賢いデータセンター構築ノウハウ

DX戦略・AI活用
更新日 : 2026年08月27日掲載日 : 2023年02月14日
データセンター

シービーアールイー株式会社
データセンターソリューションズ
シニアコンサルタント
小野 寛和

シービーアールイー株式会社 データセンターソリューションズ シニアコンサルタント 小野 寛和

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2020年以降、データセンター(以下DC)に対するニーズが、急速に高まっています。その要因には、コロナ禍により各種ITテクノロジーの浸透度が加速度的に高まったことが挙げられます。コロナ禍によって、あらゆる企業にリモートワークにおけるオンライン会議の導入が待ったなしで求められましたし、これにより、ネットにつながれば場所を問わずに利用できるクラウドコンピューティングがさらに普及することになりました。また、巣ごもり需要の増加によるサブスクリプションの動画配信サービスや、オンラインゲーム、eコマースなどのデジタルコンテンツの消費も急拡大したのです。

当然ながらネットワークを飛び交うデータ量は急増しています。日本国内のダウンロードデータの流通量は、固定通信が2022年5月時点で2019年11月比+106%と2倍以上、移動通信が2021年12月時点で2019年同月比+47%と、いずれも大きく増えているのです(グラフ1)。

グラフ1:固定通信と移動通信の各ダウンロードトラフィック推移

こうした大量のデータを処理・保存するには、より多くの、そしてより高性能なサーバーやアプリケーションといったコンピュータ資源が必要になります。そしてこうしたリソースを運用するための受け皿となる施設がDCなのですから、需要が急拡大するのも当然のことなのです。その結果、首都圏のDCの2024年における総受電容量は、2021年と比較して+81%となる見込みで、3年間で1.8倍。他のアジア太平洋地域の主要都市と同様の、高い成長率が見込まれています(グラフ2)。

グラフ2:データセンターのIT受電容量とその増加率

この状況に対して、アジア太平洋地域で、実際にどの程度のDCの供給があるかを示したのがグラフ3です。深緑のバーが毎年のDC供給量を表しており、2021年は過去最高の400MW程度の供給となりました。一方、緑の折れ線グラフは、 DCの空き容量率を示しています。2020年から2021年は13.9%から13.6%と、ほぼ横ばいのように見えますが、供給量が45%程度増えているため、実質的な利用は増えたと言えます。これにより、CBREでは首都圏のDCの2022年の見通しは、空き容量率は横ばい、かつ賃料は上昇傾向であると見込んでいます。

グラフ3:データセンターマーケット新規供給(IT受電容量)と空き容量率

ちなみにDCの開発には、一般的なオフィスの10倍以上という、大量の電力が確保できること。通信事業者が集中する、DCが集中している、人口密集地、海外との接続点が近いといった高品質な通信環境を構築が可能であること。地震や河川の氾濫などの自然災害リスク(特に浸水リスク)が低い立地であること、という三つの条件が求められます。そのため、DCにとっての具体的な好立地とは、①6万ボルト以上の特別高圧による受電を確保可能、②東京または大阪の中心部から50km圏内、③自然災害リスクが低い、の三つを満たす地域となります。そこで近年の首都圏では、東京都心からのアクセスが良く、地盤も強固な千葉県印西市に注目が集まっています。ちなみに今年の10月、米Googleが2024年までに約1000億円の投資を行うことを発表し、その一部が同社初の日本でのDC開設に充てられるのですが、その舞台となるのも印西市です。こうした外資系企業による巨額投資が行われることなども、国内のDC市場にまだまだ拡大の余地があることの表れでしょう。

かつて、多くの企業はデジタルデータの処理・保存のために、社内にサーバールームを設けていました。しかし、急速に増大するデータに対し、サーバールームの増設のたびに起こるスペースの拡張に伴うコスト増への対策として、DCの活用を進めてきたという経緯があります。そのため、近年だけを見ても、2020年時点でサーバールームを設置している企業が、全国で68%だったのに対し、2022年には60%に減少していますし(グラフ4)、東京23区内の企業だけで見ると同じく73%から67%に減っています。また、今後の拡大・縮小に関しては、縮小を検討している企業が28.8%を占め、廃止を検討と合わせると32.1%と、 3割強という調査結果となっています(グラフ5)。

グラフ4:オフィス内でのコンピュータ専用サーバールームの設置 / グラフ5:オフィス内サーバールームの将来的な運用について

また、「わからない」という回答が65.4%を占めていますが、システムの移行には、長ければ数年を要することもあるため、明確な運用方針が出せずにいる企業がいまだに多いということでしょう。しかし、今後もサーバールームは縮小し、外部データセンターへの移行が進むことは間違いないと思われます。

