ライフネット生命保険株式会社|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ
更新日 : 2025年07月25日掲載日 : 2025年07月24日
オフィス

オンライン生保のパイオニアが、開業の地・麹町にこだわりエリア内移転。
個と組織の生産性のバランスを図り、より良いサービスの提供を目指す。

ライフネット生命保険株式会社
本社オフィス

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2008年、「正直に、わかりやすく、安くて、便利に。」というマニフェストを掲げ誕生したライフネット生命保険株式会社は、オンライン生命保険のパイオニアだ。2024年11月、開業以来、麹町・半蔵門エリアに構えていた本社オフィスを、近隣の千代田区二番町「二番町センタービル」へと移転した。これまで3フロアに分散していた執務環境を約1,000坪のワンフロアに集約し、組織力向上を図るプロジェクトの全容を取材した。

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常識を覆す生命保険会社として、オンライン販売に特化

ライフネット生命は、「子育て世代の保険料を半分にして、安心して子どもを産み育てることができる社会を作りたい」という思いを持って、創業者の出口治明氏と岩瀬大輔氏が立ち上げた、オンラインで保険を提供することに特化した生命保険会社だ。保険を対面で販売すると、人や店舗等のコストがかさんで保険料が高くなってしまう。そこでオンライン申し込みにすることで、保険料を抑えた保険商品をお客さまに提供する方法でスタートした。開業から15年以上が経過し、市場環境も大きく変化。人事総務部シニアマネージャーの山内智之氏は、「当初は競合が少なかった生命保険のオンライン販売ですが、今では各社がオンラインで販売するのが当たり前になりつつあります」と話す。そこでオンライン生保のリーディングカンパニーとして、最近ではマイナンバーなどの社会インフラを活用し、顧客体験を向上させる取り組みにも力を入れ始めている。「パイオニアとしての強みだけでなく、お客さまの告知や保険金請求の負担を軽減するなど、サービスとして優れたものにしていくことが重要だと考えています」(山内氏)。

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コロナ禍での課題が顕在化、個の生産性と組織力のバランスを模索

同社はこれまで、麹町・半蔵門エリアに継続して本社を構え、長期間この地に根を下ろしてきた。人事総務部の山本美穂氏は「以前のオフィスの満足度調査では、約75%の社員が『満足している』と回答するほど、みんなが愛着を持っていました」と振り返る。しかし、コロナ禍を経て状況は変化する。「在宅勤務が中心となる中、ビジネスは拡大し、従業員も増えていきました。しかし、オフィスの席には限りがあります。そのため、愛着のあるオフィスを離れる決断をする必要がありました」。さらに個々人が専門性を発揮し職務を全うするには在宅勤務も効率的だが、チームで新たな価値を生むために不可欠な、信頼関係に基づく活発な議論の機会が減っていることが課題となっていた。山内氏は「リモートでは、言葉だけでは伝わらない表情などの非言語情報が制限されるため、相互理解を深めて大きな成果へつなげることに困難が生じていました」と当時を振り返る。

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運命の物件と出会い、短期間で移転を実現

この課題を解決するため社員全員が集まり、組織として切磋琢磨できる新たな環境が必要だという認識が高まった。そんな中、麹町でも四谷に近い、千代田区二番町の「二番町センタービル」のテナント募集を紹介される。そして、このビルが転機となった。山内氏は「この物件との出会いが、経営陣の移転への意欲を大きく高める契機となりました。以前から課題となっていた点について解決の道筋が見え、会社として移転計画を進める上で、今が良いタイミングだと判断したようです」と語る。物件選定においては、全従業員がワンフロアに集まれるという点が重要な判断材料となった。他には、社員の生活動線について「立地が変わると、社員が子どもを預けている保育園へのルートが変わり、働きづらくなる可能性もあります。立地は変えないほうが、従業員への影響は少ないという考えがありました」(山内氏)。また、開業の地である「麹町・半蔵門」に愛着を持つ社員が多かったことも、この地のこのビルでの決定に至った理由だ。さらに「この近辺の立地は、官公庁や皇居など重要施設がある地域です。東日本大震災の際も電力復旧が早く、保険業として、お客さまに給付金をお届けするビジネスの性質を考えると、比較的安定した地盤が見込め、インフラ復旧が早いことが期待できるこのエリアには、大きな意味があると考えています」と、本社立地に対する同エリアの安全性について強調する。

物件決定後の動きも迅速だった。「決めたからには早く実行する。意思決定から実行までのスピードが重要です」と山内氏。2023年の秋頃から複数の企業にオフィスづくりの提案を依頼し、その中からCBREをプロジェクトマネージャーに選定。「当社にとってオフィス移転は開業以降初となります。デザイン性に加えて、サポートいただける工程が幅広いCBREさんなら、プロジェクトを成功させられると考えました」と選定の要因を語る。

デザインコンセプトを「Open, Natural, Friendly & Fun」と策定し、オフィスのレイアウトを設計。このデザインコンセプトは、同社のブランドガイドラインに定めるパーソナリティに沿いつつ、新オフィスが目指す「元気に明るく楽しく」働ける場所というビジョンを表現している。物件の契約からオフィス稼働までの期間は1年ほど。「短い期間での移転だったので、関係各所から『こんなに短い期間で移転するんですか!?』と驚かれたほどです。設計期間も限られていましたが、その中でベストを尽くしていただけました」と、そのスピード感を振り返る。

