業界最大手のインテリア企業が、東京・日比谷に新たな拠点を設立。
「スペースクリエーション企業」に向けたサンゲツの新たな価値創造の場に。

株式会社サンゲツ
PARCs Sangetsu Group Creative Hub

株式会社サンゲツ

株式会社サンゲツは、長い歴史を持つインテリア企業だ。1849年に名古屋城の近くで、障子や襖などを扱う表具師として創業。1970年、当時の「株式会社山月堂」から「株式会社サンゲツ」に社名を変更し、壁紙や床材、カーテンなどの内装材を取り扱う総合的なインテリア企業として成長を続けてきた。インテリア業界の最大手として、名古屋に本社を構える同社は、2024年3月、サンゲツグループの新たな価値創造の場として、東京・日比谷に新たな拠点「PARCs Sangetsu Group Creative Hub(以下、PARCs)」を設立した。その一部始終を取材した。

株式会社サンゲツ

スペースクリエーション企業として、東京・日比谷に新たな拠点を構える

インテリア業界の最大手である株式会社サンゲツは、2024年3月、東京・日比谷に新たなオフィス「PARCs」を設立した。日比谷公園の豊かな緑が一望できるロケーションにある「PARCs」。命名の由来は、"Parade of Cs"。すなわち、多種多様なヒト・モノ・コト・情報が集まり、つながり(Connect・Collaborate)、豊かな創造力(Creativity)を生みだす場所であること。そして、移り変わる時代や社会の中で、果敢に(Courage)変化し(Change)、挑戦し続ける(Challenge)といった、様々な"C"が"Parade"のように集うことで、活気あふれる、新たな価値創造の場を築くことをテーマに構築されている。

そもそもサンゲツは、名古屋に本社を構える企業だ。名古屋に商品開発機能を集約するとともに、東京には東品川のオフィス(旧東京支社)と品川駅直結のショールームを設け、ユーザーや市場に価値を提供してきた。近年は、内装材の国内市場の限界や少子化による人口減少などの課題に直面し、これまでの商社的機能に加え、製造機能を持つ会社をグループ会社化するとともに、単なる材料販売から、空間全体の価値提供へとシフトしようとしている。その根幹となるのが、2020年に発表した同社の長期ビジョン【DESIGN 2030】。同社取締役執行役員、スペースプランニング部門のゼネラルマネージャーである髙木史緒氏は「サンゲツグループが、デザインによる提供価値の拡大・向上を実現し、事業を転換することとしたこの【DESIGN 2030】を発表することで、スペースクリエーション企業として成長していく方針を明確にしました」と話す。これに先立つ2016年にサンゲツのブランド理念を再構築し、ブランドステートメント「Joy of Design」を、2024年1月には、サンゲツグループ企業理念のPurpose(存在意義)として「すべての人と共に、やすらぎと希望にみちた空間を創造する。」を策定した。「当初は“デザインする人々によろこびを提供する”という意味でしたが、その後私たち自身がデザインする、自社でも空間を創造していくという方向に発展し、現在は空間創造に関する⾼い価値をグローバルに提供していく『スペースクリエーション企業』への転換を⽬指しています」。

この方針を具現化する場として、「PARCs」が開設されたのである。

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発端は社員の提案から生まれた、日比谷パークフロントの「PARCs」

新オフィス設立の経緯について、髙木氏はこう語る。

「東京でスペースクリエーション事業部(当時)を立ち上げ、空間設計を担当するメンバーをキャリア採用で迎え入れました。名古屋を中心に行われていた商品開発のメンバーを含めた社員間での協議や対話を重ねる中で、『開発チームと一緒に仕事をしたい』『様々な分野の人材が交わることで、より面白いものが生まれるのではないか』という意見が出てきました」。

