが、危険物倉庫の周辺には、指定数量倍数に応じた空地を設けなければなりません。例えば当社の場合、指定数量倍数200倍超の倉庫が多いので、その場合の保有空地は法律上10m以上必要となります。しかしこれには緩和規定があり、危険物倉庫同士ならば間隔は3m以上かつ保有空地の1/3以上でいいことになっているのです。基本的なことですが、これを知らずに計画すると、すべての危険物倉庫周囲に10mの空地を確保してしまい、非効率な計画となってしまいます。
また保有空地の距離の算定についても、その始点は外壁から1m以内の突出物であれば外壁とするや、わずかでも突出物があるならそこが始点になるなど、所轄によって判断が異なるため、消防協議には多くの経験が必要となります。
原則庫内作業はできませんので、ピッキング等を行う場合は専用の建物を確保する必要があります。また、最近では荷が濡れないように庇を大きくとることが多いのですが、ここでも注意が必要です。庇の床面積算定基準も、行政によっては屋根の延長は「軒」だから床面積に含まないなど、消防によって見解が微妙に異なります。
また、高さ6mという制限。このため、本来は高床の方が荷下ろしなどが楽なのですが、低床の方が庫内空間が広くなります。同じ敷地内に危険物倉庫を複数棟建設するなら、作業効率を考慮し、1棟だけ高床にするという考え方もあるでしょう。さらに消火設備も荷物の危険度や保管量によって分類されていますが、複数棟の場合は棟毎に消火設備室を設置するのではなく、1ヶ所に集約して設置した方が効率的です。
こうした仕様を決め、建築基準法に則って確認申請しますが、危険物倉庫に当たっては危険物屋内貯蔵所の設置許可申請が必要です。これは、原則倉庫が稼働するまでに許可を下せばよいのですが、工事着工後の申請で構造や設備の指摘内容によっては設計変更を伴い、コストやスケジュールに影響を与えることになります。法令で明文化されている以外にも、行政それぞれの判断が加わることがありますので、特に構造や設備仕様については着工前に設計者がリードし協議を進めることが最重要だと言えるわけです。
今日、危険物倉庫の新たなトピックといえば、リチウムイオン畜電池についての規制緩和でしょう。改正内容を見ると、荷がリチウムイオン畜電池であれば、施設の面積や階数の制限が緩和されるようです。区画面積も階数も建築基準法上の範囲内であれば規制がなくなり、大型の倉庫の建設が可能になります。ただしポイントは、独立専用の倉庫でなければいけないということ。一般倉庫と併設することができないため、メーカーあるいはメーカー系物流会社などが、自社やBTSで建てるかに限定されそうです。つまり今回の規制緩和は、リチウムイオン蓄電池を大量に扱うメーカーが主な対象ということでしょう。リチウムイオン蓄電池そのものはこれまで同様の物流網に乗っており、またニーズも自動車製造のみというわけではありません。規制が緩和されるとは言え、リチウムイオン畜電池に関する危険物倉庫に対するニーズは、従来通りの形で残るのではないでしょうか。
RiSOKOを始めた当初は、コロナ禍における消毒液や、今回のリチウムイオン畜電池などによるニーズは想定されていませんでしたが、当社の業界における認知度も上がり、関西圏での案件には数多くお声がけいただけるようになりました。先に触れたとおり、「プロロジスパーク古河6」を皮切りに、関東圏にも本格的に進出できたことを嬉しく思っています。今後も新たなニーズに遅れることなく、より安全かつ経済合理性の高い施設づくりに取り組んでいこうと考えています。








