レポート | インテリジェント・インベストメント

アジア太平洋地域マーケットアウトルック2025:和訳版

総じて堅調な拡大が期待できるも、市場毎に温度差

2025 年 03 月 12 日 読む所要時間:約15分

このコンテンツのPDFをお探しですか?

アジア太平洋地域の事業用不動産市場は、底堅い地域経済と金利低下サイクルを背景に、今年は緩やかな改善が見込まれます。その一方、市場やセクターによって見通しは大きく異なり、当アウトルックレポートの中心テーマとして「堅調な拡大、二極化の進展」を掲げました。

 

  • アジア太平洋地域のGDP成長率は、2025年に4.1%に達すると予測されており、2024年の予測成長率3.9%をわずかに上回る見通し。インド、オーストラリア、日本では、政府支出と個人消費の増加により、成長が加速するとみられる。一方、中国と韓国では、個人消費の低迷により、上昇率は鈍化すると予想される。

 

  • 米国の関税政策は当地域の成長を圧迫する可能性があるが、詳細は依然として不透明。年内にさらなる利上げが実施される見込みの日本を除き、今年は当地域の多くの国・地域で政策金利は緩やかに引き下げられると予想されている。

 

  • CBREは、2025年の当地域の事業用不動産への投資額を前年比5~10%の増加と予測している。シンガポール、韓国、オーストラリア、香港における回復に加え、日本とインドに対する投資家の関心が依然として高いことが背景。ただし、個々の市場が価格サイクルの異なる段階にあるため、利回りの動きは市場毎に異なってこよう。

 

  • オフィスに対する需要と賃料は緩やかな拡大が予想される。立地改善やグレードアップが引き続き需要の牽引役。ノンアエリアの物件は競争力がさらに低下しよう。

 

  • 物流施設セクターにおいては、テナントの拡張意欲が徐々に高まってこよう。メーカーやeコマースからのニーズの緩やかな増加が背景。しかし、高い賃料の伸びが続いてきた中で、多くのテナントは慎重な姿勢を維持しよう。そのため、移転事例はアップグレードや統合移転が中心になるとみられる。

 

  • 2025年には、堅調な雇用市場を背景に消費者心理は改善、小売売上高の伸びが高まると予想されている。リテーラーは慎重ながらも前向きであるため、当地域のリテール賃料は緩やかながらも堅調な回復を続けるとみられる。ただし、需要はプライムコア資産に集中するとみられる。そのため、セカンダリー物件へのニーズは限定的になり、そのようなスペースの空室消化には引き続き時間がかかるだろう。

 

  • 海外旅行の回復は2025年に本格化するとみられる中、ホテルセクターの見通しは明るい。2025年は、インフレ鈍化の影響で宿泊料金の伸びが緩やかになる一方で稼働率は引き続き改善するとみられ、結果として緩やかなRevPARの伸びが予想される。