Bacha Coffee銀座|店舗出店ケーススタディ

ケーススタディ
更新日 : 2026年09月10日掲載日 : 2026年09月10日
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モロッコで誕生したコーヒーハウスを日本で再現!
建築ディテールから非日常の空間に至るまで、ブランドの世界観を貫いた店舗づくり。

Bacha Coffee銀座

株式会社東急グルメフロント

Bacha Coffee銀座

モロッコ・マラケシュを起源とするラグジュアリーコーヒーブランド「Bacha Coffee(バシャコーヒー)」が、2025年12月、東京・銀座すずらん通りに日本初の旗艦店をオープンした。目指したのは、マラケシュの伝統的な建築美と、そこで育まれてきた非日常でのコーヒー体験を、そのまま現代の日本に再現すること。空間設計から素材選定、調理設備、オペレーションに至るまで、すべての要素においてブランドの美意識を貫くことが求められた店舗づくりの舞台裏を取材した。

Bacha Coffee銀座

モロッコ発祥のコーヒーブランドが、銀座すずらん通りに旗艦店オープン

2025年12月、東京・銀座すずらん通りに、異国情緒漂う建物外観と豪華絢爛な内装が目を引く店舗が登場した。35カ国から厳選された200種類以上の100%アラビカ種スペシャルティコーヒーを扱うコーヒーブランド「Bacha Coffee(バシャコーヒー)」の日本初の旗艦店「Bacha Coffee銀座」である。店内床には黒と白の市松模様の大理石が敷き詰められ、幾何学模様の格子装飾、そして彫刻が施された杉材の木工装飾がまるで異国の宮殿のようである。

それもそのはず、Bacha Coffeeのルーツは、1910年にモロッコ・マラケシュに建てられた「ダール・エル・バシャ」(「高官の邸宅」の意味)にある。当時のコーヒールームでは、世紀を代表する偉大な文化人や政治家たちがコーヒーを囲んで集っていた。第二次世界大戦後、この「ダール・エル・バシャ」は閉鎖されていたが、時代を超えて博物館としてよみがえった。その際、コーヒールームの改修を依頼されたのが、現在Bacha Coffeeをグローバル展開するV3グルメCEOのタハ・ブクディブ氏だった。

コーヒールームがBacha Coffeeとして業務を再開すると、世界中から伝説のコーヒーを体験しようと集まった人たちが列を成したという。それを見たブクディブ氏は、「この素晴らしい体験を世界中の人々にも味わってもらいたい」との思いから、Bacha Coffeeのグローバル展開を開始。アジア、中東、ヨーロッパを中心に17地域40店舗(2026年3月現在)へと拡大している。日本においても、今回の銀座店開業に続き、今年6月、2号店の丸の内へ開業している。

Bacha Coffee銀座

ブランド側のCEO自らが、銀座を歩いて物件を見つけた

日本進出のパートナーとして選ばれたのが、東急グルメフロントである。同社はV3グルメが展開するTWG Teaの日本展開を手掛け、約15年にわたり信頼関係を築いてきた実績を持つ。

マラケシュ本店の世界観を日本で再現する場所として、銀座への出店はブクティブ氏の強い要望だった。「日本にBachaブランドを持ち込むなら、まずは格式と伝統がある銀座だろう、という思いが強かったようです」と話すのは、東急グルメフロント代表取締役社長の岡田哲明氏。今回1棟借りした5階建の物件は、親日家で日本滞在の経験もあるブクティブ氏が、自ら銀座の街を歩いて見つけたものだという。

「ブクティブ氏が出店場所に求めるのは、喧騒から離れ、お客様にBacha Coffeeでの時間を心ゆくまで味わっていただける場所であること。銀座すずらん通りに面したこの物件を見つけた時、インスピレーションが働いたそうです。CBREが問い合わせ窓口となっていることをつきとめ、なんとか中を見せてもらえるよう、あの手この手で連絡したと聞いています。物件オーナーに、日本にはまだないBacha Coffeeとブクティブ氏の情熱を理解していただけたのは、オーナーだけでなくテナントにも不動産ソリューションを提供してくださるCBREならではのご対応だったと思います」(岡田氏)。2024年春頃に物件を見つけ、同年7月には賃貸借契約に至ると、いよいよ店舗づくりがスタートした。

マラケシュ(モロッコ)をはじめ、世界共通で豪華絢爛な「Bacha Coffee」

Bacha Coffee Singapore Bacha Coffee Singapore

Bacha Coffee Marrakech Bacha Coffee Marrakech

Bacha Coffee Marrakech Bacha Coffee Marrakech

ブランド世界観の再現に挑んだ、店舗づくりの舞台裏

ブランドの原点であるマラケシュのダール・エル・バシャの独特な世界観を再現する――これが本プロジェクトにおける最大のゴールであった。外観・内装にはモロッコの芸術美を想起させる建築ディテールを随所に採用。1階には、200種類以上のコーヒー豆を取りそろえるコーヒーブティックとテイクアウトカウンターを設け、2階と3階のコーヒールームには全40席を配置し、コーヒーと香り豊かな伝統料理を提供する。さらに4階と5階にはキッチンを配置し、店舗内での一貫した提供体制を構築している。

