船橋フルフィルメントパーク|クローズアップ不動産戦略

ケーススタディ
更新日 : 2024年10月08日掲載日 : 2024年10月08日
倉庫

D2Cビジネスの成長を支援、加速化させる次世代フルフィルメントパークを開設。AI技術と、新賃料モデルで物流課題を突き破る。

船橋フルフィルメントパーク

EC物流向けフルフィルメント事業を展開する株式会社エクシーク。顧客のD2Cビジネスの成長を支援する次世代ECプラットフォームを立ち上げ、そのコンセプトセンターとして今年1月、「船橋フルフィルメントパーク(FFP)」を稼働させた。AI技術による物流の最適化と省人化を実現し、商業施設との事業提携を見据えた立地選定や、家主・借主双方にメリットのある賃料のサブスクリプションモデル開発など、物流課題を解決する同社の最新の取り組みについて、代表取締役の猪田恵介氏にうかがった。

株式会社エクシーク
代表取締役
猪田 恵介

株式会社エクシーク 代表取締役 猪田恵介氏
船橋フルフィルメントパーク

物流コンサルティングから、EC物流に特化した3PL事業を展開。取扱社数は4,200社以上

当社は2009年設立の、今年15期目を迎える物流会社です。最初の7年間は、大手EC事業者向けに、物流センターの設計等のコンサルティング事業を行っていました。ECモールが隆盛となる中、中小のEC事業者も増えていき、大手だけではなく中小の事業者からも商品発送に関するご相談をいただくようになりました。初めは協力会社に対応を依頼していましたが、EC市場の急拡大に伴って引き合いがどんどん増えたため、我々として腰を据えて取り組む必要性を考え、7年ほど前からEC事業に特化した3PL事業をスタートさせました。

現在、事業の柱となっているのはEC事業者向けのフルフィルメント事業であり、商品の受注、検品、保管、発送、お届け、代金回収等の一連のプロセスを一括して提供しています。これまでにお取引いただいているEC事業者は4,200社を超え、これは業界トップクラスの水準だと自負しています。内訳は、モール系事業者が75%、D2C系事業者が25%と、モール系の比率が高いです。モール系とはアマゾンや楽天、ヤフー等のモールに出店する事業者のことで、D2C系とは自社のECサイト等を通じて直接エンドユーザーに販売する事業者のことです。両者は物流に対する考え方にも違いがあり、例えばモール系はコスト重視なのに対し、D2C系は付加価値を重んじ、物流にもこだわりを持って自社の商品をエンドユーザーに届けようとする傾向があります。例えば、梱包資材のサイズやデザインから、同封するチラシや販促物等様々な工夫を凝らしています。我々はそれらのご要望に対し、一つひとつ丁寧に対応することで、D2C系事業者にビジネスのサポートをするとともに、信頼を積み重ね、おかげさまでお取引が増え続けています。今後もD2C系事業者とのビジネスを積極的に拡大していき、 Win-Winの関係を発展させていきたいと考えています。

当社が運営するフルフィルメントセンター(FFC)は、相模原に2ヶ所、海老名に1ヶ所(ともに神奈川県)、川口(埼玉県)に2ヶ所、船橋(千葉県)に1ヶ所の計6ヶ所あり、総利用坪数は2万6,050坪、年間出荷個数は1,250万個以上。月に換算すると100万個以上の物流に対応しています。海外へも約120ヶ国向けに発送業務を行っており、取り扱う商品は、アパレル、コスメ、健康食品、電化製品、家具、生活雑貨、温度管理が必要なワインや日本酒など多岐に渡ります。最近では在宅食事ニーズを反映した冷凍冷蔵食品やリユース品、ハイブランドの高額品の取り扱いも増えてきています。

