湾岸エリアが「選ばれる」時代へ
かつて東京湾岸エリアといえば、倉庫や物流施設が立ち並ぶ工業地帯というイメージが強く、オフィス立地としては郊外的な存在と見なされていました。しかし近年、その評価は大きく変わりつつあります。大規模な再開発、交通インフラの整備、そして働き方の変化が重なり、湾岸エリアはいま、企業のオフィス移転先として改めて注目を集めています。
豊洲、有明、天王洲、品川、田町・芝浦、勝どき・晴海――。これらの臨海・湾岸エリアには、圧倒的な開放感のある景観とオフィスビルが調和し、主要ビジネス街とは異なる独自の魅力を放っています。本コラムでは、職住近接やウェルビーイングの視点から湾岸エリアが再注目される背景と、オフィス立地としての新たなポテンシャルをCBREの視点から掘り下げていきます。

なぜ今、湾岸エリアなのか
再開発による街の刷新
湾岸エリア再注目の最大の要因は、継続的に進められてきた大規模再開発です。広大な用地を活かした計画的なまちづくりが可能なため、オフィス・商業施設・住宅・公共空間が一体となった複合開発が各地で進行しています。
特に豊洲や有明では、高機能ビルが集積し、周辺には商業施設や飲食店、緑地なども整備されました。ゼロから設計された街だからこそ実現できる、ゆとりある区画と洗練された景観が、従来の都心オフィス街にはない開放感を生み出しています。
交通アクセスの向上
湾岸は交通の便が悪い」という印象も、いまや過去のものになりつつあります。鉄道網の拡充やバス路線の整備に加え、羽田空港へのアクセスの良さは、出張の多い企業や国際的なビジネスを展開する企業にとって大きな利点です。都心部への接続も改善され、ビジネス拠点としての利便性は着実に高まっています。
コストパフォーマンスの高さ
丸の内や大手町、渋谷といった一等地と比較すると、湾岸エリアの賃料水準は依然として割安感があります。同じ予算でより広く、より新しく、より設備の整ったオフィスを確保できる可能性が高く、コストを抑えながら執務環境の質を上げたい企業にとって、有力な選択肢となっています。CBREに寄せられるオフィス移転の相談においても、コスト最適化と環境品質の両立を求める声は年々増えており、湾岸エリアはその受け皿として存在感を高めています。
働き方の変化が後押しする湾岸人気
従業員満足度を高める環境
コロナ禍を経て、企業のオフィスに対する考え方は大きく変わりました。単に「働く場所」ではなく、従業員が出社したくなる魅力的な環境が求められるようになっています。
湾岸エリアは、海や運河を望む眺望、広々とした歩道や公園、充実した周辺施設など、働く人のウェルビーイングを高める要素に恵まれています。オフィスの快適さが人材の確保・定着に直結する時代において、こうした環境価値はオフィス選定の重要な判断軸のひとつになっています。
スタートアップから大企業まで
近年は、成長企業やスタートアップが湾岸エリアにオフィスを構える動きも目立ちます。柔軟な区画設計や最新のビルスペックは、事業拡大に合わせた増床や、多様な働き方に対応するオフィスづくりに適しています。大企業の本社機能から感度の高いベンチャーまで、幅広い層のニーズを受け止められる懐の深さも、このエリアの強みといえるでしょう。
エリアごとに異なる個性
ひとくちに湾岸エリアといっても、ビジネス拠点としての特性はエリアによって大きく異なります。
自社の事業フェーズや組織構成、従業員の通勤事情に照らし合わせながら、最適なエリアを選定することが、オフィス移転成功の鍵となります。CBREでは、こうしたエリア特性の比較検討から物件選定まで、一貫してサポートしています。
豊洲
豊かな水辺環境と最新鋭オフィスが調和する、職住近接を体現したエリアです。優れたフロア効率を強みに大企業の本社やR&D拠点を惹きつけてきた街は、2025年竣工の「豊洲セイルパーク」の誕生によってさらなる進化を遂げました。新設されたインキュベーション施設や多様な交流空間がビジネスの創発を支援し、企業の成長性と従業員のエンゲージメントを高める先進的なオフィス立地として評価を確立しています。
天王洲
りんかい線と東京モノレールの2路線が利用でき、羽田空港や品川駅へのアクセスに優れることから、フットワークを重視するIT・外資系企業などの拠点が集積しています。個性的なオフィス環境による企業ブランディングと、優れた交通利便性を兼ね備えたエリアとして根強い需要を維持しています。
品川・田町・高輪ゲートウェイ
新幹線や羽田空港への優れたアクセス性を強みに、国内外へ展開するグローバル企業の本社拠点として確固たる需要を誇ります。現在、エリアの足元では田町駅前の複合開発に加え、高輪ゲートウェイ駅周辺の「TAKANAWA GATEWAY CITY」による国際ビジネス交流拠点の形成が進んでおり、新たな玄関口としてオフィス立地の価値をさらに高めています。
有明・勝どき・晴海
ランドマークである晴海アイランドトリトンスクエア中心に無柱空間や高天井を備えた開放的なオフィスビルが集積するエリアです。都営大江戸線や都バス、東京BRTといった既存の交通インフラに加え、2026年秋にはBRTの東京駅延伸計画も予定されており、都心直結の利便性はさらに向上します。既成ビジネス街に比べ合理的な賃料で確保できる実利的な優位性から、オフィスのアップグレードを見据える企業から注目されています。
研究開発拠点・ラボ需要の高まり
湾岸エリア全体を通じて近年顕著なのが、ラボ需要の増加です。医療機器・製薬・バイオテクノロジー・ロボティクスといった分野の企業が、オフィスとラボを一体化した拠点を湾岸エリアに求める動きが活発化しており、CBREへの相談件数も増加傾向にあります。新築・大規模ビルが多く、ラボ仕様への対応が比較的柔軟なことも、このエリアが選ばれる理由のひとつです。従来のオフィス需要に加え、研究開発機能を持つ企業の新たな集積地としても、湾岸エリアの可能性は広がっています。