では、一般企業はどのようにDCを活用しているのでしょうか。その方法は「コロケーション」と「クラウド」の二つに大別されます。コロケーションとは、利用者がDCの「建物と設備」の一部、または全部を借りて、そこに物理的なコンピュータを預ける利用形態です。スペック構成を含め、ITシステムを自由に設計できるというメリットある一方、利用者自らがコンピュータを用意し、かつメンテナンスも行う必要があるため、エンジニアの有無や、力量が問われるというデメリットがあります。

これに対してクラウドは、クラウド事業者がDC内に用意したサーバーなどのIT機器・システムを一括で利用できる形態です。提供される具体的なサービスは、スケジュール管理やWeb会議などのグループウェア、会計・人事などのバックオフィス業務、そしてビッグデータやAIの活用に至るまで多岐にわたっています。クラウドの場合、 ユーザーはIT機器や設備の選定はできませんが、初期投資やメンテナンスが不要となるうえ、システムの構築期間を短縮することができます。また、必要な時に必要なだけ利用できるため、利用範囲に応じた費用負担で済むだけでなく、ネットに繋がりさえすれば、場所を問わず働くことが可能になるといったメリットがあります。そのため多くの企業が、IT機器やシステムを所有から利用に切り替えてきたのです。

ですが、2020年以降の傾向を見ると、コロケーションに回帰する、またはクラウドとコロケーションを併用するといったケースも見受けられるようになっています。それは、クラウドでは他社とシステムやサーバーを共有するため、セキュリティ面でのリスクを避けたい、自然災害や突発的な事故などに対して自らが構築するDCで安全性を高めたい、という意向があるからと思われます。

近年、急速にニーズが拡大したDCですが、それだけに一般企業の方々にお話をうかがうと、システム担当者や総務担当者の方々から「DCを利用したいがどうしたらいいだろう」「何から手をつけたらいいの」といったお声をいただくことが多々あります。

具体的には、「様々な事業者がいるが、自分の会社に合っているのがどこか、経験がないのでわからない」「見積もりのコストが適正な価格かどうか判断がつかない」「社内に詳しい人間がいないので、借りるメリットが見いだせないし、経営層に説明できない」「いざ使用を開始するにも、技術的な知見がないので不安」といった内容です。つまりDCを利用するには、マーケット相場の把握や、ある程度の専門的な知識が求められるのです。

データセンター構築の流れ

そこで、ここではどのような手順でDC構築を実現するべきか、その手順をご説明します。まずは1.システム担当者および総務責任者の方を中心に意見を出し合い、必要とする設備や要望する立地などをまとめて、それに合う事業者や物件を探す。2.候補となったいくつかの事業者に見積もりを依頼し、結果を検討する。ただし、オフィスの賃貸借と違い、空間を借りるだけでなく細かい要件ごとにコストが変わってくるため、コストの妥当性の検証が重要です。3.選定した事業者に対して内覧を申し込み、顔合わせを行い、気に入れば契約条件を詰める。ここでは必要に応じて、自社専用の非常用の電源や監視用のカメラの設置が可能かなど、要望の詳細をきちんと詰める必要があります。4.契約を締結するとともに、実際のデータ移転に伴う運用開始のプロジェクトを立案する、といった作業が必要になります。

新規開設については先述したとおりですが、 DCを活用するうえで、将来的に必要となる注意点やポイントをご紹介しましょう。まず一番多いのは、借り増しニーズです。すでに運用しているDCのスペースが不足し、拡大したいというケース。 ユーザーサイドとしては、最善は同じDC内での拡張だと思われますが、特に東京近郊では前述のとおり空きが少ないため、難しいのが現状です。次善の策として、既存のDCから半径3~5㎞程度の距離にある別のDCが候補となるのですが、ここで問題となるのは今と全く同じ使い方を希望するケースです。DC業者の運営方法はキャリアや仕組み、ラックサイズなど各社ごとに異なるので、できるだけ近い利用法が可能な業者を探すのが最善策でしょう。あるいは、より大きなスペースが借りられる別のDCに、丸々移転してしまうという手もあります。

次は集約です。これは当社が実際に携わったケースですが、アジア各国に拠点を持つグローバル企業が、それぞれの国にDCを開設していました。こうした状況で、果たしてどれぐらいのコストがかかっているのか、どれほどの稼働率なのかの分析依頼がありました。そのポートフォリオ管理により見直しを行ったところ、数拠点のDCを集約し、効率化を図ることができました。ただし、金融機関などでは不可能な場合があります。なぜなら個人情報は、各国ともその国に留めておかなければならないという規制があるからで、この点は注意が必要です。