船橋フルフィルメントパーク

EC物流の使命として、EC起業家への手厚い支援で成長をサポート

EC事業を立ち上げたばかりの中小事業者は、倉庫を借りたくても初期費用や毎月固定の管理費等が大きな負担になるうえ、大手物流会社からなかなか相手にしてもらえないという現状があります。そういった方々に対して、我々は初期費用0円、管理費は利用した坪数分だけお支払いいただく流動的な料金設定で支援しています。また、倉庫の運用効率を考えれば、一つのフロアに一つのWMS(倉庫管理システム)を導入するのが一般的ですが、我々はお客様が必要とされるなら、どんなシステムでも同時並行的に導入しています。例えば、川口FFCでは現在、9種類のシステムを同時に運用しています。このように、ECのスタートアップ事業者の方々の様々な物流課題に真摯に向き合い、一つひとつきめ細かく対応・解決してきた結果、取扱社数と個数を増やしてくることができ、おかげさまで、2018年より稼働した川口FFCを皮切りに、毎年1ヶ所ずつフルフィルメントセンターを増やしてくることができました。

6ヶ所あるセンターにはそれぞれ異なる特色を持たせており、例えば川口FFCはD2C専用で、アパレルをメインに取り扱っています。中国や韓国、欧米などから買い付けてくる商品には、現地語表記のブランドタグや洗濯タグが付けられており、我々は入荷・検品後、それらのタグを外し、日本語表記のタグを縫い直して検針器にかけて安全確認するところまでセンター内で行っています。そういった物流だけにとらわれない、縫製や検針といったサービスまで提供することはアパレルのお客様から大変喜ばれています。また、相模原FFCⅠはモール系の拠点としており、ワンフロア8,000坪強の広大な倉庫に数千社のお客様の商品を保管、出荷しています。海老名FFCは大物専用とし、家具や家電、飲料系といった大きくて重い商品群を集約しています。

業界の特性として、繁忙期と閑散期で倉庫の稼働率が大きく変わり、閑散期に空庫が目立つことが悩みですが、我々は6ヶ所あるセンターをトータルコントロールし、日々各センター間で荷物の適正配置を行い、稼働率の平準化を図っています。

船橋フルフィルメントパーク

次世代ECプラットフォームを開発。目玉は世界初となるAI技術による最先端物流

6ヶ所あるセンターの中でも、昨年末「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)船橋III」に新たに開設したフルフィルメントセンターは、今後我々が展開していこうとしているコンセプトを体現した施設となっています。フルフィルメントサービスだけではなく、オフラインでの展開や海外への展開等も含めたD2Cブランドの成長支援を可能にする次世代ECプラットフォームとして、「フルフィルメントパーク(FFP)」と名付けています。

その最大の特徴は、AIロボットの導入による省人化と生産性向上の実現です。毎年人手不足が深刻化する中、24時間365日稼働可能なAIロボットを導入したことで、人手不足の問題を解決するだけではなく、ミスや疲労といった人的要因リスクを極小化することができ、なおかつ正確でスピーディーな高品質のフルフィルメントサービスを提供することが可能になりました。

実は、これほど早くAIロボットを導入する計画ではありませんでしたが、2022年10月に起きたある出来事がきっかけで、思い切って導入を早めた経緯があります。その出来事というのが、アマゾン、楽天、ヤフーの3大ECモールのセールがちょうど重なるタイミングがあり、通常1日あたりの出荷個数が3万個なのに、その時は10万個を超え、人員も通常は300人のところ900人が必要な状況でした。なんとか協力派遣会社40社の力を借りて人員を集めることはできましたが、管理者の数が20人のままなので、全く管理が行き届かず、なんとか乗り越えたという状況でした。ワンフロア8,000坪の広大な倉庫に人が溢れかえり、誰がどこで何をしているのか全く把握できない、アナログの限界を痛感させられた出来事となりました。

世の中ではAI化の波が押し寄せ、物流業界でも大手各社がAI化を推進していることは勿論認識していましたが、日進月歩の技術で、いつ何にどれだけ投資すべきか分からなかったので、とりあえず周りを見ながらそのままにしていたというのが正直なところでした。しかし、900人が倉庫内をごった返す大混乱を目の当たりにして、これは一刻も早くやらなければならない、周りを見ても仕方がない。我々自身が時代をリードすべく、物流DXに本格的に投資しようと決意したきっかけとなりました。

