株式会社デンソー|プロジェクトケーススタディ

ケーススタディ
更新日 : 2025年07月25日掲載日 : 2025年05月15日
オフィス

世界有数の自動車部品メーカーが、東京の9拠点を一つに統合。
自動車業界の変革に立ち向かい、新たな価値創造を目指す。

~2025年 東京・港区新橋のオフィスビル「新虎安田ビル」に統合~

株式会社デンソー
東京支社オフィス

株式会社デンソー

1949年、愛知県刈谷市に誕生した株式会社デンソーは、先進的な自動車技術、システム・製品を提供する、グローバルな自動車部品メーカーだ。売上規模世界2位を誇るデンソーが、2024年5月より、東京都内を中心に点在していた13拠点のうち9の拠点を港区新橋のオフィスビル「新虎安田ビル」に統合した。これまで東京に拠点を構えていた支社や支店、グループ企業を集約し、新たな価値創造の場を目指すプロジェクトの舞台裏を取材した。

株式会社デンソー

CASE時代に対応するため、2016年東京・日本橋に支社を設立以降、品川、羽田をはじめ、順次開発拠点を立上げ

デンソーは愛知県刈谷市に本社を置く、自動車部品の総合メーカーだ。トヨタグループの一員で、日本国内だけでなく、世界中の自動車メーカーと取引を持つグローバル企業である。現在、自動車業界はCASE(Connected・Autonomous・Shared & Services・Electric)と呼ばれる変革期を迎えている。株式会社デンソー 東京支社 特命プロジェクト担当部長・光行恵司氏は、次のように語る。「従来のガソリンエンジンやディーゼルエンジンの時代から、電動化への対応が必須となってきました。また、車室内の環境もソフトウェア化が進み、エンターテインメント性やコンフォート性が重視されるようになっています。お客様のニーズも大きく変化し、私たちの事業領域も急速に広がっています」。

同社の強みは部品メーカーの領域を超え、システム総合メーカーとしての知見を持つ点だ。「システムだけでなく、デバイスも開発できる。また、システムに最適なデバイスを開発し、デバイスに応じたシステムを作ることもできる。その両面を持つことが、競合他社に対する優位性だと考えています。特に半導体については、1980年代に車載用半導体の大規模工場をいち早く立ち上げ、研究・開発を通じてノウハウを蓄積してきました」。時代の変化に対応するため、同社は2016年から東京での事業展開を本格化。日本橋に東京支社を設立し、ソフトウェア人材の獲得や新領域の探索、UX(ユーザーエクスペリエンス)、マーケティングなどの活動を開始した。「車載ソフトウェアの人材は本社にもいましたが、クラウド技術やUX、マーケティングといった新しい領域の専門家は、東京での採用が必要でした」と光行氏は振り返る。

その後、品川に研究開発拠点を設置し、羽田の天空橋には車両整備が可能な実験棟を備えたオフィスを開設。自動運転の開発拠点として、車両の整備から試作、走行実験までを一貫して行える環境を整えた。さらに、日本橋室町にもソフトウェア開発部隊を配置するなど、機能に応じた拠点を次々と立ち上げていった。「各部門が東京で何をすべきかを考え、独立独歩で動いた結果、グループ会社を含めると13拠点、約2,000名の社員が東京・神奈川で働く体制となりました。当時は各事業部、機能部の判断で拠点を設置できる環境があり、それぞれが必要と考える場所に、必要な規模の拠点を作っていったのです」(光行氏)。

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分散した拠点の課題が顕在化、お互いの顔が見える環境を構築

2019年1月に東京支社に赴任した光行氏は、この分散型の体制に課題を感じた。「最初に取り組んだのは、各拠点のトップに集まってもらい、お互いの顔を知り、困りごとを共有する連絡会の立ち上げでした。関連会社も含めた拠点長会議を設置し、顔の見える関係作りから始めました」。この連絡会で浮き彫りになったのが、小規模拠点ならではの課題だ。50人、100人規模の拠点では、バックオフィス機能に専門人材を配置できない非効率性があった。また、サイバーセキュリティの脅威が増す中、各拠点での対策にも限界があった。そこで東京支社の総務機能やIT部門を活用しながら、業務の標準化やサポートサービスの提供が進められた。

2022年夏、経営層への中間報告を機に、状況は大きく動き出す。「環境整備の成果も踏まえて、東京の現状を報告したところ、コロナ禍でオフィスに対する認識も変化する中、トップマネジメントの会議で『オフィスのありようを見直し、もう一歩踏み込んで、東京のオフィス環境を合理的・統合的にマネジメントできるよう拠点の集約・集結を検討のこと』という意思決定がなされました」と振り返る。そこからの展開は早かった。2022年末に統合の方針が固まると、わずか3ヶ月というスピードで、新橋の新虎安田ビルへの入居が決定した。「新橋エリアを選んだ理由の一つは、あらゆる方面へのアクセスの良さです。特に羽田の天空橋オフィスへは、都営浅草線で直通アクセスができます。また、新虎安田ビルは賃貸でありながら、デンソーのロゴを掲げさせていただけるということで、それもポイントになりました」と光行氏は語る。