「今回のプロジェクトで強く感じたのは、ブクディブ氏のこだわりの強さです。デザインや素材、空間の見え方に至るまで、一切の妥協がありませんでした」と岡田氏は振り返る。コロナ禍の収束直後で、部材の流通が完全には回復しておらず、必要な材料を確保すること自体にも苦労が伴った。そうした状況においても、設計・施工の段階では、日本の建築基準法や消防法と、Bacha Coffeeが求めるデザインとの間で幾度も調整が重ねられた。細部にわたる仕様変更が開業直前まで続くこともあり、プロジェクトは終始、緊張感をはらみながら進行していったという。

そのこだわりを象徴するのが、店内調理の実現である。「提供するヴィエノワズリーや料理、デザートの品質を担保するため、外注は行わないというのがBacha Coffeeの方針でした。別拠点で製造して搬入する方法も検討しましたが、オペレーションや品質管理の観点から最適とは言えず、最終的には店舗内で完結させることに決まりました」(岡田氏)。

その実現にあたっては、調理設備の選定も大きな論点となった。メンテナンス性を考慮し、日本側としては国内で調達可能な機器の採用を検討したが、「シンガポールと同じクオリティを再現できるか」という観点から、シンガポールで使用している電気調理機器を導入する方針に決定。その結果、新たに電力容量の不足という課題が顕在化し、高圧受電設備(キュービクル)の交換が必要となった。さらに、設備設置に伴う屋上の補強工事も発生するなど、計画の前提を見直しながら、最適解を探るプロセスが続けられた。

店内調理を実現するにあたっては、開店後のオペレーション面にも工夫が求められている。「キッチンのスペースに制約があるため、オーブンは1台のみ。その1台をフル稼働させながら、複数種類のヴィエノワズリーを焼き上げています。さらに、建物にはエレベーターがなく、ダムウェーターを使って料理を下の階へ運んでいます」。こうした設計・施工の調整を経て、当初予定していた開業スケジュールは大きく後ろ倒しとなった。当初は2025年春の開業を目指していたが、工事や設備面での調整に時間を要し、夏、秋と延期を重ねた結果、最終的に同年12月のオープンに至った。「日本でお待ちいただいているお客様も多く、これ以上お待たせするわけにはいきませんでした。また、超繁忙期であるクリスマスを迎える前にオペレーションを安定させておく必要もあり、12月11日オープンがデッドラインでした」と岡田氏は当時を語る。

Bacha Coffee銀座

Bacha Coffee銀座

競合はアミューズメントパーク!体験価値を重視した今後の展開戦略

ブランドの世界観の再現に一切の妥協を許さないブクディブ氏の姿勢からは、学ぶことも多かったと岡田氏は話す。開業直前、来日したブクディブ氏とともに、店内の装飾や家具配置など最終的なセッティングを行っていた時のこと。テーブルや椅子の向きに至るまで細かく検討が重ねられ、現在の形に至るまでに何度も調整が行われたという。「ある時、レジやその周辺の商品配置を一度整えたのですが、私が帰った後に再び店に来て、納得のいく形になるまでやり直していたそうです。翌日店に行くと、『お客様が店に入ってきた時にこう見えるのが理想だ』と説明を受けて、なるほどと。非常に勉強になりました」。

また、店内に飾る絵についても、事前に手配していたものに加え、自身のコレクションから選んだ作品をシンガポールから取り寄せ、設えに反映させた。「ブクディブ氏は、Bacha Coffeeにとって大切なのは、時を超えて愛される、本当に価値のあるものを創り上げることだと話しています。そうしたクラシックで原点に忠実な空間を再現し、世界中のお客様に体験していただきたいという、強い意思を感じました」。

今後の日本国内での展開については、拡大ありきではなく、ブランド体験の質をいかに維持するかが重視されている。「Bacha Coffeeは一般的なコーヒーチェーンと競合するものではなく、むしろアミューズメントパークのような存在だと考えています。そのエンターテイメント性を担保するには、大理石の床に象徴される空間づくりや、緻密なオペレーション、人材育成を含めた“体験”の質を守ることが前提になります」と岡田氏。そのうえで、まずは首都圏で数店舗ほどの展開を視野に入れているという。さらに、ホテル客室でのアメニティやラウンジでの提供など、多様な接点を通じたブランド浸透も見据えている。Bacha Coffeeの世界観を高いクオリティで再現しながら、日本という市場にどう根づかせていくのか。その挑戦は今、始まったばかりである。

Bacha Coffee銀座

プロジェクト概要

企業名

株式会社東急グルメフロント

施設名

Bacha Coffee銀座(バシャコーヒー銀座)

所在地

東京都中央区銀座5丁目6-6

延床面積

377㎡

営業時間

10:00~20:00

定休日

年中無休(ただし年末年始を除く)

オープン

2025年12月11日

CBRE業務

施設賃貸借仲介業務

上記内容は 「BZ空間」2026夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。