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チームワーク向上を目指した、ワンフロア1,000坪のレイアウト

新オフィスの最大の特徴は、約1,000坪のワンフロアに全社員が集結できる点だ。以前は3フロアに分かれていた合計約500坪の執務環境から、面積は倍増された。個の生産性は上がっているが、チームとしての生産性は伸び悩んでいるという課題を解決するため、別々のフロアで働くよりも、1つのフロアにギュッと集まり、会いたいときにすぐ会いに行ける環境を重視した設計だ。

新オフィスの効果は上々で、山本氏は「以前は違うフロアの人とはあまり会う機会がなかったのですが、ワンフロアになったことで、いろんな部署の社員と会話が生まれています。コロナ禍以降に入社した社員が半数近くを占める中、『名前は聞いたことがあるけれど、会ったことがない』という状況が解消されつつあります」と話す。また、新オフィスのレイアウトで重視されたのが、開業時から設けられている交流スペース『サマルカンド』の配置だ。「サマルカンドはシルクロード東西の交差点として栄えた都市の名前で、サンスクリット語で『人々が出会う場所』という意味があります」と山本氏。オフィスの中央に位置するこの空間は、全社朝礼や全社ミーティング、忘年会などの社内イベント、株主総会など多目的に活用される。社内外のつながりを持ち、外に開かれた場であるという点が、同社のカルチャーに合致していると言えるだろう。

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社員参加型の移転プロジェクト、歴史を刻む会議室名と働きやすい環境

オフィス設計では、ワンフロアで集まるメリットを最大化するため、見渡す限り壁がない空間を目指し、「なるべく壁を作らない」という方針が掲げられた。レイアウトに関しては、サマルカンドの配置を中心に全体の動線を検討。山本氏は「CBREさんは当社のカルチャーを私たち以上に理解して、想いを形にしてくれました」と評価する。同時に、各部門からプロジェクトメンバーを立て、オフィスに何を取り入れたいかという要望を丁寧に吸い上げていった。「会議室に困らないようにしてほしい」という声に応え、会議室を充実させただけでなく、設置型のミーティングブースや自由に話せるスペースも各所に設けた。また、個人情報を扱う業務ゆえ「背後に立たれたり、後ろから見られたりしたくない」という声を受けて、プライバシーに配慮した座席レイアウトも採用された。

特徴的なのが、会議室の名付け方だ。「入社年度ごとのグループを作り、その年で象徴的だった出来事を会議室名にしました」ということで、2008年から2024年までの入社年次のグループが集まり、思い出を共有しながら一つひとつの会議室の名が決定された。「会社の歴史を残し、後から入社してきた人が当社の歴史を知るきっかけになります。また、社員全員が新オフィスづくりに参加できる命名方法は、自らのオフィスへの愛着とエンゲージメントを高めることにつながっていくと思います」と山本氏は説明する。このように命名された会議室名には、会社の重要な転機や挑戦が反映されている。例えば、準備会社の社名である『ネットライフ』は、まさに起業の原点。『コウカイドウ』は東証マザーズ市場上場後に、初めて株主総会を行った日比谷公会堂に由来。近年では『ニューノーマル』がコロナ禍での働き方の変化を、『サンキュー』には2023年に取り扱いを始めた団体信用生命保険立ち上げプロジェクト名『39』と、開業15周年の感謝の気持ちを込めた。時代とともに歩んできた同社の道のりが会議室名から読み取れる、素晴らしい取り組みだと言えるだろう。

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移転後の成果と今後の展望、コミュニケーションの量と質を高める

移転から4ヶ月が経ち、その効果は見え始めている。「アンケートによると、オフィスに満足している人の割合が、移転前の75%から98%に上昇しました」と、ほぼ100%の満足度だ。生産性の面でも「1人あたり約8分の時間削減が実現できている」という試算もある。また「オフィスコンセプトに沿った行動・意識変化があった」と感じている社員も6割に上る。その上で、さらなる課題も見えている。山内氏は「コミュニケーションの量と質が上がったかという質問に対して、約半分の人は『上がった』と答えていますが、残りの半数は変化を感じていません」と分析。同社の次なる挑戦は、この課題解決だ。「場づくりはできたので、これからはコミュニケーションの量と質を高めることが課題です。組織のパフォーマンス向上のためにソフト面を充実させて、社内でのコミュニケーションを活性化していきたいです」と意気込む。

新たなオフィス環境を最大限に活用し、社内コミュニケーションの活性化を図ることで、さらなる飛躍を目指すライフネット生命。オンライン生保のパイオニアは、オフィス移転を通じてチームとしての結束を固め、必ずやより良いサービスの提供につなげていくことだろう。

企業名 ライフネット生命保険株式会社
施設 本社オフィス
稼働開始日 2024年11月
所在地 東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル8階
規模 約1,000坪
座席数 約400席
CBRE業務 本社構築に向けた物件紹介・仲介
プロジェクトマネジメント・設計・ワークプレイスコンサルティング
上記内容は 「BZ空間」2025夏号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。