新虎安田ビルでは、8階から14階までの7フロアを使用。各フロアは約400坪で、効率的な運用が可能なサイズとなっている。「物件を選ぶ際、フロアサイズは重要な要素の一つでした。グループ会社の中には50〜100人規模の会社もあり、大規模なワンフロアオフィスにすると、多くの壁で仕切ることになりかねません。組織を変更する際にも、壁を壊したりといった工事が発生しないで済む規模感を重視しました」。プロジェクトマネジメントにはCBREが入り、物件確保から段階的な引っ越しのスケジュール管理まで、多角的なサポートを実施した。

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各拠点の背景を理解した上で、多様な働き方に対応できるフロアづくり

新オフィスプロジェクトの推進にあたり、光行氏とともに重要な役割を果たしたのが、当時東京支社東京総務・人事室で、具体的なオフィスづくりを推進した安藤禎訓氏だ。新オフィスの設計には、大きな挑戦が待っていた。「各拠点それぞれで、自分たちのやりたいことや、やってきたことの背景が違います。それを統一しながらフロアスタッキングしていく必要がありました」と説明する。例えば営業部門と開発部門では、必要な設備や環境が大きく異なる。「エンジニアは3、4台の大型PCを使用するため、それに対応したデスク配置や電源設備が必要です。また、研究開発部門は特定のエリアでABWを実践し、営業部門は別のやり方を採用するなど、多様な働き方に対応する必要がありました」。

こうした違いに対し「スタンダードを一本の軸として残しつつ、各部門がパフォーマンスを最大限発揮できるようにカスタマイズする」というアプローチを採用。働く人の意見を聞きながら、例えばソファーセッティングなのか、執務セッティングなのか、ミーティングセッティングがいいのかを選んでもらい、リクエストに応えつつ、全体の統一感を持ちながらフロアを制作していった。また10階のエントランスフロアには、来訪者との打ち合わせスペースを配置。デンソーのブランドアイデンティティを意識しながらも、東京らしさを取り入れた空間づくりを行った。「基本コンセプトはデンソーのレギュレーションを踏襲しつつ、現代アートの作品を取り入れるなど、東京ならではの先進的な表現も取り入れています」(安藤氏)。

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デンソーの活動を伝える、14階に込めた共創への思い

新オフィスの特徴的なスペースが、14階に設けられた展示・共創エリアだ。「ここに入居している部門が、自由に活動内容を展示できるスペースを設けました。お互いを知り、新たな協業のきっかけを作る場として活用してもらうと同時に、外部のお客様に対しても、デンソーグループの活動を分かりやすく伝える場として機能させたいと考えています」と安藤氏。14階には、デンソーの歴史を伝える年表や、本社とのつながりを感じられるポスター等を展示。「東京で採用されたキャリア採用の方々に、デンソーの歴史や文化を理解してもらう機会も提供しています。本社から品質管理の伝道師を招いて講演を行うなど、デンソーの企業文化を伝える取り組みも行っています」。さらに14階には、外部企業との協業のためのプロジェクトルームも設置。「1月から3月はA社、4月からはB社といった具合に、様々な企業との協業活動が可能で、セキュリティに配慮した環境を整えました。自動車業界の変革期において、これまでの競合が協業先になることも珍しくありません。そうした新しい関係性を支える場として、このスペースを活用していきたいと考えています」。

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拠点統合の枠を超えて、新しい価値を生み出す共創の場に

移転プロジェクトをけん引した光行氏は「カメラセンサーによる会議室の使用状況把握や、フラッパーゲートでの入退室管理など、最新のテクノロジーを積極的に取り入れています。これらのデータを活用して、より効率的なオフィス運営を目指しています」と、新時代のオフィスマネジメントを目論んでいる。会議室予約システムについても、グループウェアと連携した新しいシステムを導入。「前例のない取り組みでしたが、効果を丁寧に説明し、理解を得ました。今では本社からも注目される存在となっています」と手応えを話す。オフィスデザインには、デンソーのアイデンティティを随所に表現。同社のロゴマークである「D」の角度17.62度は、タイルのデザインにも反映。「本社とのつながりを意識しながら、東京らしさを加えた表現を心がけました」(安藤氏)。

移転プロジェクトの中心を担った光行氏は、新オフィスの展望について「再訪したくなるオフィスにしたいです。オフィスに一度来て終わりではなく、繰り返し来ていただける中で、何か変わっている、進化していると感じていただけるような場所を目指しています」と語る。同社の社是には「研究と創造に努め常に時流に先んず」という言葉がある。光行氏は「オフィス運営・管理においても研究と創造を重ねていきたい。ここでの経験を本社に還元し、デンソー全体の発展につなげていきたいと考えています」と、言葉に力を込める。デンソーの新オフィスは拠点統合を超えて、メンバー全員が満足感・充足感を持って働く「One DENSO」のマインドを胸に、新しい価値を生み出す共創の場として、さらなる進化を遂げていくことだろう。

株式会社デンソー
企業名 株式会社デンソー
施設 東京支社オフィス
稼働開始日 2024年5月
所在地 東京都港区新橋4-3-1 新虎安田ビル8~14階
規模 約2,800坪
人員 約1,200人
CBRE業務 支社構築に向けた物件紹介・仲介
プロジェクトマネジメント
オフィス企画コンサル、設計
上記内容は 「BZ空間」2025春号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。