社員が自主的にプレゼンテーションを行い社長に提案。また、営業部門から空間提案をお客様に体感していただく場としてのライブオフィス設置検討の意向もあり、経営陣も「そういう場所も必要かもしれない」と考えるようになったという。以後、社内のコンセンサスが取れてからの行動は早かった。2021年秋にプロジェクトチームが発足し、2022年11月に物件が決定。それが現在「PARCs」が入る、日比谷パークフロントだ。髙木氏は「この物件を内見した時に、我々の事業や価値観とのシナジーを感じられました」と話し、次のように続ける。「インテリアだけでなく、スペースクリエーション企業としてエクステリアを含めた空間全体を創造するという私たちの方針をアピールできる環境であることが、決定の大きな要因となりました。都心にありながら、これほどの緑が一望できる場所は珍しい。私たちが目指す空間を醸成しやすい環境だと感じました」。立地のみならず、面積(845坪、約2,800㎡)も、ほぼ希望に合致するもので、日比谷に新しい拠点を設立することが決定したのである。

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社内コミュニケーションの向上を目指したオフィスづくり

新オフィスの設計にあたり、社内でワークショップが開催された。そこで最も多く挙がったキーワードが「コミュニケーション」だったという。髙木氏は「若手からベテランまで、多くの社員がコミュニケーションに課題を感じていることが分かりました」と振り返る。この課題を解決するため、「PARCs」では様々な工夫が施されている。「人々が交流しやすい環境づくりに焦点を当てました。具体的には、日比谷公園を眺めながら対話できるようオープンラウンジを設置。また、人々の交流を促すため、通路を直線ではなくあえてジグザグにし、社員が自然に交わる交点を作りました。そこで人々が立ち止まり、会話が生まれるようにしたわけです」。

特筆すべきは12階と13階をつなぐ内階段。髙木氏は「内階段の設置は、実施するかしないかでプロジェクト全体のコストを左右し、投資効果が問われるポイントでした」と、その重要性を強調する。設置決定までのプロセスについては、他社のオフィスで内階段を設置しているケースを見学に行き、その効果を実感。それを踏まえて、経営陣に提案したという。工事スケジュールに大きく影響を与える要素でもあるため、慎重かつスピーディに検討が重ねられた。最終的な決め手となったのが、内階段を作ることで、社員間のコミュニケーションに強く寄与することができるという判断だ。「多くの社員がコミュニケーションに課題を感じており、それを解消して、新たな価値を生み出したいという強い意志がありました。そのため、ここに投資することはプラスに働くという結論に至ったわけです」。

さらにサンゲツは、新オフィスでWELL認証の取得を目指した。

「もちろんWELL認証の、働く人にウェルネスを提供するというコンセプトに賛同していたこともありますが、同時に、ウェルネスな環境を自社設計施工実績として多くの方にご覧いただきたいという意図もありました」。さらに、WELL認証を取得することで学んでいった部分も多くあったと振り返る。「例えば、オフィス内で生のフルーツを提供することや、12階と13階をつなぐ内階段もWELL認証の要件において大きなポイントになる。認証の要件と評価ポイント、空間構成や意匠性との優先順位をどう考えるべきなのかといった、より実践的な課題に直面し、考え方を整理できたことは、今後の空間提案にも役立つものと思います」。

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定期的にワークショップを開催、社外にも開かれたオフィスに

「PARCs」では、社員の自発的な活動も奨励されている。

その一つが「ほんのれん」という小さな図書館だ。業務上の接点が少ない社員同士でも、本を媒介として同じ本を読んだ感想を共有できる場を設けている。定期的にワークショップも開催。感想を付箋に書き本に貼り付けたり、参加できない人も感想を見ることができるよう社内に貼り出すなど、コミュニケーションを可視化する工夫も取り入れられている。