船橋フルフィルメントパーク

世界初導入のAIロボット、作業員48人→2人の省人化を実現

半年ほどかけて様々なAIロボットを検討し、最終的に中国・Quicktron(クイックトロン社)のダブルディープ吸盤AIロボット「QuickBin」を採用することに決定しました。クイックトロン社は、EU圏では豊富な導入実績を持つロボットメーカーですが、日本国内では実績がなく、今回採用を決めた「QuickBin」も国内初の導入となりました。我々にとってもチャレンジングな決断でしたが、決め手となったのは、他社製品に比べて仕様の割に廉価で投資額が抑えられる一方、保管能力は3.4倍、格納生産性は7倍、ピッキング生産性は5倍に向上できるというメリットがあり、実際、これまで月12万個の出荷に対してピッキング作業員が48人必要でしたが、QuickBin導入後はたった2人で対応しています。つまり、46人分の省人化を実現し、投資対効果も2年半から3年ほどで回収できる計算で、投資回収スピードも速い仕組みとなっています。

実は、「QuickBin」は国内初どころか世界初導入となるAIロボットだったので、安定稼働に向けてクイックトロン社から数名スタッフを派遣・常駐してもらっています。安定稼働のサポートをしてもらいながら、センターの中にラボを設け、同社製品のプロモーションとしても使ってもらっています。

船橋フルフィルメントパーク

三井不動産との提携により、D2Cブランドのリアル出店を支援

船橋FFPの二つ目の特徴は、リアルとデジタルの両面からD2Cブランドの成長を支援する、つまりEC事業者がリアルの店舗に出店できるよう サポートするプラットフォームになっている点です。これが、当社が三井不動産と提携し、MFLP船橋IIIにセンターを開設した理由です。

三井不動産は最近、同社が展開する「三井ショッピングパーク ららぽーと」をはじめとした大規模商業施設を活用して、商業と物流の両面からECブランドを支援する「OMOソリューション」をリリースされました。我々もそのOMO施策に参画する形で、三井不動産が展開する商業施設と、当社が抱えるD2Cブランドのお客様を結びつけていきたいと考えています。具体的には、普段はネット販売のD2Cブランド商品を、三井不動産が展開する商業施設内にポップアップストアのような形で並べることにより、リアルでの認知訴求や消費者の反応の確認、販売促進等が可能になります。それによって、ECでのさらなる売上伸長が期待できるようになります。

D2Cブランドは「インターネット上だけで販売していても、結局どこかで限界が訪れる」「リアル店舗に商品を並べたい」というニーズがあることに気づきました。販売者側は自社の商品を実際に手に取って見てもらいたい、購入者側は色合いやデザイン、サイズ、肌触り等を実際に感じてみたいと思っている。そうした販売者側と購入者側のニーズを叶えるにはどうすればよいのかと考え、行き着いた結果が三井不動産との提携でした。

最初のフルフィルメントパークをMFLP船橋IIIにした理由こそ、歩いて5分ほどの距離に「ららぽーとTOKYO-BAY」があり、D2Cブランドが簡単に商品を運んでポップアップストアを開くことができ、終わったらまた商品を倉庫に戻すことができるからです。また、当社のお客様の中には、ららぽーとTOKYO-BAYにテナントで入っている方々もいらっしゃいます。商業施設のバックヤードは非常に狭く、商品在庫を十分に置くことができないため、倉庫をバックヤード代わりに使ってもらい、欠品が起きたら我々が倉庫から商品を補充するといった連携も可能です。

船橋フルフィルメントパーク

業界初「賃料のサブスクモデル」を開発。出荷課金制で家主・借主双方にメリット

当社はこれまで三井不動産とお取引があったわけではありません。出会いは、AIロボットの導入と並行して、新センターをどこに開設するか検討している中でした。交渉を重ねる中で、お互いにとって良い方法を見出した結果、提携に至ることができました。

先述の通り、毎年1ヶ所ずつ物流拠点を増やしてきましたが、センターの立ち上げにはどうしても保証金や設備投資といったイニシャルコストが負担になってきます。三井不動産との話し合いの中で、坪単価による固定賃料のビジネスモデルより、流動的に賃料収入を増やす方法はないかと模索していることがわかりました。

