2020年における新型コロナウイルス( COVID-19) 感染拡大抑制のための外出自粛や営業自粛などの各種施策は、経済活動の停止と共に多くの人々の行動様式を変え、その影響は不動産市場にも波及した。景気後退や訪日外国人の激減により、オフィスとリテールの市況は下落に転じた。その一方、外出自粛によるeコマースの拡大が加速したことは、物流施設に対する需要をさらに高めることとなった。

2020年12月末現在、COVID-19の感染者数は日本を含む世界各国で依然として拡大傾向にある。その対応策として日本政府も再び緊急事態宣言を発令した。今後の経済見通しについては未だ予断を許さない。一方で、欧米各国を中心にワクチンの提供が開始され、感染拡大の収束ひいては経済の正常化への期待も高まっている。

2021年中に経済は回復軌道に乗ると、我々も期待を込めて予想する。不動産市場においても、セクター毎にペースやタイミングは異なるものの、市況の下げ止まりや回復に向けた動きは見えてこよう。しかし、全てのセクターに共通しているのは、COVID-19対策としての諸施策など短期的なディスラプションが、不動産の長期的な進化を促した可能性があるということだ。リモートワークの急速な普及は、多くの企業がオフィスの役回りを改めて考える契機となり、新しいオフィスの形が模索されている。インバウンド需要の激減や外出自粛の影響を直接的に受けたリテールでは、ネット時代における実物店舗のあり方についてオーナーとテナントの双方に再考を促している。物流施設においては、eコマース拡大と人手不足のいずれもが加速、最新型の大型施設に対する需要をいっそう押し上げ、地方都市でも開発機運が高まっている。

当レポートではセクター毎に今後の市況を予測すると共に、前年にみられた変化を総括している。これらの変化がこれから不動産をどう進化させ、どのような投資機会を新たにもたらすのか、クライアントをはじめとする市場関係者と共に考えていきたい。

 

マクロ経済:2020年のGDPは通年で5.7%の縮小を予想するが、2021年は+2.6%の回復を見込む。感染再拡大により景気が再び後退するリスクはあるものの、ワクチンの供給にも目途がつくことで、少なくとも2021年Q1以降は景気は緩やかに回復に向かうことが期待されている。ただし、賃貸不動産の市況動向はセクターによって異なるだろう。

オフィス:コロナ禍による業績低迷を背景とする需要の減退のみならず、多くの企業が社員の新たな働き方を模索する中、全国的に空室率は上昇基調となろう。需給の緩和傾向が続き、東京・名古屋・大阪を中心にいくつかの都市では賃料は2023年にかけて下落すると予想する。一方、新規供給が限定的な一部の都市では、比較的早めのタイミングで賃料は底打ちすると予想する。

リテール:2020年に下落に転じた賃料は、2021年にさらに落ち込むことを予想する。インバウンド需要の回復に時間が掛かりそうであること、外出自粛やテレワークの浸透により来街者がコロナ禍以前の水準に戻っていないこと等を受けて、リテーラーの出店ニーズが当面は弱含むとみられるためだ。

物流:首都圏、近畿圏、中部圏のいずれにおいても新規供給量は高水準が続く。ただし需要も引き続き旺盛で、空室率の上昇は限定的と予想する。ECの成長が加速していることのほか、人手不足などオペレーション上の課題を解決するための自動化・IT化ニーズもまた、今後の需要を牽引するだろう。

投資:世界的に低金利政策が続くとみられる中、相対的に利回りの高い不動産投資には引き続きマネーが集まるだろう。また、2020年半ばから資産売却を検討する事業会社が増え始めた。これらの成約が2021年に本格化しよう。さらに、中長期的な成長性を見据えた投資も再開すると考えられる。

 

レポートをダウンロード