社員が考案した「ウィッシュストア」というアプリを導入し、自由にアイデアを提案できるシステムも整えた。これは、例えば誰かがオフィス内イベントを企画・提案したいというアイデアを出した時に、多くの「いいね」が集まったものは社内の予算を取って実施されるというもの。3月に「PARCs」がオープンしてから「七夕祭りをやりたい」という提案がなされ、多くの賛同を得て実施されたそうだ。

また「PARCs」の由来である"Parade of Cs"「多種多様なヒト・モノ・コト・情報が集まり、つながり(Connect・Collaborate)、豊かな創造力(Creativity)を生みだす」といった観点から、オフィスは一部、社外にも開放されているという。「当初の目的通り様々な方にこのオフィスを見学していただき、ツアー来場者も半年で約2,000名近くとなりました。中には『ここを借りられますか』というお問い合わせをいただくこともあります。社内イベントに限らず、様々な会合や勉強会を行うスペースとしてご活用いただくことも、積極的に取り組んでいます。閉じられた会議室でなくオープンな場所で、柔軟なレイアウト変更やマイクを使いながらのディスカッションができますから、気軽に意見を言い合うことができ、新たなアイデアや自然なコミュニケーションが生まれやすいのも魅力の一つだと考えています」。

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3拠点が有機的に絡み合い、新たな価値を創造

オフィスでの働き方については、基本的にはABW(Activity Based Working)が採用されているが、部門によってその運用は異なっているようだ。「商品開発部門は、業務の特性上一定のエリアを設けて、その中でABWを実践しています。営業部門も同様に、特定のエリア内でフリーに席を選べます。ただし、東京支社の一部機能、特にお客様と電話で対応するような部署については、グループアドレス制を採用しています」。

サンゲツには、東京に東品川のオフィスと品川駅直結のショールーム、そして今回日比谷に設立した「PARCs」と、三つの拠点がある。それぞれの拠点のすみ分けについて、髙木氏は「日比谷の名称が『PARCs』に決まったあと、対になる東品川オフィスのあり方についても議論がありました。名称で言えば、商品開発や品質管理などの研究的な意味合いやその分野を支えていくという意味を込めて、『フィールド(Field)』に『S』をつけた『FIELDs』に決定しました」と説明。「FIELDs」は商品開発・製造・品質管理・技術開発の拠点として、「PARCs」はサンゲツの新たな価値創造拠点として、商品デザインや空間デザイン、スペースクリエーション提案、営業機能を集約。そして「Sangetsu Design Site FLAGSHIP」(サンゲツ品川ショールーム)は、様々な空間づくりに役立つ、ライフスタイル提案型のショールームだ。「『FIELDs』と『PARCs』。二つのオフィスで独自の価値を生み出しつつ、3拠点を有機的に結び、相乗効果を生み出せればと思っています」と期待を込めて話す。

サンゲツの新オフィス「PARCs」は、単なる働く場所ではない。同社が目指す「スペースクリエーション企業」としての理念を体現し、新たな価値を創造するための場でもある。「2020年に発表した【DESIGN 2030】という長期ビジョンを完遂すべく、スペースクリエーション企業として、内装材販売を含めた空間提案の分野も事業の軸としていくことを目指しています。『PARCs』は、その機能を果たすための場所であり、その軸をより明確に、強く打ち出していくためのもの。具体的には、案件数や売上を増やしていくことになりますが、それ以上に、私たちや社会に提供する価値と質を高めていくために、この場所を活用していきたいです」。

サンゲツの新オフィス「PARCs」は今後、同社の変革を促進するにあたり、重要な役割を担うだろう。新たなステージに向けたサンゲツの、これからの成長に期待が高まる。

企業名 株式会社サンゲツ
施設 「PARCs Sangetsu Group Creative Hub」
稼働開始日 2024年3月
所在地 東京都千代田区内幸町2-1-6 日比谷パークフロント12・13階
規模 約850坪
人員 約300人
CBRE業務 支社構築に向けた物件紹介・仲介、プロジェクトマネジメント
上記内容は 「BZ空間」2024冬号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。