そこで提案したのが、「賃料のサブスクリプション」方式です。例えば、これまでの固定賃料モデ ルでは、坪6,000円で1,000坪賃貸すれば月600万円が安定的に入ってきますが、それ以上にはなりません。我々が考えた賃料のサブスクリプションモデルは、イニシャルコストを0円にする一方で、賃料は施設の利用料、つまり「出荷する荷物1個あたりいくら」で設定する出荷課金制です。イニシャルコストを極小化したい我々と、出荷が増えれば増えるほど流動的に大きな収益が見込める三井不動産の、お互いのニーズがマッチする仕組みとなっています。料金を決める際には、我々の過去の取扱実績を全て公開し、その数字をもとに設計していきました。

このモデルは業界初の試みとなり、成功すれば三井不動産が開発する他の物流センターにおいても横展開をさせていただき、お客様のニーズに合わせてスピード感を持ってフルフィルメントセンターを新規開設していくことができます。出荷個数によって賃料が変動する仕組みなので、繁忙期には賃料が上がり、閑散期には賃料が下がる可能性がありますが、我々は多種多様な商品、カテゴリーを取り扱っており、荷物の適正配置が可能で、稼働率の平準化を図ることができるという点もご評価いただいております。将来性の期待も込めて、今回三井不動産と提携させていただいた次第です。

次は、AIロボットなどの設備投資も含めたサブスクリプションモデルを検討していきたいと考えており、今後実用化されていくことを期待しています。

高品質・安全性の確保は当たり前、物流以外の支援策で差別化を図る

様々な形でのD2Cブランド支援策として、伊藤忠商事が出資するアメリカのデジタル卸売プラットフォーム「JOOR」との提携を開始し、国内ECブランドの海外進出を支援するサービスも始めました。国内ECブランドの海外認知促進や、越境ECを支援することで、海外向けの売上拡大に貢献することが目的です。伊藤忠商事も、三井不動産も、これから成長が期待されるD2Cブランドへの支援にはかなり積極的で、我々も物流の側から支援していきたいと考えております。

D2Cブランドの支援策は他にも色々と準備を進めており、随時リリースしていく予定ですが、やはり中心となるのは、AIロボット導入による最適化されたフルフィルメントサービスの提供であり、それが事業の中核です。今の時代、品質・安全性が高いのは当たり前で、それで勝負するといずれ価格競争に巻き込まれます。物流以外の支援策で他社との差別化を図り、それによってお客様から選ばれ、本業でお客様とともに継続的に成長していく。その好循環を作っていきたいという思いから、フルフィルメントパークを開発しました。

今後は、これをビジネスモデルとして確立し、横展開して、規模を拡大していこうと考えています。今年9月には、同様のコンセプトのフルフィルメントパークを開設予定で、来年も一つ同じコンセプトの拠点を開設する予定です。船橋FFPで導入したQuickBin以外にもアーム型ロボットの導入を検討しており、人手不足の問題を解決し、省人化によるコスト削減によって生み出された原資を、一緒に働く仲間たちの福利厚生やお客様への価格設定、支援策として還元していきたいと考えています。

現在、我々は関東圏を中心に物流拠点を構えてサービスを展開していますが、将来的には地方への展開も考えています。土地代が安いというのもありますが、災害対策やBCPの観点に加え、地方にフルフィルメントパークを展開することで、雇用機会創出やEC事業者を支援し、地方創生に貢献していきたいと考えています。

船橋フルフィルメントパーク

川口フルフィルメントセンターⅠ

川口フルフィルメントセンターⅠ

所在地:埼玉県川口市
総延床面積:1,500坪

川口フルフィルメントセンターⅠ

川口フルフィルメントセンターⅡ

所在地:埼玉県川口市
総延床面積:2,000坪

川口フルフィルメントセンターⅠ

相模原フルフィルメントセンターⅠ

所在地:神奈川県相模原市
総延床面積:20万坪

川口フルフィルメントセンターⅠ

相模原フルフィルメントセンターⅡ

所在地:神奈川県相模原市
総延床面積:20万坪

川口フルフィルメントセンターⅠ

船橋フルフィルメントパーク

所在地:千葉県船橋市
総延床面積:81,200坪

川口フルフィルメントセンターⅠ

海老名フルフィルメントセンターⅠ

所在地:神奈川県海老名市
総延床面積:19,400坪

上記内容は 「BZ空間」2024秋号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。