DC運用でもう一つのポイントとなるのが、契約満了に伴う再契約です。DCの契約は5年、あるいは10年という期間が一般的です。その間には電気代の値上げや建築費の高騰、さらにはニーズの急拡大により、大幅な賃料アップが提示されるケースが少なくありません。特に内部エンジニアの高齢化に伴う人件費の上昇など、DCにはオフィスとは比べ物にならないほど、賃料を構成する変動ファクターが多くあります。そのために適正な賃料を理解するのは難しく、交渉しづらいのが実態でしょう。

グラフ6:外部データセンター利用の有無 / グラフ7:利用中の外部データセンターの種類

ここまでDCの新設、借り増し、集約、再契約というシーンの際のポイントについてお伝えしてきましたが、もう一つ、全体を通じて理解しておくべき注意点があります。それは、DCの契約は、オフィスや物流施設を借りるのとは根本的に異なるということです。

例えばオフィスを借りる時は、おおよそのエリアと駅からの距離、収容する人数、賃料コストから候補を選び、どの器を借りるかを決定するのが一般的でしょう。借りたスペースは自由に使えます。構築の窓口が総務部であるのも当然です。しかしDCの場合は、使用目的、使いたいサービスの内容が、物件選定の最重要事項となります。この堅牢な建物にこのキャリアのネットワーク回線、電気使用量はどの程度、サービスはこれというスペックと、自分たちが求めるシステム運用の方法がどれだけマッチするかがカギなのです。ですからオフィスが建物賃貸借契約であるのに対して、DCはサービス利用契約が主になっています。

言い換えれば、先にも述べたとおり、自分たちが求める要件を明確にし、それに一番近いサービスを提供するDCを選ぶことが、最も低コストで、しかも安定した運用が可能になる近道です。場所がいいからと言って、そこに自分たちが求めるサービスを一方的に要求すれば、コストはうなぎ上りに上昇する可能性があります。つまりは必要な要件を、的確に把握しているシステム部主導で事業者選びを進めることが肝要なのです。それが他のアセットクラスと違う、難しいところだと言えます。

さらにシステム部門の方には、もう一つ、運用のノウハウをお伝えします。それはシステムの運用方法を分割するということ。前述のとおり、東京近郊のDCには需要が逼迫していて、なかなか新設や拡張が難しいのが現状です。しかし、大阪や福岡、北海道や仙台などのDCにはまだ余裕があり、DCを地方に置けば低コストで地震リスクも低く、拡張ニーズにも対応できて、電力コストも安いといったメリットを享受できる可能性があるわけです。

例えば金融機関だと、証券取引所から5㎞圏内にDCを置きたいと考える企業は多いでしょう。データの通信速度は0.001秒でも速い方がいいですし、トラブルの際にも対応しやすいからです。しかし、クリティカルなシステムだけ都心の近くに置き、それ以外の、例えば営業管理や会計系の管理システムは地方でもいいのではないでしょうか。ましてや一般の、特にコロケーションで小さく借りたい企業にとってはメリットが大きいと言えます。

万一のトラブルの際にも、リモートハンドサービス等を契約しておけば、現地の事業者が確認することも可能です。もちろんシャットダウンの必要があっても遠隔で対応できるので、現地には年に数回の点検の時だけ行けば済むわけです。地方でのDC構築は、今後、間違いなく増えることが予想されます。

さらにDC利用の形態が変化することもあり得るでしょう。当初、社内に置かれていたサーバールームが、スペースやコスト、BCPの観点、さらには運用のしやすさから、徐々にクラウドへと移行してきました。しかし昨今、セキュリティの観点からコロケーションの重要性が再認識されてきています。ですが本来、これらにはそれぞれにメリット・デメリットがあるわけで、実際に欧州では、コスト、エネルギー(カーボンニュートラル)、セキュリティ、不動産のオフバランスなどの観点から、すでにコロケーションへの移行が確実なものとなっています。言い換えれば、それぞれのメリットをいいとこ取りするようなハイブリットな運用が、最も効率的であることは言うまでもありません。ですが、まだ導入間もないDCに関しては、多くの企業にとって、コストや運用に関するノウハウが不十分である点は仕方がないことでしょう。

一方、データの量や求められる通信速度は今後、さらに大きくなることは間違いありません。そうしたデータの活用が企業の命運を握る今日、より確かなDC構築を実現するためにも、プロフェッショナルを有効に活用することも、考慮すべきポイントとなるでしょう。当社が持つグローバルに蓄積してきたノウハウが、必ずや貴社のDC構築のお役に立つものと考えています。

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上記内容は 「BZ空間」2022年冬号 掲載記事
です。本ページへの転載時に一部加筆修正している場合がございます。